交通事故の政府保障事業とは?手続きや補償額を弁護士が解説

最終更新日:2025年12月22日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q交通事故の政府保障事業の手続きや補償額はどのようなものですか?

交通事故の政府保障事業とは、①ひき逃げや②加害者が自賠責保険に加入していない無保険事故の被害者を救済するための制度です。この制度を利用することで、本来加害者が支払うべき損害賠償金の一部を、国(政府)からてん補してもらうことができます。

手続きは損害保険会社を通じて行い、補償額は自賠責保険の基準に準じます。

ただし、これは最終的な救済措置と位置づけられているため、利用にはいくつかの条件や注意点があります。

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政府保障事業とは

政府保障事業は、自動車損害賠償保障法に基づき、国土交通省が運営する被害者救済制度です。

自動車の運転によって人の生命や身体が損なわれた場合、通常は加害者が加入する自賠責保険から保険金が支払われます。しかし、ひき逃げで加害者が不明な場合や、加害者が自賠責保険に加入していない場合など、自賠責保険による救済を受けられない被害者も存在します。

このような被害者を救済するため、政府保障事業は、加害者に代わって被害者が受けた損害をてん補します。ただし、政府保障事業は、損害賠償そのものではなく、社会保障的な性格を持つ最終的な救済措置です。そのため、政府は被害者に補償金を支払った後、その費用を加害者に対して請求します。

政府保障事業を受けるには、次の条件を満たす必要があります。

  • 加害者の車両が自賠責保険に未加入、または不明である
  • 被害が人身損害(死亡・傷害・後遺障害)である
  • 他の社会保険制度(健康保険・労災保険など)で補償されない部分である
  • 被害者自身に100%の過失がある事案ではない

政府保障事業を使う具体例

政府保障事業の対象となるのは、主に次のようなケースです。
  1. ひき逃げ事故
    加害車両が特定できず、加害者が誰だかわからない場合です。
  2. 自賠責保険についての無保険車による事故
    加害車両が自賠責保険に加入していない、または保険期間が切れていた場合です。
  3. 盗難車などによる事故
    盗まれた車や、持ち主の許可なく運転された車による事故で、車両の保有者にも運行供用者としての責任(自賠責保険の支払義務)が認められない場合です。

いずれの場合も、加害者の自賠責保険からの救済を受けられない被害者が対象です。

政府保障事業の手続き

政府保障事業への請求は、自賠責保険と異なり「最終的な救済措置」として位置づけられており、手続きには一定の時間と労力がかかります。

手続きの流れ

以下に、損害のてん補請求から支払いまでの流れについて順を追って解説します。

  1. 警察に人身事故の届出をしておく

    補償の対象となるには、事故が「人身事故」として正式に届出されていることが必要です。物損事故のままでは請求できない場合があるため、負傷がある場合は必ず人身事故の届出を行ってください。

