頭部外傷による高次脳機能障害
―――― 目次 ――――

頭部の構造
1)頭蓋骨
頭蓋骨は、脳を保護する脳頭蓋と、顔面を形成する顔面頭蓋から構成されています。
頭部は、脳が頭蓋骨という固い容器に収納されている構造となっています。
頭蓋骨よりも外側を頭蓋外といい、頭部軟部組織が覆っています。 頭蓋骨よりも内側を頭蓋内といい、脳が髄膜に包まれた状態で存在します。
脳に対して影響を及ぼす頭蓋内の損傷の有無が、頭部外傷では問題となります。
2)髄膜
頭蓋骨の下には、脳を包んでいる髄膜という膜があります。 髄膜は外側から順に、硬膜、クモ膜、軟膜の3層構造となっています。
①硬膜
硬膜は、頭蓋骨の内面に張りついているラバー状の非常に厚く強靭な膜です。脳と脊髄を周囲の組織から隔て、外傷や感染から守るという役割を担っています。
硬膜は、頭蓋骨の骨膜と癒着しつつ、頭頂部で大脳鎌と呼ばれる左右の大脳の間にくびれ込んでいます。
また、大脳と小脳の間には小脳を包む小脳テントという構造を作っています。
②クモ膜
クモ膜は、硬膜と軟膜の間にある透明な膜、薄く弱い膜で、ピンセットでつまむと破れます。
クモ膜と硬膜は密着していますが、クモ膜と軟膜との間にはクモ膜下腔という繊維性のネットがあり、脳脊髄液で満たされています。
このスペースに出血が起こるのがクモ膜下出血です。
③軟膜
軟膜は、脳及び脊髄の神経組織と癒着している透明な膜です。
脳の表面そのものです。したがいまして、はがすことはできません。
④脳脊髄液
脳と脊髄は脳脊髄液という液体の中に浮かんでおり、クモ膜の内側を無色透明の脳脊髄液が満たしています。
脳脊髄液は、外からの衝撃を吸収したり、脳、脊髄及び神経に栄養を供給して老廃物を除去したり、脳の形を保ったりするなどの役割を果たしています。
3)脳
脳は、成人で1.2キログラムから1.6キログラムの質量があります。
大脳、小脳、間脳、脳幹の4つの部分で構成されています。
間脳は、視床と視床下部とに分けられます。脳幹は、さらに中脳・橋・延髄に分かれます。
大脳は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に分けられ、それぞれ異なる機能を有しています。
部位 | 役割 |
---|---|
前頭葉 | 行動の開始、問題解決、判断、行動の抑制、計画、自己の客観化、情緒、注意・組織化、言語表出 |
側頭葉 | 記憶、聴覚、嗅覚、言語理解 |
頭頂葉 | 触覚、空間認知、視覚認知 |
後頭葉 | 視覚 |
脳幹 | 呼吸、心拍、意識・覚醒、睡眠 |
小脳 | バランス、運動調節、姿勢 |
自賠責保険の高次脳機能障害認定の入口の3要件
平成23年3月4日に損害保険料率算出機構内の検討委員会が「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」と題する報告書を発しました。
この報告書からは、次の事柄を読み取ることができます。
高次脳機能障害として認定を行うためには、脳の器質的損傷の存在が前提となる。
脳外傷による高次脳機能障害の症状を医学的に判断するためには、意識障害の有無とその程度・長さの把握と、画像資料上で外傷後ほぼ3か月以内に完成する脳室拡大・びまん性脳萎縮の所見が重要なポイントとなる。
したがいまして、自賠責保険において高次脳機能障害として認定されるための入口部分の立証として、次の3要件が必要になります。この3要件の立証を終えた次に、その障害がどの程度のものであるのかの立証の問題が出てまいります。
- 頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること
- 頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていること
- 上記の傷病名が、画像で確認できること
①頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること
平成23年3月4日に損害保険料率算出機構内の検討委員会が発出した「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」と題する報告書には、
①当初の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:CSが3~2桁、GCS、12点以下)が少なくとも6時間以上続いていることが確認できる症例
または
②健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が、少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例
については、主治医が高次脳機能障害や脳の器質的障害の診断を行っていなくても、高次脳機能障害審査の対象とすることが適当であると記載されています。
