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交通事故知識ガイド神経系統の機能又は精神の障害

交通事故における頭部外傷その2

【交通事故における頭部外傷】その2 自賠責における高次脳機能障害認定の入口の3要件

平成23年3月4日に損害保険料率算出機構内の検討委員会が「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」と題する報告書を発しました。
この報告書からは、次の事柄を読み取ることができます。

  1. 高次脳機能障害として認定を行うためには、脳の器質的損傷の存在が前提となる。
  2. 脳外傷による高次脳機能障害の症状を医学的に判断するためには、意識障害の有無とその程度・長さの把握と、画像資料上で外傷後ほぼ3か月以内に完成する脳室拡大・びまん性脳萎縮の所見が重要なポイントとなる。

したがいまして、自賠責保険において高次脳機能障害として認定されるための入口部分の立証として、次の3要件が必要になります。この3要件の立証を終えた次に、その障害がどの程度のものであるのかの立証の問題が出てまいります。

  1. 頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること
  2. 頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていること
  3. 上記の傷病名が、画像で確認できること

まずは、3要件についてみてまいります。

3要件その1 頭部外傷後の意識障害、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が存在すること

平成23年3月4日に損害保険料率算出機構内の検討委員会が発出した「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」と題する報告書には、

①当初の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:CSが3~2桁、GCS、12点以下)が少なくとも6時間以上続いていることが確認できる症例

または

②健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が、少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例

については、主治医が高次脳機能障害や脳の器質的障害の診断を行っていなくても、高次脳機能障害審査の対象とすることが適当であると記載されています。

もちろん、主治医が高次脳機能障害や脳の器質的障害の診断を行っていれば、こうした意識障害の有無にかかわらず高次脳機能障害の審査対象となるわけですが、その場合でも、認定に関する判断においては意識障害の有無とその程度・長さを把握すると述べていますので、上記の程度の意識障害があるかないかは、入口部分の要件であるといってよいでしょう。

なお、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)やGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)というのは、意識レベルの評価方法です。

意識障害JCS
 Ⅰ覚醒している
(1桁の点数で表現)
0意識清明
1(Ⅰ-1)見当識は保たれているが意識清明ではない
2(Ⅰ-2)見当識障害がある
3(Ⅰ-3)自分の名前・生年月日が言えない
 Ⅱ刺激に応じて一時的に覚醒する
(2桁の点数で表現)
10(Ⅱ-1)普通の呼びかけで開眼
20(Ⅱ-2)大声で呼びかける、強く揺するなどで開眼
30(Ⅱ-3)痛刺激を加えつつ、呼びかけを続けると辛うじて開眼
 Ⅲ刺激しても覚醒しない
(3桁の点数で表現)
100(Ⅲ-1)痛みに対し払いのけるなどの動作をする
200(Ⅲ-2)痛刺激で手足を動かす、顔をしかめたりする 300(Ⅲ-3)痛刺激に対して全く反応しない 

この他、R(不穏)I(糞便失禁)A(自発性喪失)などの付加情報をつけてJCS200-Iなどと表現します。

乳幼児意識レベルレベルの点数評価JCS
 Ⅰ刺激しないでも覚醒している
(1桁の点数で表現)
1あやすと笑う。ただし不十分で声を出して笑わない
2あやしても笑わないが視線は合う
3母親と視線が合わない 
Ⅱ刺激すると覚醒する
(2桁の点数で表現)
10飲み物を見せると飲もうとする。
あるいは乳首を見せればほしがって吸う
20呼びかけると開眼して目を向ける
30呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する
Ⅲ刺激しても覚醒しない
(3桁の点数で表現)
100痛刺激に対し、払いのけるような動作をする
200痛刺激で少し手足を動かす、顔をしかめたりする
300痛刺激に対して全く反応しない
GCS
E○点+V○点+M○点=合計○点と表現
正常は15点満点、深昏睡は3点、点数は小さいほど重症
開眼機能E (Eyeopening) 4自発的に、または普通の呼びかけで開眼
3強く呼びかけると開眼
2痛刺激で開眼
1痛刺激でも開眼しない
言語機能V (Verbalresponse) 5見当識が保たれている
4会話は成立するが見当識派が混乱
3発語は見られるが会話は成立しない
2意味のない発声
1発語みられず 
 運動機能M (Motorresponse) 6命令に従って四肢を動かす
5痛刺激に対して手で払いのける
4指への痛刺激に対して四肢を引っ込める
3痛刺激に対して緩徐な屈曲運動
2痛刺激に対して緩徐な伸展運動
1運動みられず

JCSでは3桁が重度な意識障害で、GCSでは点数が低いほど重度な意識障害となります。

PTA(外傷性健忘)の長さは脳損傷の重傷度の指標となります。

PTA(外傷後健忘)について
重傷度 PTAの持続期間
わずかな脳振盪 0~15分
軽度の脳振盪 1.5~1時間
中程度の脳振盪 1~24時間
重度の脳振盪 1~7日間
非常に重度な脳震盪 7日間以上

高次脳機能障害における後遺障害のポイント

1)入口部分の3要件の中では、意識障害所見が最も重要となります。

受傷直後・当初の意識障害の程度が、等級判断において重視されます。
なぜなら、自賠責保険において高次脳機能障害として認定を行うためには、脳の器質的損傷の存在が前提となりますが、脳神経外科医は、MRIでびまん性軸索損傷等の所見が得られなくても、意識障害のレベルから、それらの傷病の存在を推定し、診断することがあるからです。
しかしながら、担当医に対して、患者の外傷後健忘や軽度の意識障害が継続しているかどうかを、入院中につぶさに観察してその詳細や期間を把握することを期待することは、現実問題として困難です。というのは、そのようなことをしても、治療方針には変わりがないからです。
実際には軽度の意識障害が7日以上あったのに、三、四日で意識清明と判定されると、この後、いかに具体的な症状を立証しても、高次脳機能障害は入口段階で否定されてしまいます。

2)意識障害に関する対応

当初の意識障害がどの程度継続したかについて、診療録や看護記録で実際よりも短く記録されたとき、1年近く経ってからそれを覆すのは容易ではありません。
そこで、御家族の立場から、受傷から6時間、1週間の意識障害の経過を詳細に観察し、その結果を文書化しておくのがよいと存じます。それを主治医に提出して意識障害の記載を依頼するという方法が可能となるからです。
すでに実際より短い意識障害の所見が記載されているときは、入院期間中であれば、主治医も修正に応じてくれるかもしれません。意識障害や外傷性健忘のエピソードを具体的に記載、説明することで、主治医の理解がより得られやすくなるでしょう。

3要件その2 頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていること/ その3 傷病名が、画像で確認できること

頭部外傷を示す傷病名が診断書に記載されていることが3要件の1つです。次のものがあります。(これらに限られるという趣旨ではありません。)

頭部外傷の傷病名
脳挫傷 急性硬膜外血腫
びまん性軸索損傷  急性硬膜下血腫
びまん性脳損傷 外傷性くも膜下出血
外傷性脳室内出血 低酸素脳症

そして、これらの傷病名が画像で確認できることも3要件の1つです。