キックスケーターと過失割合
最終更新日:2026年07月14日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Qキックスケーターの事故の過失割合はどうなりますか?
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キックスケーターに乗っていて自動車にぶつけられた場合、自転車事故や電動キックボードの事故と比べて被害者(キックスケーター側)の過失割合が小さくなることが多いとされています。
なぜなら、モーターのついていない一般的なキックスケーターは、自転車や電動キックボードとは法律上の扱いが異なるためです。自転車や電動キックボードは道路交通法上「車両」として扱われますが、モーターのないキックスケーターは、原則として「歩行者」として扱われます。
もっとも、キックスケーターを使っていた場所、道路の交通量、飛び出しの有無、夜間かどうか、キックスケーターの構造などによって、過失割合は大きく変わります。

目次

キックスケーターとは
まずは、キックスケーターが法律上どのように扱われているかを確認しておきましょう。特に電動かそうでないかによって扱いがまったく異なるため、注意が必要です。
キックスケーターの定義
キックスケーターとは、片足をデッキ(ボード)に乗せ、もう一方の足で地面を蹴って進む、ハンドル付きの乗り物です。近年は、子どもの遊具としてだけでなく、大人の移動手段としても街中でよく見かけるようになりました。
キックスケーターは、「キックボード」とも呼ばれます。本記事ではモーターのついていないものを「キックスケーター」、電動モーターで自走するものを「電動キックボード」と呼び分けて説明します。
キックスケーターの道路交通法上の区分
モーターのついていないキックスケーターは、道路交通法上「車両(軽車両)」にはあたらず、「ローラースケートに類する遊具」として扱われます。そのため、キックスケーターを使用している人は、原則として「車両の運転者」ではなく「歩行者」になります。
キックスケーターの交通ルール
キックスケーターの利用者が歩行者として扱われるとはいえ、どこでも自由に乗ってよいわけではありません。道路交通法76条4項3号では、「交通の頻繁な道路」での遊具の使用を禁止しています。
そのため、車や人の通行が多い道路でキックスケーターを使用して事故にあった場合、被害者側にも一定の過失が認められる可能性があります。
電動キックボードとの違い
一方で、「電動キックボード」の場合は、法律上の取り扱いが「キックスケーター」とは大きく異なります。
そもそも電動キックボードとは、電気モーターで自走するタイプのキックボードのことです。その性能に応じて「特定小型原動機付自転車」「一般原動機付自転車」「自動車」のいずれかに分類され、いずれも「車両」として扱われます。モーターのないキックスケーターが「歩行者」として扱われるのとは対照的です。
そのため、電動キックボードの事故では、歩行者ではなく車両の利用者として過失割合が判断される点には注意が必要です。
自転車との違い
自転車は、道路交通法上「軽車両」に分類される「車両」です。原則として車道を通行することになっています。したがって、自転車が自動車と事故を起こした場合、自転車側にも一定の注意義務があるという基準で判断されます。
一方、キックスケーターを使用している人は原則として歩行者として扱われます。そのため、自動車側により重い注意義務が課される結果、被害者側の過失が小さくなる傾向があります。
キックスケーターの事故の過失割合
過失割合は、事故の状況やキックスケーターの構造によって大きく変わります。ここでは基本的な考え方と、実際の裁判例をご紹介します。
基本的な考え方
キックスケーターの使用者は原則として歩行者として扱われます。そのため、自動車との事故では、基本的に「歩行者対自動車」の事故と同じように過失割合が判断されます。
たとえば、横断歩道上での事故では、自動車側に「歩行者の通行を妨げてはならない」という重い注意義務があります。そのため、歩行者(キックスケーター使用者)の過失は、原則として0%とされることもあります。
ただし、次のような事情があるときは、キックスケーター側にも過失が認められることがあります。
- 交通の頻繁な道路でキックスケーターを使用していた場合
- 車道に急に飛び出した場合
- 夜間など視認性が低い状況でのルール違反があった場合
裁判例のご紹介
ここでは、キックスケーターと自動車が衝突した実際の裁判例(東京地方裁判所立川支部平成26年8月27日判決)をご紹介します。
事案の概要
自動車を運転していた被告が、信号機のない住宅街の交差点で、キックスケーターに乗って横断していた7歳の原告に衝突し、重いけがを負わせました。