  2. 治療に専念する

    政府保障事業には、自賠責保険のような「仮渡金制度」は存在しません。そのため、請求は原則として治療が終了し、損害額が確定した後に行います。

    事故後はまず治療に専念し、通院・入院・後遺障害の有無など、損害の内容が明らかになるまでの期間が必要です。

  3. 損害保険会社に連絡し、請求書類を入手する

    治療が一段落したら、政府保障事業の窓口となる損害保険会社に連絡し、「政府保障事業への請求をしたい」と伝え、請求書類一式を取り寄せます。

    請求書類には次のようなものが含まれています。

    • 政府保障事業のご案内
    • 請求書類一式
    • 記入例
    • 返信用封筒
  4. 請求書類の作成と必要資料の収集

    送られてきた書類を参考にしながら、自身で記入を行い、必要書類を各所から集めます。

    書類の記載や収集に不安がある場合は、保険会社の窓口に相談するか、弁護士など専門家に相談するのも有効です。

  5. 損保会社の窓口に書類を提出する

    書類がすべて揃ったら、連絡を取った損害保険会社の窓口に書類一式を提出します。ここでの窓口が、その後の請求手続き全般を担当する窓口となります。

  6. 損保会社が損害保険料率算出機構に調査を依頼

    損保会社は提出された書類を確認し、「損害保険料率算出機構」に対して、事故状況や損害の調査を依頼します。

  7. 損害保険料率算出機構による詳細調査

    公正中立な立場から事故の発生状況や損害額の調査を担うのが損害保険料率算出機構です。同機構は、必要に応じて次のような調査を実施します。

    • 医療機関への照会
    • 事故現場の実地確認
    • 被害者への書面照会
    • 加害者の特定状況の確認

    特にひき逃げの場合は、同機構から被害者に対して、事故の詳細や被害状況についてかなり細かい質問が書面で届くことがあります。

  8. 調査結果が国(国土交通省)へ送付される

    損害保険料率算出機構がまとめた調査結果は、損保会社を通じて国土交通省に提出されます。ここで最終的な判断が行われます。

  9. 国土交通省がてん補額を決定し通知

    国土交通省は調査結果に基づき、てん補の可否と支払金額を決定します。その結果は損保会社に通知されます。

  10. てん補金の支払い

    損保会社は国からの通知を受け、被害者の指定口座に対して、てん補金を支払います。

  11. (必要に応じて)追加対応

    この制度は審査が厳格かつ慎重なため、追加資料の提出や再照会が発生する可能性があります。

必要な書類

政府保障事業への請求では、事故の内容や損害の程度によって提出が求められる書類が異なります。以下に、各書類の概要と、どのようなケースで必要になるのかをまとめました。

共通・基本書類

事故の種類にかかわらず、全てのケース(傷害・後遺障害・死亡)で基本的に必要となる書類です。

No.1

事故発生時の行動目的

作成者・発行者 請求者
必要となるケース 全ケース。通勤や私用の区別を明確にするため。
No.2

損害のてん補請求書

作成者・発行者 請求者
必要となるケース 全ケース。請求の正式な申立書。
No.3

人身傷害保険(共済)への請求に関する確認書

作成者・発行者 請求者
必要となるケース 全ケース。他の保険制度との重複確認。
No.4

戸籍(除籍)謄本

作成者・発行者 市区町村
必要となるケース 死亡事故のみ。死亡者・遺族関係を証明。
No.5

委任契約書のコピーまたは委任状

作成者・発行者 委任者
必要となるケース 弁護士や代理人が手続きする場合に必要。
No.6

念書(未成年の場合)

作成者・発行者 請求者
必要となるケース 請求者が未成年の場合に必要。
No.7

交通事故証明書(人身事故扱い)

作成者・発行者 自動車安全運転センター
必要となるケース 全ケース。事故が人身事故として扱われていることを証明。
No.8

事故発生状況報告書

作成者・発行者 事故の被害者
必要となるケース 全ケース。事故発生の経緯と状況を説明。
No.9

同意書

作成者・発行者 事故の被害者
必要となるケース 全ケース。調査機関による照会・調査への同意。

医療関連書類

医療関係の書類は、けがを負った場合や後遺障害・死亡に至った場合の全てで必要となります。損害額算定の中心資料になるため、内容の正確さが重要です。

No.10

診断書

作成者・発行者 医療機関
必要となるケース 傷害・後遺障害・死亡すべて。
No.11

診療報酬明細書(入院用)

作成者・発行者 医療機関
必要となるケース 入院した場合。
No.12

診療報酬明細書(通院用)

作成者・発行者 医療機関
必要となるケース 通院のみで治療した場合。
No.13

薬局領収書(院外処方)

作成者・発行者 薬局
必要となるケース 通院・入院いずれでも、薬代を支出した場合。
No.14

施術証明書・施術費領収書

作成者・発行者 整骨院・接骨院・鍼灸院など
必要となるケース 整骨院・マッサージ院で施術を受けた場合。

費用・損害関連書類

治療や仕事への影響によって生じた費用・損失を証明するための書類です。主に傷害・後遺障害の場合に必要となります。

No.15

通院交通費領収書

作成者・発行者 被害者
必要となるケース 通院・リハビリがある場合。
No.16

通院交通費明細書

作成者・発行者 請求者
必要となるケース 上記と併せて必要。バス・電車・タクシー代など。
No.17

休業損害証明書・事故前年の源泉徴収票

作成者・発行者 勤務先
必要となるケース 給与所得者が休業損害を請求する場合。
No.18

事故前年の確定申告書

作成者・発行者 請求者
必要となるケース 自営業者が休業損害を証明する場合。
No.19

住民票(続柄の省略のない世帯全員の記載があるもの)

作成者・発行者 市区町村
必要となるケース 家事従事者が休業損害を請求する場合。

死亡事故時の書類

死亡事故で遺族が請求する場合に追加で必要となる書類です。遺族構成、死亡原因、請求資格の確認などを目的としています。

No.20

事故後、全員および続柄が記載された住民票

作成者・発行者 市区町村
必要となるケース 死亡事故で遺族が請求を行う場合。
No.21

死亡診断書または死体検案書(主治医)