もちろん、主治医が高次脳機能障害や脳の器質的障害の診断を行っていれば、こうした意識障害の有無にかかわらず高次脳機能障害の審査対象となるわけですが、その場合でも、認定に関する判断においては意識障害の有無とその程度・長さを把握すると述べていますので、上記の程度の意識障害があるかないかは、入口部分の要件であるといってよいでしょう。
なお、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)やGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)というのは、意識レベルの評価方法です。
意識障害JCS | |
---|---|
Ⅰ覚醒している (1桁の点数で表現) |
0意識清明 1(Ⅰ-1)見当識は保たれているが意識清明ではない 2(Ⅰ-2)見当識障害がある 3(Ⅰ-3)自分の名前・生年月日が言えない |
Ⅱ刺激に応じて一時的に覚醒する (2桁の点数で表現) |
10(Ⅱ-1)普通の呼びかけで開眼 20(Ⅱ-2)大声で呼びかける、強く揺するなどで開眼 30(Ⅱ-3)痛刺激を加えつつ、呼びかけを続けると辛うじて開眼 |
Ⅲ刺激しても覚醒しない (3桁の点数で表現) |
100(Ⅲ-1)痛みに対し払いのけるなどの動作をする 200(Ⅲ-2)痛刺激で手足を動かす、顔をしかめたりする 300(Ⅲ-3)痛刺激に対して全く反応しない |
この他、R(不穏)I(糞便失禁)A(自発性喪失)などの付加情報をつけてJCS200-Iなどと表現します。
乳幼児意識レベルレベルの点数評価JCS | |
---|---|
Ⅰ刺激しないでも覚醒している (1桁の点数で表現) |
1あやすと笑う。ただし不十分で声を出して笑わない 2あやしても笑わないが視線は合う 3母親と視線が合わない |
Ⅱ刺激すると覚醒する (2桁の点数で表現) |
10飲み物を見せると飲もうとする。 あるいは乳首を見せればほしがって吸う 20呼びかけると開眼して目を向ける 30呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する |
Ⅲ刺激しても覚醒しない (3桁の点数で表現) |
100痛刺激に対し、払いのけるような動作をする 200痛刺激で少し手足を動かす、顔をしかめたりする 300痛刺激に対して全く反応しない |
GCS E○点+V○点+M○点=合計○点と表現 正常は15点満点、深昏睡は3点、点数は小さいほど重症 |
|
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開眼機能E (Eyeopening) | 4自発的に、または普通の呼びかけで開眼 3強く呼びかけると開眼 2痛刺激で開眼 1痛刺激でも開眼しない |
言語機能V (Verbalresponse) | 5見当識が保たれている 4会話は成立するが見当識派が混乱 3発語は見られるが会話は成立しない 2意味のない発声 1発語みられず |
運動機能M (Motorresponse) | 6命令に従って四肢を動かす 5痛刺激に対して手で払いのける 4指への痛刺激に対して四肢を引っ込める 3痛刺激に対して緩徐な屈曲運動 2痛刺激に対して緩徐な伸展運動 1運動みられず |
JCSでは3桁が重度な意識障害で、GCSでは点数が低いほど重度な意識障害となります。
PTA(外傷性健忘)の長さは脳損傷の重傷度の指標となります。
PTA(外傷後健忘)について | |
---|---|
重傷度 | PTAの持続期間 |
わずかな脳振盪 | 0~15分 |
軽度の脳振盪 | 1.5~1時間 |
中程度の脳振盪 | 1~24時間 |
重度の脳振盪 | 1~7日間 |
非常に重度な脳震盪 | 7日間以上 |
意識障害所見の重要性
1)入口部分の3要件の中では、意識障害所見が最も重要となります。
受傷直後・当初の意識障害の程度が、等級判断において重視されます。
なぜなら、自賠責保険において高次脳機能障害として認定を行うためには、脳の器質的損傷の存在が前提となりますが、脳神経外科医は、MRIでびまん性軸索損傷等の所見が得られなくても、意識障害のレベルから、それらの傷病の存在を推定し、診断することがあるからです。
しかしながら、担当医に対して、患者の外傷後健忘や軽度の意識障害が継続しているかどうかを、入院中につぶさに観察してその詳細や期間を把握することを期待することは、現実問題として困難です。というのは、そのようなことをしても、治療方針には変わりがないからです。
実際には軽度の意識障害が7日以上あったのに、三、四日で意識清明と判定されると、この後、いかに具体的な症状を立証しても、高次脳機能障害は入口段階で否定されてしまいます。
2)意識障害に関する対応
当初の意識障害がどの程度継続したかについて、診療録や看護記録で実際よりも短く記録されたとき、1年近く経ってからそれを覆すのは容易ではありません。