被告は制限速度30km/hの道路を約60km/hで走行。徐行義務違反や安全確認義務違反も認められました。使用されたキックスケーターはアルミ製で長さ65cm・幅34cm・高さ90cmのものでした。
裁判所の判断
裁判所はまず、キックスケーターは各メーカーや機種ごとに構造が異なると指摘しました。
そのうえで、キックスケーター使用者の過失については、具体的な事案ごとに判断するのが相当であると述べました。
本件のキックスケーターは、片足を乗せてもう一方の足で地面を蹴って進む通常のタイプであり、特殊な機能はないと判断します。そして、自転車事故と同じように評価するのは相当ではないとして、自動車とキックスケーター側の過失割合を95対5と判断しました。
弁護士のコメント
本件では被告(自動車側)が「キックスケーター側の過失は30%だ」と主張していましたが、裁判所が認定した過失は5%にとどまりました。
自転車事故であれば10〜30%程度の過失が認められてもおかしくない事案であり、キックスケーターという乗り物の性質が被害者に有利に働いた例といえます。
ただし、キックスケーターの構造や個別の事故状況によって過失割合は大きく変わることがあります。納得のいく解決のために、まずは弁護士にご相談ください。
よくあるご質問
ここでは、キックスケーターの事故に遭われた方から特にご質問の多い内容についてまとめました。
子どもの事故の注意点は?
子どもがキックスケーターを使用する場合も、交通の頻繁な道路での使用は法律上禁止されています。保護者として、どこで使ってよいかを事前に伝えておくことが大切です。
なお、電動キックボード(特定小型原動機付自転車)については、16歳未満の運転が法律で禁止されており、違反した場合は罰則の対象となります。さらに、16歳未満に電動キックボードを貸し与えたり買い与えたりする行為も禁止されている点には注意が必要です。
親が入院や通院に付き添った場合にできる請求は?
事故によって子どもや家族が負傷し、保護者が入院や通院に付き添った場合、その付き添いにかかった費用や労力も損害賠償の対象になることがあります。この費用は「付添看護費」と呼ばれています。
認められる金額は、被害者の年齢や症状の程度、付き添いの必要性などによって異なります。詳しくは弁護士にご相談ください。
キックスケーターが壊れた場合の賠償は?
事故によってキックスケーターが壊れた場合、いわゆる「物損事故」として扱われます。自動車損害賠償保障法(自賠法)は、物損事故には適用されません。そのため、民法709条の不法行為のルールに基づき損害賠償を請求することになります。
賠償を請求できる主な項目は次の通りです。
- 修理費:修理が可能な場合に請求できます。ただし、事故当時のキックスケーターの時価額が上限となります。
- 買替費用:修理が不可能な場合や、修理費が時価額を上回る場合に請求できます。
- その他の損害:事故によって同時に破損した所持品なども請求の対象となります。
なお、補償額は購入時の金額ではなく、事故当時の「時価相当額」が原則です。購入から年数が経過しているほど評価額は下がるため、新品価格がそのまま補償されるわけではない点に注意が必要です。
相手が「電動キックボードや自転車と同じだ」と言ってきたらどうする?
相手方から「キックスケーターも自転車や電動キックボードと同じ車両だから、車両のルールが適用されるはずだ」と主張されることがあります。しかし、これは法的に誤りです。
自転車も電動キックボードも、法律上「車両」に分類されます。一方、モーターのないキックスケーターは、原則として「車両」には該当せず、「歩行者」として扱われます。この違いは過失割合の判断に直接影響するため、非常に重要です。
こうした誤った主張をそのまま受け入れてしまうと、本来より不利な過失割合が認められるおそれがあります。相手の主張に疑問を感じたら、早めに弁護士へご相談ください。
まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談
キックスケーターの事故では、正しい法的知識がないと、本来よりも不利な過失割合を押しつけられてしまう危険があります。
キックスケーターに乗っているときに自動車などと衝突した場合、法律上は原則として「歩行者」として扱われ、自転車事故と比べて被害者側の過失が小さく認められるケースがあります。しかし、「遊具」という特殊な位置づけであるがゆえに確立した基準が少なく、キックスケーターの構造や事故の状況によって判断が大きく変わるという難しさもあります。
相手方が誤った主張をしてきた場合や、提示された過失割合に納得がいかない場合は、専門家の力を借りることが解決への近道です。
よつば総合法律事務所では、交通事故に詳しい弁護士が個別の事情を丁寧にお聞きし、適切な過失割合の主張をサポートします。

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弁護士 粟津 正博













