慰謝料が1日8,600円(4,300円)の注意点

最終更新日:2025年08月29日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q慰謝料が1日8,600円(4,300円)で示談してよいですか?

示談する前に一度弁護士に相談することをおすすめします。

1日8,600円(4,300円)は自賠責基準に基づく最低限の目安にすぎず、裁判所の基準(弁護士基準)を使えば2倍以上になるケースもあります。

示談は一度成立するとやり直しができないため、「もっと増額できたのに」と後悔する方も多いのが実情です。提示された金額が妥当かどうかを確認してから示談しましょう。

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慰謝料とは

交通事故における慰謝料とは、事故の被害を受けた人の精神的な苦痛を補うために支払われる金銭のことです。

交通事故でけがをしたり、治療が長引いたりすると、被害を受けた本人だけでなく家族も大きな不安や負担を感じます。慰謝料は、こうした目に見えない心の負担に対して支払われるもので、治療費交通費など、実際にかかった費用とは別に請求できます。

交通事故の場合、請求できる慰謝料は大きく3種類に分けられます。

  1. 入通院慰謝料
    けがの治療のために入院・通院を余儀なくされた精神的・肉体的な苦痛に対する補償です。
    入通院の期間や通院日数を基準に金額が決まります。
  2. 後遺障害慰謝料
    事故の影響で後遺症が残り、後遺障害として認定された場合に支払われます。後遺障害等級に応じて慰謝料の金額が変わり、症状が重いほど高額になります。
  3. 死亡慰謝料
    被害者が亡くなったときに支払われる慰謝料です。亡くなった本人の苦痛だけでなく、遺族が受けた精神的な苦痛も含めて補償します。家庭での役割や扶養家族の有無によって金額が異なります。
慰謝料は状況により複数を請求できることがあります。たとえば、治療を続けても完治せずに後遺症が残り、後遺障害として認定された場合は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の両方を受け取れます。

慰謝料の3つの基準

交通事故の慰謝料は、どの基準で計算するかによって金額が大きく変わります。慰謝料の算定には、一般的に次の3つの基準があります。

  1. 自賠責保険の基準
    自賠責保険の基準とは、国が定めた基準であり、自賠責保険の支払い額を算定するときに使われます。最低限の対人賠償を確保することが目的のため、3つの基準のなかで慰謝料の金額は最も低くなる可能性が高いです。
  2. 任意保険の基準
    任意保険の基準は、任意保険会社が示談交渉に使う独自の基準です。具体的な基準は公表されていませんが、一般的に自賠責基準よりは高く、裁判基準よりは低くなることが多いです。
  3. 裁判所の基準(弁護士基準)
    裁判所の基準は、裁判所の過去の判例をもとに決められた基準です。弁護士が示談交渉を行う際にも、この基準を参考にします。3つの基準の中で最も慰謝料が高額になることが多いです。

慰謝料が1日8,600円の提示となる理由

交通事故でけがをした場合、入院や通院による精神的な負担を補うために入通院慰謝料を請求できます。保険会社から「1日8,600円です」と提示されることも少なくありません。それがどのような根拠に基づいているのか、詳しく見ていきましょう。

まず、保険会社が提示する入通院慰謝料は、自賠責基準をもとに計算されることが一定割合であります。

自賠責基準は、国が定めた最低限の補償をするためのルールです。ここでは、入通院慰謝料は原則として1日4,300円で計算されます。ただし、実際の治療状況に合わせて負担を正しく反映するため、次の2つの計算式のうち、金額が少ない方が適用されます。

  1. 入通院した期間の日数×4,300円
  2. 実際に入通院した日数×2×4,300円

このような計算式を用いるのは、通院しない日にも、交通事故のけがによる精神的な負担は続いていると考えられるからです。そこで、自賠責基準では実通院日数を2倍して補正し、通院していない期間の負担も含めて適正に評価できる仕組みになっています。

つまり、保険会社が提示する「1日8,600円」という金額は、②実際に通院した日数×2×4,300円の計算式に基づいて算出された結果であり、あくまで便宜的な説明にすぎないという点に注意が必要です。

1日8,600円の提示があった場合の対応方法

保険会社から「慰謝料は1日8,600円です」と言われたとき、「そんなものか」と思ってそのまま示談してしまう方は少なくありません。しかし、入通院慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・裁判所の基準(弁護士基準)の3つがあり、自賠責基準は最低限の補償にすぎません。示談は一度成立するとやり直しが難しく、あとで「裁判所の基準ならもっともらえたのに」と後悔する方が非常に多いのが現実です。

とはいえ、ネットや本で裁判基準を知っていても「請求」と「獲得」は別物です。保険会社は営利企業なので、弁護士がついていない被害者には「裁判にならないだろう」と考え、できるだけ低い基準で解決しようとするのが通常です。