作成者・発行者 医療機関
必要となるケース 医師が作成。死亡原因を証明するため。
No.22

死体検案書または死亡診断書(検案医)

作成者・発行者 医療機関
必要となるケース 検案医が死亡確認を行った場合。

支払い手続き関連書類

審査終了後に補償金の振り込みを受けるための書類です。金銭の支払手続きを正確に行うために、いずれのケースでも必須です。

No.23

てん補支払依頼書(振込依頼書)

作成者・発行者 請求者
必要となるケース 全ケース。補償金の受け取り口座を指定するため。

書類の注意点

  • 書類は事故の種類(ひき逃げ・無保険車など)や損害内容によって異なります。
  • 書類が1枚でも不足すると、調査や審査が停止または延期される場合があります。
  • 提出前に必ず損害保険会社の窓口で自分のケースに必要な書類リストを確認してください。
  • 書類の収集には医療機関・役所・勤務先など複数機関が関与します。時間に余裕をもって準備することが大切です。

政府保障事業の補償額

政府保障事業では、自賠責保険と同様に損害の種類ごとに法定の支払限度額(上限)が定められています。被害者の受けた損害の内容に応じて、それぞれの範囲内で必要かつ相当な実費が補償される仕組みです。

傷害部分の補償額

政府保障事業では、交通事故によって被害者がけがを負った場合に対し、治療費や休業損害、慰謝料などの費用が補償されます。

ただし、傷害部分の補償額は自賠責保険と同様に上限120万円までと定められており、この範囲内で「必要かつ妥当な実費」が支払われます。

政府保障事業の場合、健康保険や労災保険から給付可能な金額全額が調整の対象となります。たとえば、通常の自賠責では調整の対象とならない、健康保険が立替えて負担している部分も調整の対象となるため注意が必要です。

具体的には、次のような損害について、請求することができます。

治療関係費

治療費

内容 診察料、入院料、投薬料、手術料、処置料、通院費、柔道整復など
支払基準 必要かつ妥当な実費

看護料

内容 ・入院中に近親者が付き添った場合(12歳以下の子どもなど)
・通院・自宅看護(医師が必要性を認めた場合)
支払基準 ・入院:1日あたり4,200円
・通院看護:1日あたり2,100円
・収入減の証明がある場合:1日あたり19,000円を上限に実費

諸雑費

内容 入院中の雑費(日用品など)
支払基準 原則として1日あたり1,100円

義肢等の費用

内容 義足、義歯、義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖、コルセット、コンタクトレンズなど
支払基準 必要かつ妥当な実費
・コンタクト等は原則5万円まで

診断書等の費用

内容 診断書や診療明細書の発行手数料など
支払基準 必要かつ妥当な実費

文書料

内容 交通事故証明書、印鑑証明書、住民票などの発行手数料
支払基準 必要かつ妥当な実費

休業損害

休業損害

内容 けがにより仕事を休んだことによる収入減の補償
支払基準 必要かつ妥当な実費

傷害慰謝料

慰謝料

内容 精神的・肉体的苦痛に対する補償
支払基準 1日あたり4,300円×対象日数(治療期間など)

後遺障害部分の補償額

交通事故により身体に後遺障害が残った場合、その等級に応じた補償を受けることができます。

政府保障事業では、自賠責保険と同様に後遺障害の等級(第1級~第14級)に基づいて、支払限度額が定められています。

等級が高いほど、補償額の上限も高くなり、最も重い後遺障害(第1級)では最大4,000万円まで補償を受けることが可能です。

具体的には、次のような費用について請求することができます。

後遺障害逸失利益

逸失利益

内容 後遺障害により労働能力が低下し、将来の収入が減少すると見込まれる場合の補償
支払基準 労働能力喪失率、喪失期間、被害者の収入等に基づき算定

後遺障害慰謝料

第1級(要常時介護)

支払基準(自賠責基準) 1,650万円

第2級(要随時介護)

支払基準(自賠責基準) 1,203万円

第3級~第14級

支払基準(自賠責基準) 1,150万円(第1級)~32万円(第14級)
・等級に応じて段階的に設定

また、次のような要素がある場合には、初期費用としての加算措置が認められます。

  • 第1級:最大500万円を加算
  • 第2級:最大205万円を加算

後遺障害が残る場合、将来的な生活設計や就労への影響が大きいため、正確な等級認定と、それに基づいた損害の算出が非常に重要となります。

死亡部分の補償額

交通事故によって被害者が死亡した場合には、被害者本人の損害のほか、遺族の精神的損害に対する慰謝料など、広範な費用について補償を受けることが可能です。自賠責保険と同様に、政府保障事業でも支払限度額は3,000万円に設定されています。