そこで、御家族の立場から、受傷から6時間、1週間の意識障害の経過を詳細に観察し、その結果を文書化しておくのがよいと存じます。それを主治医に提出して意識障害の記載を依頼するという方法が可能となるからです。
すでに実際より短い意識障害の所見が記載されているときは、入院期間中であれば、主治医も修正に応じてくれるかもしれません。意識障害や外傷性健忘のエピソードを具体的に記載、説明することで、主治医の理解がより得られやすくなるでしょう。
②頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていること
自賠責保険において高次脳機能障害として認定がされるためには、脳の器質的損傷の存在が前提となります。したがいまして、頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていることが要件になるといえます。
交通事故における頭部外傷(傷病名)
自賠責保険において高次脳機能障害として認定がされるためには、脳の器質的損傷の存在が前提となります。したがいまして、頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていることが要件になるといえます。
- ①脳挫傷
- ②急性硬膜外血腫
- ③前頭骨陥没骨折、外傷性てんかん
- ④びまん性軸索損傷
- ⑤対側損傷
- ⑥外傷性くも膜下出血
- ⑦外傷性脳室内出血
- ⑧急性硬膜下血腫
- ⑨慢性硬膜下血腫
- ⑩脳挫傷、頭蓋底骨折、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、びまん性軸索損傷の合併例
①脳挫傷
頭部外傷を示す傷病名の1つが、脳挫傷です。
脳挫傷とは、強い衝撃により頭蓋骨内部で脳が衝撃を受けて脳本体に損傷を生じる病態です。局所の脳組織が挫滅し、そこからの小出血や浮腫が生じます。
下のCT画像では、中央部右側に白い○状の形があるのが読み取れます。これが脳挫傷が生じた部分です。
これは、バイクを運転していたところ、自動車と出合い頭で衝突した方のものでして、左顔面部を強打し、左下顎骨骨折、左頬骨骨折となり、左下からの突き上げる衝撃で、左側頭葉に局在性の脳挫傷を来したものです。
下のCT画像は、自転車に乗っていたところ、軽自動車と出合い頭で衝突した方のものでして、左側頭部を骨折し、その衝撃により、打撲部位の直下の脳組織が挫滅を来したものです。 これも、局在性の脳挫傷となります。
上の頭蓋骨は、CTの3D画像で骨折線が確認できます。
②急性硬膜外血腫
急性硬膜外血腫も、頭部外傷を示す傷病名の1つです。
急性硬膜外血腫は、頭蓋骨と硬膜の間に出血がたまって血腫になったものです。通常、頭部外傷に伴う頭蓋骨骨折に合併します。
硬膜の外側にある硬膜動脈が、頭蓋骨骨折に伴って損傷して出血し、硬膜と頭蓋骨の間にたまって硬膜外血腫になります。
画像左側に凸レンズ状に白く広がっているのが急性硬膜外血腫です。


③前頭骨陥没骨折、外傷性てんかん
頭部外傷を受けた場合に、数か月から数年の間に突然発作が繰り返して現れてしまうことがあります。
このようなタイプのてんかんを外傷性てんかんといいます。
頭蓋骨骨折、脳挫傷の被害者には、外傷性てんかんの予防的措置として、一定期間、抗痙攣剤が投与されています。その結果、外傷性てんかんが発生することはほとんどありません。
しかし、頭蓋骨陥没骨折の傷害を負ったときは、高確率で外傷性てんかんが発生するようです。
外傷によって脳の実質部に残った瘢痕を除去するためには、手術によって摘出するほかありません。
この瘢痕部が時間をかけて、過剰興奮してしまうようになり、外傷性てんかんが発症するものと考えられています。
発作を繰り返すことにより、周辺の正常な脳神経細胞も傷つき、性格変化や知能低下の精神障害を来し、高度になると痴呆・人格崩壊に至ります。
この障害はとても深刻ですが、治療は、抗てんかん薬の投与が一般的です。
投薬で発作を抑えられないケースでは、発作焦点となっている脳の部分切除がなされますが、このケースでも、術後は長期にわたる薬物療法が続けられます。
投薬を続けながら、てんかんを示すスパイク波・鋭波が消失していくのを待ちます。消失したかどうかは、脳波の検査により確認します。
抗てんかん剤を内服中の女性は妊娠を避ける必要があります。
④びまん性軸索損傷
頭部に衝撃が加わり、その衝撃が脳に対する回転力として伝わることがあります。その場合、脳深部は脳表部より遅れて回転し、脳がいわばねじれてしまう状態になります。
その結果、脳の神経線維(軸索)が強く引っ張られ、広範囲に損傷した状態になります。ヘルメットを着用したオートバイ事故で、頭部に直接の打撲がない場合でも、強く脳が揺れることにより起こりえます。
びまん性軸索損傷では、相当に深刻な後遺障害が予想されます。
