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交通事故知識ガイド上肢及び手指

上肢その17 肩鎖関節脱臼

上肢その17 肩鎖関節脱臼(けんさかんせつだっきゅう)

肩鎖関節

肩鎖関節は、鎖骨と肩甲骨の間にある関節です。
肩鎖関節の脱臼は、肩峰の情報からの直接の外力によるものがほとんどで、整形外科外来でよく見られる肩の外傷であるとする文献があります。

肩鎖関節脱臼のグレード
Ⅰ 捻挫 肩鎖靱帯の部分損傷です。烏口鎖骨靱帯や三角筋・僧帽筋は正常です。
XPでは、異常が認められません。
Ⅱ 亜脱臼 肩鎖靱帯が完全断裂したものです。烏口鎖骨靱帯は部分損傷し、三角筋・僧帽筋は正常です。XPでは、関節の隙間が拡大し鎖骨遠位端が少し上にずれています。
Ⅲ 脱臼 肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに完全断裂し、三角筋・僧帽筋は鎖骨の端から外れていることが多く、XPでは、鎖骨遠位端が完全に上にずれています。
Ⅳ 後方脱臼 肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに完全断裂し、三角筋・僧帽筋が鎖骨の端から外れたものです。鎖骨遠位端が後ろにずれている脱臼です。
Ⅴ 高度脱臼 Ⅲ型の程度の強いものです。肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂し、三角筋・僧帽筋は鎖骨の外側1/3より完全に外れています。
Ⅵ 下方脱臼 鎖骨遠位端が下にずれたものです。極めて稀です。

肩鎖関節脱臼は、肩鎖靭帯・烏口鎖骨靭帯の損傷の程度や鎖骨のずれの程度等に応じて、上記の6つのグレードに分類されています。
大多数はグレードⅢ未満で、グレードⅥは、滅多に発生しないといわれています。
Ⅰ・Ⅱでは保存的療法が選択され、Ⅲでは保存的療法と観血的療法のいずれかによります。Ⅳ・Ⅴ・Ⅵでは観血的療法による固定が選択されています。

肩鎖関節脱臼における後遺障害のポイント

1)グレードⅠの捻挫では、後遺障害を残しません。

2)グレードⅡ・Ⅲでは、外見上、鎖骨が突出し、ピアノキーサイン(突出した骨を手で押すと下に押し込むことができるものの、手を離すとすぐに戻ることです。)が陽性となったまま症状固定に至ることがあります。

鎖骨の突出

裸体で変形が確認できれば、体幹骨の変形として12級5号が認められます。
あくまでも外見上分かる程度の変形であり、XP撮影により初めて分かる程度のものは後遺障害としては認められません。
ピアノキーサインが陽性のときは、外見上変形していることが分かることを示す写真を撮影し、後遺障害診断書に添付して提出します。その際の写真ですが、両肩を撮影し、患側と健側の比較ができるようにしておく必要があります。

3)痛みの残存症状の取扱い
体幹骨の変形による12級5号では、骨折部の疼痛は周辺症状と扱われます。疼痛の症状が別途後遺障害に認定されて変形障害と併合されることはありません。つまり、疼痛の神経症状が12級13号に当たるから、結論的に併合11級になるということはありません。
しかし、痛みの残存症状があれば、後遺障害逸失利益に影響してきます。また、変形が認められなくても、肩鎖関節部の痛みで14級9号が認定されることもあります。
したがいまして、痛みの残存症状があれば、そのことを後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。

4)機能障害の取扱い
肩鎖関節部の靱帯損傷や変形により、肩関節の可動域に影響を与えることが予想されます。
こうしたときは、鎖骨の変形に加え、肩関節の機能障害が後遺障害認定に至る可能性があります。
骨折部位の状態はCT撮影や3DCT撮影で、靱帯の状態はMRI撮影で立証しなければなりません。

5)症状と後遺障害等級のまとめ

等級 症状固定時の症状
10級10号 患側の可動域が健側の2分の1以下となったもの
12級6号 患側の可動域が健側の4分の3以下となったもの
12級5号 鎖骨に変形を残すもの
14級9号 脱臼部に痛みを残すもの
併合9級 肩関節の可動域で10級10号+鎖骨の変形で12級5号
併合11級 肩関節の可動域で12級6号+鎖骨の変形で12級5号

肩関節の機能障害と鎖骨の変形障害は併合の対象となります。
痛みの神経症状は、変形障害の周辺症状として扱われ、併合の対象になりません。
ですが、等級併合の問題を措いても、痛みの残存症状があれば、後遺障害診断書に記載を受けなければなりません。