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交通事故知識ガイド上肢及び手指

上肢その16 上腕骨近位端骨折

上肢その16 上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)

上腕骨近位端

上腕骨近位端骨折-骨折の部位と骨片の数による分類

上腕とは、肩関節に至るいわゆる二の腕を指します。上腕骨近位端とは、肩関節近くの部分です。

上腕骨近位端骨折は、骨折の部位と骨片の数で、重傷度や予後、治療法が決まります。
上記のイラストは、骨折の部位と骨片の数による分類を示しています。
上腕骨上端を、骨頭、大結節、小結節、骨幹部の4部に分け、骨折の部位により小転位型(minimal displacement)、2分節骨折(two part fracture)、3分節骨折(three part fracture)、4分節骨折(four part fracture)に分類されています。
高齢者の転倒

交通事故では、肩を地面に打ちつけることにより発生することが多いです。
高齢者の方ですと、転倒して手をついたという軽い外力だけで骨折に至ることも多くあります。上腕骨近位端骨折は、股関節部の大腿骨近位端骨折、手関節部の橈骨遠位端骨折、脊椎圧迫骨折と並び、高齢者に多い骨折の一つで、その背景には、骨粗しょう症の存在があります。

上腕骨骨頭部で肩関節を構成している部分

上腕骨の大結節、小結節は、上腕骨骨頭部で肩関節を構成している部分ですが、右前面図でお書きしますと、上部左側の小さな盛り上がりが小結節、左上部の大きな盛り上がりが大結節です。

上腕骨が肩甲骨の関節窩に衝突して大結節が骨折したものと、大結節が肩峰に衝突して骨折したもの

左の絵は上腕骨が肩甲骨の関節窩に衝突して大結節が骨折したものです。右の絵は、大結節が肩峰に衝突して骨折したものです。

棘上筋の牽引により大結節が剥離骨折したもの

棘上筋の牽引により大結節が剥離骨折したものです。

骨頭が骨折して転位のない場合は、3週間程度の三角巾固定で十分です。上腕骨近位端骨折の8割はこの程度にとどまるという文献があります。
転位が認められるときは、X線透視下に徒手整復を実施し、4週間程度のギプス固定を行います。
脱臼を整復すれば骨折も整復されることが多いです。

大結節が骨折したときは、転位が軽度でも肩関節の炎症を起こしやすいです。皮膚の上からキルシュナー鋼線(Kワイヤー)やラッシュピンで固定するのが主流です。

小結節の骨折や、骨幹部の骨折が生じたときは、いずれも観血的整復固定術を行います。髄内釘やプレート固定が実施されます。

4分節骨折に至っているときは、骨頭の無腐性骨壊死を起こす危険があることから、人工骨頭置換術が行われることが多いです。

受傷から6か月以上経過したところで症状固定となり、残存症状があれば、後遺障害等級審査に進むことが多いです。
機能障害と痛みの神経症状が考えられます。

上腕骨近位端骨折における後遺障害のポイント

上腕骨近位端骨折では、肩関節の機能障害、つまり可動域制限と骨折部の疼痛が後遺障害の対象となります。

部位 主要運動 参考運動
肩関節 屈曲 外転 内転 合計 伸展 外旋 内旋
正常値 180° 180° 360° 50° 60° 80°
8級6号 20° 20° 40°
10級10号 90° 90° 180° 25° 30° 40°
12級6号 135° 135° 270° 40° 45° 60°

認定可能性のある後遺障害等級は、機能障害においては、8級6号、10級10号、12級6号です。
痛みの神経症状においては、12級13号、14級9号の認定の可能性があります。

転位のない骨折の場合、治療によって残存症状が残らないことが多く、可動域制限や痛みの後遺障害認定に至りません。
後遺障害診断書に可動域が制限されている趣旨の記載があったとしても、骨癒合の不正を立証するなどしなければ、機能障害の後遺障害等級は認定されません。
したがいまして、上腕骨近位端骨折が発生し、肩関節の可動域制限があったとしても、そのことだけで機能障害の後遺障害等級が認定されると見込むべきではありません。