上の図は、頭頂部から頭蓋底に至る24枚のMRI画像の内の6枚目に映し出されたもので、前頭葉、両側頭葉に黒い点がいくつか映っているのが分かります。これは、脳表面の広範囲に広がる点状出血が画像として映ったものでして、びまん性軸索損傷があることを示します。
この画像は、症状固定段階で、T2スター強調のMRIの撮影を行ったものです。
点状出血を矢印で示したものが下の画像です。
脳外傷は、局所性脳損傷とびまん性脳損傷に大きく分けられます。
局所性脳損傷は、脳の限られた部位に生じるもので、たとえば、脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血などがあります。
これらも重傷であることには違いありません。とはいえ、局所性脳損傷においては、挫滅した部分の脳の機能のみが失われることから、重篤な後遺障害、認知障害を残すことは、一般的には、びまん性脳損傷よりは少ないといえます。
一方、びまん性脳損傷は、脳全体に損傷が生じるものをいいます。
上の画像の件では、被害者はフルフェイスのヘルメットを装用しており、頭蓋骨骨折や脳挫傷はありませんでした。
しかし、上記の画像で認められる広範囲の点状出血に伴う軸索の損傷があり、遂行機能障害、失語、記憶、聴覚や嗅覚、言語理解、認知の領域で、脳は大部分の機能を喪失していました。
びまん性軸索損傷では、6時間以上持続する意識消失を起こします。
脳神経外科の臨床では、頭部外傷のうち、受傷直後から6時間を超える意識消失が認められるときは、びまん性軸索損傷と診断がなされています。脳の表面に大きく広がる点状出血は、CTやMRIで捉えられないことが多く、通常は、明らかな脳組織の挫滅、脳挫傷や血腫が認められないものの、意識喪失の原因を、脳の細胞レベルの損傷が広範囲に生じたためと推定して、びまん性軸索損傷と診断するという取り扱われ方がなされています。
受傷直後のCTやMRI画像では、一見正常のように見えることもあります。しかし、精度の高いMRI撮影が行われていれば、微小な点状出血や浮腫が確認できることも多いです。
ところが、受傷から時間の経っていない時期にこうした撮影が行われているとは限りません。受傷から三、四週間が経過したときは、損傷所見が消失することもあり、こうなってからMRIを行っても、有意な画像所見が得られません。
それでも、等級の認定の場面では、画像所見が求められます(「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」と題する報告書には、「MRI、CT等によりその存在が認められることが必要である。」と明確に記載されています。)。
そのような場合でも、症状固定段階のT2スター強調のMRI画像を撮っておくことで対応できる場合もあります。
⑤対側損傷
頭部外傷では、衝撃が加わった部位と反対側の部位に脳挫傷や脳内出血などの脳損傷を発症することがあります。これは、対側損傷と呼ばれています。
頭部に強い衝撃が加わったとき、脳は強い力で一方に進行し、頭蓋骨内面に衝突します。その反動で脳が反対方向に引き戻され、対側の頭蓋骨に衝突して損傷するというメカニズムです。(直撃損傷。)
直撃損傷に加え、打撃部の反対側は、陰圧(圧力が低くなる状態)を生じて脳と骨との間が空洞化し、気泡が形成された後に元の圧力に戻る際、気泡が破裂して脳挫傷を生ずるというということもあります。このようにして衝撃を受けた部位と反対側の部位に生ずる脳損傷を、対側損傷(反衝損傷、反動損傷ともいいます。)を発生させることがあります。
後頭部に衝撃が加わったときは、後頭部よりむしろ前頭葉や側頭葉に対側損傷による脳損傷が生じやすいです。
上のCTは、前頭葉左側部の頭蓋骨骨折と脳挫傷の合併症ですが、対側損傷が発生し、対角線上の右後頭部に脳挫傷を発症しています。
対側損傷が生じるときのメカニズムは上記のとおりですが、その中間部位では外力が不均衡に伝わる結果、びまん性軸索損傷を伴うことも多いです。したがいまして、対側損傷の所見があり、かつ、重度な意識障害のあるときは、びまん性軸索損傷が疑われます。早期に精度の高いMRIを用いた撮影を行いたいところです。
⑥外傷性くも膜下出血
くも膜と軟膜(脳表面)の間に出血が広がったものを、くも膜下出血と言います。
通常脳脊髄液が満たしている箇所に、出血が生じます。
くも膜下出血というと、脳動脈瘤の破裂により起こるものだというイメージがあるかもしれません。
そこで、外傷を原因とするものは、外傷性くも膜下出血と診断されています。
通常は、脳挫傷からの出血がクモ膜と軟膜との間にひろがって、くも膜下出血の状態になります。
少量のくも膜下出血が、びまん性軸索損傷により生じることもあります。脳挫傷の所見がないのにくも膜下に出血が生じていることが確認されるときは、びまん性軸索損傷が生じている可能性があります。
くも膜下出血を手術で取り除く効果はほとんどないため、手術は通常、行われません。出血は自然に吸収されます。
予後の程度は、合併する脳挫傷やびまん性軸策損傷の有無と程度によります。