具体的には、次のような損害について、補償を受けることができます。

葬儀費

葬儀費

内容 通夜、葬儀、火葬、埋葬、墓石などに必要な費用
・香典返し、墓地費用等は除く
支払基準 一律100万円まで

死亡逸失利益

逸失利益

内容 被害者が死亡しなければ得られていたと想定される収入から、生活費等を控除したもの
支払基準 年齢、収入、就労可能年数、扶養の有無などを考慮して算定

慰謝料

被害者本人の慰謝料

内容 被害者が死亡したことに対する精神的苦痛に対する補償
支払基準 一律 400万円

遺族の慰謝料

内容 配偶者、子、父母などの遺族が被った精神的損害に対する補償
支払基準 一律 400万円

このように、死亡慰謝料は被害者本人と遺族それぞれに対して別々に補償が認められています。支払基準は定額で明確に定められており、遺族の人数や扶養状況によって加算される仕組みです。

政府保障事業の注意点

政府保障事業は、自賠責保険では救済が受けられない場合の最終的な補償制度です。しかし、自賠責保険と異なる点や、制度上の制約も多くあります。請求の際には、次の点に注意が必要です。

政府保障事業の時効

政府保障事業の請求には消滅時効があります。請求できる期間は次のとおりです。

請求の種類 時効の起算点 時効期間
傷害 事故の翌日 3年間
後遺障害 症状固定日の翌日 3年間
死亡 死亡日の翌日 3年間

政府保障事業では、自賠責保険への請求や、通常の金銭債権の請求とは消滅時効の更新等に関するルールが異なる可能性があります。そのため、早めの手続きをすることをおすすめします。

政府保障事業からもらえなかった分の補償

政府保障事業は、被害者への必要最小限の救済を目的とした制度です。そのため、てん補されるのは自賠責保険の限度額の範囲内であり、実際の損害額のすべてがカバーされるわけではありません。

補償額を超える損害については、加害者本人に対して直接請求する必要があります。ひき逃げ事故で後日加害者が判明した場合や、無保険の加害者に支払い能力がある場合には、別途、損害賠償請求訴訟などを通じて請求していくことになります。

自賠責保険と政府保障事業の違い

政府保障事業は、自賠責保険と補償内容が似ている一方で、制度の性格や運用面において、いくつもの重要な違いがあります。制度を正しく理解しておかないと、想定外の不利益を受けるおそれもあるため、次の点に留意が必要です。

① 請求できるのは被害者のみ

自賠責保険では、被害者だけでなく、事故の加害者からも一定の条件下で請求(加害者請求)が可能です。

しかし、政府保障事業では請求権者は被害者側に限定されており、加害者は一切請求できません。これは、政府保障事業が加害者に代わって被害者を救済するという制度趣旨に基づくものです。

② 親族間の事故は補償対象外

自賠責保険では、たとえば家族間で起こった自損事故でも、同乗者が被害者となる場合には補償の対象となります。

これに対して政府保障事業では、親族間で発生した事故は補償の対象外とされているので、注意が必要です。

③ 仮渡金制度がない

自賠責保険には、傷害について最大40万円、死亡について290万円など、事故直後の急な出費に対応する仮渡金制度があります。

一方、政府保障事業では仮渡金制度が設けられておらず、全損害が確定した後にしか請求できません。そのため、事故後しばらくは自己負担を強いられることになります。

④ 社会保険給付は差し引かれる

政府保障事業では、健康保険や労災保険など、他の社会保険から給付されるべき金額は、その分を控除した上で補償が行われます。たとえ実際に給付を受けていなくても、「受けられるはずの額」が差し引かれる点に注意が必要です。

通常の自賠責保険では、健康保険が立替えて負担している部分は調整の対象になりませんが、政府保証事業では同部分も含めて調整の対象となります。そのため、健康保険負担分も含めて治療費が高額になっているようなケースでは、被害者に支給される金額はわずかなものとなってしまいます。

⑤ 政府による加害者への求償がある

政府保障事業では、被害者に補償を行った後、加害者に対してその金額を求償します。これは、政府が最終的な救済を行う代わりに、加害者が自賠責保険に加入していなかったことの責任を問う形となっています。