ここでは、提示額が妥当かどうかを確認し、必要に応じて納得のいく解決を目指すための現実的な3つの対応方法を紹介します。

裁判所の基準を示して自分で交渉する

まずは自分で裁判所基準(弁護士基準)を調べて、保険会社に提示する方法があります。

裁判所基準による入通院慰謝料の相場は、「赤い本」と呼ばれる公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する基準表にまとめられています。別表Ⅰ(比較的重症用)と別表Ⅱ(比較的軽傷用)があり、これをもとに「通院〇か月ならこのくらいが相場」という目安を知ることができます。

ただし、問題なのは保険会社に対して「裁判所基準で払ってください」と言っただけで、その金額を本当に受け取れるかという点です。保険会社は、弁護士がついていない相手には「弁護士を通してきてください」と突っぱねてくることも珍しくありません。

また、自分だけで話を進めると、感情的になったり、必要な証拠を出しきれなかったり、相手のペースで「このくらいで示談しませんか」とまとめられてしまうことも多いです。

自分で進める場合は、示談書にすぐにサインせず、次のような最低限の準備をしてから冷静に話をすることが大切です。

  • 赤い本のどの表を使ったか、どの期間で計算したかを整理する
  • 診断書や通院日数を証明する書類を揃える
  • 休業損害や後遺障害があれば、その金額も一緒に根拠を用意する

示談は一度成立すると基本的にやり直しができません。少しでも「本当にこの金額でよいのかな?」と感じたら、すぐに結論を出さず、一度弁護士に相談することも考えてみてはいかがでしょうか。

弁護士に相談してアドバイスを受けた後、自分で交渉する

「いきなり弁護士にすべてを任せるのは少し気が引ける」という方は、まずは弁護士に相談だけしてアドバイスを受けた後、自分で交渉するという方法もあります。

弁護士に相談すれば、赤い本をもとにした裁判所基準の正確な金額の目安や、休業損害や後遺障害の有無を含めた適正な示談金の考え方を教えてもらえます。特に後遺障害の等級認定が絡む場合や、治療期間の長さが問題になる場合など、自分では判断しにくい部分を見逃さずに済みます。

一方で、相談だけで実際の交渉は自分で進める場合、次のような大変な点があります。

  • 保険会社とのやりとりに時間と労力がかかる
  • 相手のペースに飲まれて感情的になりやすい
  • 必要な証拠や診断書の集め方を間違えると不利になる

しかも、保険会社は示談交渉のプロですから、「これ以上は出せません」と言われたときに、どこまで根拠を示して食い下がれるかが重要です。

だからこそ、示談書をすぐに受け取らず、弁護士から「ここは強く言うべき」「これ以上は裁判を見据えてもよい」といった具体的な進め方を聞いてから臨むだけでも、結果は大きく変わります。自分だけで進める前に、まずは弁護士の意見を聞いてみてください。

弁護士に交渉を依頼する

「一度は自分で交渉してみたけれど、相手のペースに流されてしまった」
「何をどう主張していいか分からない」
そんなときは、弁護士に示談交渉を一任する方法が最も確実です。

弁護士が代理人として入ると、保険会社は「裁判になるかもしれない」と判断し、裁判所基準(弁護士基準)での支払いを現実的に検討するようになります。保険会社としても、余計な時間とコストをかけて裁判になるのは避けたいというのが本音です。

また、弁護士に任せれば、次のような複雑な手続きをすべて代わりに進めてもらえます。

  • 赤い本に基づく適正な金額で計算し直す
  • 休業損害後遺障害逸失利益なども含めて不足なく請求する
  • 必要な証拠を整理し、相手に正確に主張する

面倒な保険会社との連絡を弁護士が代わりに行うため、交渉のストレスから解放されるのも大きなメリットです。

弁護士費用が不安という声も多いですが、自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、相談料も依頼料も実質負担ゼロになることがほとんどです。特約がなくても、着手金無料の成功報酬制を取り入れている法律事務所なら、「増額した分の中から弁護士費用を支払う」という形で進めることも可能です。

実際に「最初から弁護士に頼んでおけばよかった」と後悔する方は少なくありません。
納得できない金額をそのままにしないために、自分だけで抱え込まずに、早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。

1日8,600円(4,300円)の慰謝料提示は弁護士に相談

保険会社から「慰謝料は1日8,600円(4,300円)です」と言われたとき、「この金額が相場なんだ」と思ってすぐに示談してしまう方は少なくありません。しかし、この金額は最低限の自賠責基準にすぎないことがほとんどです。

交通事故の慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準(弁護士基準)の3つの基準がありますが、弁護士が介入しないと多くのケースで低い基準のまま示談されてしまいます。

示談は一度成立すると、原則としてやり直しはできません。だからこそ、「提示された金額が本当に正しいのか」を一度専門家に相談することが大切です。

弁護士に相談することで、裁判所の基準に照らして適正な金額がいくらになるのか、後遺障害や休業損害を含めてどこまで増額が見込めるのかを確認できます。また、弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りを一任できるため、ご自身は心身の回復に専念することが可能です。

保険会社との交渉は思っている以上に大変で、相手はプロだからこそ一筋縄ではいきません。納得できない金額をそのままにして後悔しないために、示談書にサインする前に、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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