脳脊髄液の流れが滞って、あとから脳室が拡大して周囲の脳を圧迫する外傷性正常圧水頭症をきたすことも予想されます。
⑦外傷性脳室内出血
外傷性脳室内出血とは、外傷によって、脳の中心部にある脳室と呼ばれる空洞に出血が生じたものをいいます。脳が外傷によって脳室の壁が損傷を受け、そこからの出血が脳室内にたまるものです。
普段、脳室は脳脊髄液で満たされており、その脳脊髄液はいくつかの脳室を順に流れていきます。
脳室と脳室の間は非常に狭い孔や通路でつながっているのですが、脳室内出血によって脳脊髄液の通り道が詰まってしまうと、脳室が急速に拡大して、周囲の脳を圧迫します。(これを急性水頭症といいます。)また、徐々に流れが滞り、脳室が大きくなることもあります。(これを正常圧水頭症といいます。)
脳挫傷に伴って脳室の壁が損傷を受けたとき、そこからの出血が脳室内にたまって脳室内出血に至ります。
急性水頭症では、脳室が拡大して頭蓋骨の内側の圧力が高まり、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などが認められます。
さらに、脳室の拡大による圧迫が脳ヘルニアの状態にまで進行すると、深部にある脳幹が侵されて呼吸障害などを生じ、最悪の場合には死に至ります。
急性水頭症に対しては、局所麻酔をかけて頭蓋骨に小さな孔をあけ、脳室にチューブを挿入し、脳脊髄液とともに、脳室内の出血を取り除く脳室ドレナージ術が、緊急に行われます。
上記の画像の中央部に白く細長い像がありますが、これは、脳室内出血を抜き取るためのドレインチューブが映ったものです。
⑧急性硬膜下血腫
CT画像
MRI画像
上の画像は、巨大な三日月型の急性硬膜下血腫です。
急性硬膜下血腫とは、頭蓋骨のすぐ内側で脳を覆っている硬膜と、脳の間に出血がたまって血腫となったものです。
脳挫傷が生じ、そこからの出血が脳の表面と硬膜の間に流れ込み、短時間のうちにゼリー状に固まって、脳を圧迫します。これが急性硬膜下血腫となります。
脳挫傷の局所の反対側の部位に急性硬膜下血腫が認められることも、多数例あります。
血腫による圧迫と脳挫傷のため、頭蓋内圧力が亢進すると、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などが認められます。血腫による圧迫によって脳ヘルニア状態にまで進行し、深部にある脳幹が侵されて呼吸障害などを生じるようになると、最悪の場合には死に至ります。
「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン」では、血腫の厚さが1センチメートル以上あり、明らかな圧迫所見があるもの、血腫による神経症状を呈するものについては、緊急開頭血腫除去手術を行うのが望ましいとされています。
受傷当初は意識障害がない例でも、一旦意識障害が発現するとその後は急激に悪化することが多く、予後はきわめて不良です。
⑨慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫とは、頭部外傷後慢性期(通常1~2か月後)に、頭蓋骨のすぐ内側で脳を覆っている硬膜と脳との間に血(血腫)が貯まり、血腫が脳を圧迫するものです。全く異常がなかったのに、だんだん痛みだし、片麻痺、意識障害が徐々に出現・進行してきたり、認知症に似た症状が発生したりします。
高齢の男性に多く、好発部位は前頭、側頭、頭頂部です。右か左かの一側性の血腫が大半です。ときには両側性のこともあります。
上記のCTでは、両側に慢性硬膜下血腫が認められています。
頭部打撲をきっかけにして、硬膜と脳との間に少量の出血が起こり、これに脳脊髄液が混ざって血液の量が増えていきます。その反応でつくられる膜から少しずつ出血が繰り返され、血腫が大きくなると考えられています。
受傷直後は、出血は微量にとどまっていて、CTで確認することはできません。
血腫によって脳が圧迫されると、症状が出現し、このときはCTで確認できます。
慢性の血腫では血液濃度が薄いときがあり、CTでは灰色=等吸収域、黒色=低吸収域で映ることもあります。もちろん、MRIも診断に有用です。
外傷後、無症状の期間を経て、3週間~数か月以内に発症します。
症状は年代によってかなり差がみられ、若年者では、頭痛、嘔吐を中心とした頭蓋内圧亢進症状、片麻痺、失語症を中心とした神経症状がみられます。
一方、高齢者では、潜在する脳萎縮により頭蓋内圧亢進症状は少なく、痴呆などの精神症状、失禁、片麻痺による歩行障害などが主な症状です。
呆けだけを発症する慢性硬膜下血腫もあり、事故後、急な呆け症状が見られたときは、慢性硬膜下血腫を疑うことも重要です。(この呆け症状は、治療可能な痴呆症です。)
また、急激な意識障害、片麻痺を発症し、さらには、脳ヘルニアで生命に危険を及ぼす急性増悪型慢性硬膜下血腫も存在します。このときは脳出血・脳梗塞と似た症状になります。
