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交通事故知識ガイド損害賠償額の計算方法

個人事業主の休業損害

休業損害とは、交通事故による受傷から症状固定までの間、休業又は十分に稼働することができなかったことから生じる収入の減少をいいます。
給与所得者の場合、勤務先に休業損害証明書を作成してもらうことで、休業損害を算出することは可能ですが、被害者が個人事業主の場合、その算定には困難が伴います。

今回は、個人事業主の休業損害をどのように算定すべきかという点についてお話します。個人事業主の休業損害の算定方法については、以下の2つの考え方があります。

第1の考え方は、事故前年の所得と事故後の所得を比較し、減少額を休業損害として評価するという方法です。休業損害という概念に沿った計算方法といえるでしょう。
しかし、保険会社からは減収が生じたのは交通事故以外の要因もあったのではないかと主張されることも多く、単純に減収額が休業損害として認定されるわけではありません。被害者側としては、交通事故受傷と因果関係のある減収はどの範囲かという点について、具体的な症状、事業内容等との関連を含めて丁寧に立証する必要があります。

第1の考え方の問題点は、受傷していたにもかかわらず、他の要因から減収が生じていないケースでは適用できないという点が挙げられます。

第2の考え方は、1日当たりの基礎収入額に休業日数又は休業した割合をかけて計算するという方法です。事故前と事故後の所得の減収額を検討する考え方に比べ、休業損害を間接的にとらえようとする考え方といえます(主婦の休業損害を算定する場合にも同様の考え方が採用されています。)。
もっとも、第2の考え方を採用した場合、無駄になった固定経費を損害に加える必要がある点に留意する必要があります。
この考え方を採用した場合、減収が生じていないようなケースや症状・事業内容から休業損害があったであろうことは推認できるが、減収を具体的に証明する資料が少ないというケースでも対応することが可能です(実際の訴訟においても、第2の考え方によって休業損害が認定されているケースも多いです。)。

また、第2の考え方を採用する場合、固定経費として加算するできるものとできないものを巡って争いになることもあります。被害者としては、基礎収入額を適正に把握するため、なるべく固定経費として加算できるものが多い方が有利です。租税公課、損害保険料、地代家賃、損害保険料などは加算できることにあまり争いはありませんが、水道光熱費、利子割引料などは判断は分かれることがあります。

個人事業主の休業損害の算定について、どちらの考え方を採用すべきかはケースバイケースと言えますが、具体的な症状や事業内容、証拠等に基づいて検討することが必要になってきます。

さらに問題となりうるのは、被害者の事業が赤字であった場合です。保険会社からは、「赤字事業だから休業損害はないはず」との主張がなされるケースが多いためです。
一見、保険会社の「赤字事業だから休業損害はないはず」との主張は正しいようにも思えます。しかし、赤字事業であったとしても、受傷によって拡大した損失や無駄になった固定経費については休業損害として算定されるべきでしょう。

このように、個人事業主の休業損害算定には様々な問題があり、特に専門家の関与が必要な分野であるといえます。