一方、自賠責保険では、通常の事故で加害者に求償が行われることは原則ありません。

⑥ 書類の提出数が多い

政府保障事業での請求には、自賠責保険よりも多くの書類が求められます。書類不備があると審査が長引くため、丁寧な準備が重要です。

⑦ 支払いまでに時間がかかる

自賠責保険では、損害保険料率算出機構の調査を経て、比較的迅速に保険金が支払われます。

これに対し、政府保障事業では、同機構による調査の後に、さらに国土交通省の審査・決定を経る必要があるため、支払までに相当の時間がかかるのが一般的です。目安として、請求から6か月~1年以上を見込んでおく必要があります。

⑧ 時効の更新がない

自賠責保険では、時効更新の承認申請書を提出・受領することなどで時効が更新される取り扱いがあり、ある程度柔軟な対応が可能です。

しかし、政府保障事業では、事故発生日(あるいは症状固定日・死亡日)から3年以内にすべての請求を原則として完了することをおすすめします。自賠責保険と政府保障事業では消滅時効の扱いが異なる可能性があります。

政府保障事業のよくあるご質問

政府保障事業に関する制度は、一般の方にとってわかりにくい部分が多く、手続きや補償内容に関するご質問を多くいただきます。ここでは、実務上よく寄せられる疑問点について、わかりやすくお答えします。

どの保険会社のどの窓口に請求すればよいですか?

政府保障事業の請求窓口は、国内のすべての損害保険会社(外国の保険会社を除く)です。必ずしも契約している保険会社である必要はありません。たとえば、大手損保の窓口であればどこでも取り扱っています。

手続きに慣れている保険会社を選ぶと、書類の案内や手続きの進行が比較的スムーズです。特に、普段利用している保険代理店や店舗がある場合は、まずそちらに相談することをおすすめします。

自分に過失(落ち度)がある場合、補償額は減りますか?

被害者側にも過失があると認定された場合、その過失割合に応じてある程度てん補額が減ります。

過失割合が7割未満の場合には、補償額は減りません。過失割合7割を超える場合には、補償額が減る割合は次のとおりです。

被害者の過失 傷害の補償 後遺障害・死亡の補償
7割〜8割未満 2割減額 2割減額
8割〜9割未満 2割減額 3割減額
9割〜10割未満 2割減額 5割減額

被害者の過失が問題となる場合、どの程度の過失割合が妥当か、専門的な判断が必要になることが多いため、交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

請求してから実際に支払われるまでの期間はどのくらいですか?

ケースバイケースですが、請求後支払いが行われるまで、おおよそ6か月から1年以上かかると考えておいた方がよいでしょう。特に、後遺障害が関係する案件や、ひき逃げなどで事実確認に時間を要する案件では、より長期化する可能性があります。

書類不備や確認のやり取りによる追加対応が発生すると、さらに時間が延びるため、最初の書類提出時に正確かつ十分な資料を準備することが大切です。

労災保険も使える状況です。労災保険を使ったほうがよいですか?

労災保険が使える場合は、優先的に利用してください。

政府保障事業は、健康保険や労災保険などの他の社会保険制度では補償されない損害に対して、最終的な救済を行う制度です。そのため、労災保険から給付が受けられる場合には、たとえ実際に労災に請求していなくても、「本来給付されるべきだった金額」として、政府保障事業の支払額から控除されてしまいます。

たとえば、通勤中や業務中に起きた交通事故は労災保険の対象です。こうしたケースで労災を利用せずに政府保障事業のみを請求した場合、本来受け取れるはずだった給付が受けられなくなるおそれがあります。

そのため、労災保険が使える可能性がある場合は、まず労災保険に申請した上で、足りない部分を政府保障事業で補うという順序で対応することが重要です。

健康保険を使って治療を受けたほうがよいですか?

労災保険が使えない場合は、健康保険を使って治療を受けてください。

政府保障事業では、健康保険や労災保険といった他の制度を優先して利用することが求められています。

健康保険を利用できるにもかかわらず自由診療で治療を受けると、健康保険を使っていれば給付されたはずの金額がてん補の対象から外されてしまう可能性があるため、注意しましょう。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

政府保障事業は、ひき逃げや無保険事故といった不運な交通事故に遭われた被害者にとって、非常に重要なセーフティネットです。しかし、その手続きは複雑で、自賠責保険とは異なる点も多く、請求には専門的な知識が求められる場面も少なくありません。

特に、損害額の計算や後遺障害の等級認定、過失割合の判断など、受け取れる保障金の額に大きく影響する要素については、専門家である弁護士のサポートが有効です。

もしあなたが政府保障事業の対象となる可能性のある交通事故に遭い、手続きや今後の見通しについて不安を感じているなら、一人で悩まずに、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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