症状より壮年~老年期の男性で頭痛、片麻痺、歩行障害や上肢の脱力、記銘力低下、意欲減退、見当識障害、痴呆の精神症状が徐々に進行するときは、慢性硬膜下血腫を疑うことが必要です。
高齢者などでは、老人性痴呆、脳梗塞として診断されることが少なくありません。
もちろん成人でも、男女を問わず、頭部外傷後数週間を経過してから前述の症状が見られたときは、慢性硬膜下血腫を疑うべきです。
画像診断を確実にするには、CTあるいはMRIが有効です。
治療は、血腫が少量で症状も軽いときは、自然吸収を期待して経過観察とすることもありますが、通常は局所麻酔下の手術が行われます。
慢性の血腫はさらさらした液状のため、大きく開頭しなくても小さな孔から取り除くことができます。
意識障害を伴う重篤な症状であるときは、緊急手術が行われます。後遺障害を残すこともあります。
⑩脳挫傷、頭蓋底骨折、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、びまん性軸索損傷の合併例
傷病名だけで絶望的になってしまうような感じがしますね。
外傷による局所の脳組織の挫滅・衝撃により組織が砕けるような損傷が生じます。それが脳挫傷です。
脳挫傷からの出血が脳の表面(脳表)と硬膜の間にたまると急性硬膜下血腫、さらに硬膜の内側にある薄いくも膜と脳の間に出血が広がっていくと外傷性くも膜下出血となります。
脳表面の広い範囲に点状出血が認められます。これはびまん性軸索損傷まで生じていることを示します。相当の重症例です。
③傷病名が、画像で確認できること
頭部外傷の傷病名がMRI画像、CT画像などで確認できることが必要となります。
高次脳機能障害の後遺障害認定基準
高次脳機能障害の後遺障害認定基準は、①入口3要件の立証によりそもそも高次脳機能障害と判断されるかどうか、②高次脳機能障害と判断されたとして後遺障害等級はどの程度となるか、という2つの段階があります。
交通事故における頭部外傷-入口3要件の立証
第1段階の立証 自賠責における高次脳機能障害認定の入口の3要件
まず、入口部分の3要件を満たしているかをチェックします。
自賠責からみると、「高次脳機能障害であると認定できるか」という問題にかかわる部分です。
入口の3要件は、
- 頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること
- 頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていること
- 上記の傷病名が、画像で確認できること
でした。
意識障害 | 傷病名 | 画像所見 | 自賠責による 高次脳機能障害認定可能性 |
|
---|---|---|---|---|
1 | ○ | ○ | ○ | ◎ |
2 | ○ | ○ | × | △ |
3 | △ | ○ | × | △ |
4 | × | × | × | × |
1)意識障害
上記3要件の中では、受傷当初の意識障害の有無が立証できているかが最も重要です。
外傷後健忘あるいは軽度意識障害が事故当初からどの程度継続しているかどうかについては、医師がつぶさにチェックすることを必ずしも期待できません(治療のために必要とはいえないからです。)。とはいえ、意識障害の立証の壁を越えられませんと、その他の全てが立証できても、高次脳機能障害として後遺障害等級されることは極めて困難になります。
立証の壁を超えるための一方法を頭部外傷による高次脳機能障害にお書きしました。
2)傷病名
診断された傷病名が脳挫傷、びまん性軸策損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳室内出血等であること 骨折後の脂肪塞栓で呼吸障害を発症し、脳に供給される酸素が激減した低酸素脳症も含みます。
3)画像で確認できること
診断書に記載された傷病名が、XP、CT、MRIで確認されていることが求められます。
局所性の損傷であれば、受傷直後の急性の血腫が画像として残っているか、さらに、MRIのT2FLAIR画像で急性期と慢性期のものを比較し、損傷部位の脳萎縮、脳室拡大の進行が認められるかどうかなどを確認する必要があります
びまん性軸索損傷であれば、急性期においては、MRIの拡散強調画像(DWI)で点状出血が認められるか、慢性期においては、MRIのT2スター強調画像で陳旧性の出血痕が認められるかなどといった確認をする必要があります。急性期と慢性期との画像を比較すると、脳全体に脳室の拡大や脳の委縮があることが確認できることもあります。
立証ができていなければ、主治医に面談して再検査の必要性に関する説明を行うなどしたうえで、新たな撮影をお願いしなければなりません。
第2段階の立証 日常生活における支障→検査実施
入口3要件の立証がクリアされていれば、その後に行う神経心理学的検査のメニューを決定するために、日常生活においてどのような支障が生じているかについて、具体的かつ詳細な内容を御家族から教えて頂きます。
これは、日常生活状況報告の記載にも役立ちます。
自賠責からみると、「どの程度の高次脳機能障害であるか」という問題にかかわる部分です。
失語症の分野では、
- 被害者の話し方を観察しましょう。
運動性失語(流暢性が喪失します。どもったり、言葉が出てこずに考え込んだりします。)は、左前頭葉のブローカ領域の損傷に由来します。
感覚性失語(言い間違いが多かったり、同じことを繰り返し話したり、意味不明なことを話したり、質問と答えがかみ合わなかったりします。)は、左側頭葉のウェルニッケ領域の損傷に由来します。
記憶障害(事故の前に経験したことが思い出せなくなったり、新しい経験や情報を覚えられなくなったりした状態)の分野では、
- 昨夜、夕食は何を食べましたか
- 今朝の朝食、何時頃、どんなものを食べましたか
- 事故以来、物忘れが多くなっていませんか
- 病院への通院日や外出する日を約束しても、単に忘れていたのではなく、約束したこと自体を覚えていないことがありますか
これらの質問が、逆向性健忘(事故以前の出来事に関する記憶を思い出すことの障害)あるいは前向性健忘(新しい出来事を覚えることに関する障害。記銘力の低下ということもできます。)の有無の判定に役立ちます。
- カップラーメンにお湯を入れてそのまま放置してしまう。
お湯を入れていたのを単に忘れていたのではなく、「あれ、誰がお湯を入れたんだろう。」とお湯を自分で入れたことを全く覚えていない状態です。ワーキングメモリー(目的達成のための一時的な情報保持)の喪失です。遂行機能障害をもたらします。
- 家族全員の名前、主治医の先生の名前、自宅のペットの名前が言えますか
固有名詞失名辞と呼ばれます。単なる度忘れとは区別する必要があります。
- 近隣でも迷子になったことがある。
- 新しい場所では、帰って来られないことがある。
地誌的障害(道順が記憶できない(記憶障害)・目印が見えても認識できない(視覚認知機能障害)・目印を見落とす(注意機能障害)、目印は認識できるが自分との位置関係が分からない状態(自己中心軸喪失)などが絡んでいます。)
視覚認知機能障害、失認、失行の分野では、
- 歩いていてよく左肩をぶつける。
- 食卓に並んだいくつかのおかずの皿から右半分しか箸をつけないといったことがある。
- 片側から話しかけられても反応しない、片側に人が立っていても存在に気づかないといったことがある。
半側空間無視とよばれる状態です。左目が見えないのではなく、左目に映る映像が認識できていません。視覚情報は脳に伝達されて脳で処理されますが、脳での処理機能に障害があるため、映る映像が認識できていないのです。家の絵を描かせると片側半分だけしか描かないといったこともあります。半側空間無視は、左側に異常が起こることが多いです。
- 右手を出してと言われて左手を出すなど、よく左右を間違える。
左右失認と呼ばれます。空間認識能力の低下も疑われます。
- 主治医の顔、もしくは新しく出会った人の顔を覚えられないことがある。
相貌失認(誰の顔かわからない、表情が識別できない状態)が疑われます。
- 箸やスプーン、歯ブラシが使えなかったり、事故前によく使っていた電気器具の使い方を忘れてしまったりする。
失行(身に着けた動作を行う機能が低下すること)です。着衣の動作がスムースに行えない(着衣失行)ということにもつながります。
注意障害(集中力の極端な低下)、遂行機能障害(順番を自分で決めて手順良く行っていく機能の障害)の分野では、
- 仕事を始めてもすぐ、ボーッとしてしまい、集中力がもたない。
- お皿を洗っている途中、気がつくと、テレビを観ている。
- 窓の掃除をすると、ずっと同じところを拭いている。
集中力が極端に低下し、そのため脈絡のない行動をとったり、会話にまとまりがなく話が飛びがちになったり、同時にいくつかの作業を進めることができなくなったり、一つのことに固執したりします。勉強や仕事を行うことは困難です。
- 旅行の計画やスケジュールを立てることができない。
- 買い物の段取りが悪く、売り場を行ったり来たりして何倍も時間がかかる。
- コピーを取ってFAXをする、その間に電話をするなど、同時並行で複数の作業ができない。
- 家族に促されないと病院に行かない、薬を飲まない。
遂行機能障害が生じています。物事を計画する・効率よく処理する・最後までやり遂げるといったことができません。注意障害と同様、同時に2つの作業を進めることができません。また、自発性(自分で行動する意欲)の低下も生じます。
社会的行動障害(情動障害、人格変化等)の分野では、
- ささいなことで激昂したり、すぐに疲れてしまったり、すぐに気が散ってしまったり、極端に甘えたりする。
- 幼児に返ったような行動があり、子供っぽい言葉づかいをするようになった。
- 人前でも平気で着替えを始めてしまう。
- 好きなお菓子ばかりを食べ続け、他の食べ物には見向きもしない。
易怒性、易疲労性、集中力の欠如、幼児退行、羞恥心の低下、感情失禁、脱抑制、固執性等を示します。感情を理性で抑えることができていない状態であることを示します。
- 毎週のようにゴルフをしていたのに、家にあるゴルフクラブに見向きもしなくなった。
- 猫好きで何匹も飼っていたのに、世話をしなくなった。
- 「誰かが私の財布を隠した。」などの被害妄想がある。
- 掃除、片づけをまったくしなくなり、部屋は散らかり放題。
- 逆に、ずぼらだった性格が几帳面になり、神経質に掃除をしている。
- いつも疲れていて家でゴロゴロ、居眠りが多い。突然眠ってしまう。
性格変化、易疲労性を示します。精神的に疲れやすくなってしまい、勉強や仕事を行うことが困難です。
味覚障害・嗅覚障害、運動障害、平衡感覚の障害等の分野では、
- 味がついているのに、大量に醤油をかけて食べる。
- 事故後、苦手で食べられなかった魚介類が食べられるようになった。
- 足元にガソリンがこぼれているのに、煙草を吸おうとしてライターを取り出す。
- 腐った果物を平気で食べる。
- まっすぐ歩けず、蛇行している。
- めまいを訴える。なんでもないところで転倒する。
- 頭痛に悩まされている。
といったことが手掛かりになりえます。なお、脳幹出血があったときは運動機能の障害に、小脳の損傷があったときは平衡感覚の喪失、運動神経の低下につながることがあります。
神経心理学的検査
被害者に生じた症状をもとに、以下の神経心理学的検査の中から適したものを抽出し、主治医にそれらの検査の実施をお願いします。
- ミニメンタルステート検査(MMSE)
- 長谷川式簡易痴呆スケール(HDS-R)
- ウェクスラー成人知能検査(WAIS-R)
- コース立方体組み合わせテスト(Kohs)
- ウィスコンシン・カード・ソーティングテスト(WCST)
- TinkerToyTest
- WAB失語症検査
- 標準失語症検査(SLTA)
- 老研版失語症鑑別診断検査
- レーブン色彩マトリックス検査(RCPM)
- 日本版ウェクスラー記憶検査(WMS-R)
- リパーミード行動記憶検査(RBMT)
- 三宅式記銘力検査
- ベントン視覚記銘検査
- レイ複雑図形再生課題(ROCFT)
- 街並失認、道順失認、地誌的記憶障害検査
- 抹消検査、模写検査
- 行動性無視検査(BIT)
- 標準高次視知覚検査
- トレイル・メイキング・テスト(TMT)
- PASAT(Paced Auditory Serial Addition Task)
- 注意機能スクリーニング検査(D-CAT)
- 標準注意検査法・標準意欲評価法(CAT・CAS)
- BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome)
- 100-7、数唱
- MMPIミネソタ多面人格目録
- CAS不安測定検査
- ロールシャッハテスト
日常生活状況報告
日常生活状況報告では、以下の4つの視点から考えてまとめます。
- 意思疎通能力
- 問題解決能力
- 持続力・持久力
- 社会行動能力
それぞれについて、具体的なエピソードに基づいて記載します。
まとめ
- 高次脳機能障害の後遺障害認定に際しては、①高次脳機能障害として認められるかどうかという段階、②高次脳機能障害として認められたとして後遺障害等級がどの程度になるかという段階の2段階があります。
- 高次脳機能障害として認められるかどうかという段階では①頭部外傷後の意識障害もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること、②頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていること、③上記の傷病名が画像で確認できること、の3つの要件を満たすことが原則として必要となります。
- 高次脳機能障害として認められたとして後遺障害等級がどの程度になるかという段階では、①画像所見、②事故後の意識障害の所見、③神経心理学的検査、④日常生活状況報告書の記載などによって等級が決まります。
- 高次脳機能障害として後遺障害認定がされる場合、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」(1級1号)、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」(2級1号)、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」(3級3号)、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(5級2号)、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(7級4号)、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」(9級10号)となる可能性があります。