子どもが交通事故の被害にあった場合の注意点

最終更新日:2026年03月11日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q子どもが交通事故の被害にあった場合の注意点には何がありますか?

子どもが交通事故の被害にあった場合、初動対応から示談交渉まで、大人の場合とは異なる注意点があります。特に重要なのは次の4点です。

  1. 事故直後に整形外科などを受診する
  2. 症状がある限り定期的に通院を続ける
  3. 親の付添費用を請求できる
  4. (後遺障害の場合)子供の将来の逸失利益を請求できる

この記事では、子どもが交通事故にあった場合の具体的な対応方法と、賠償金を適切に受け取るための注意点を解説します。

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子どもが交通事故にあった場合の初動対応

交通事故が発生した直後は、子どもの安全確保を最優先に行動することが重要です。

初動対応のポイントは次の2つです。

警察に連絡する

事故が起きたら、まずは警察に連絡しましょう。

警察への通報は法律上の義務であると同時に、事故があったことを公的に証明する「交通事故証明書」を発行してもらうためにも必要です。

この証明書は、後の保険金請求や損害賠償請求の手続きで重要な書類となります。

整形外科などを受診する

 

けがの程度にかかわらず、速やかに医療機関を受診させましょう。

子どもの場合は小児科を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、交通事故によるけがについては整形外科を受診することが重要です。

整形外科は骨や筋肉、神経などの外傷を専門的に診断・治療できるため、事故による症状に適切に対応できます。

また、交通事故では、事故直後には症状が現れず、数日経ってから痛みなどが出てくることも少なくありません。

恐怖や興奮で痛みを感じにくくなっていることもあるため、外見上けががないように見えても、念のため医療機関で診察を受けることをおすすめします。

事故から時間が経ってから初めて受診すると、その症状と事故との因果関係を疑われる可能性もあります。適切な治療と正当な賠償を受けるためにも、事故後なるべく早く医師の診察を受けることが重要です。

子どもの治療の注意点

交通事故によるけがの治療は、賠償金の算定においても重要な意味を持ちます。

治療が終了するタイミングは「症状固定」と呼ばれ、賠償額の計算における一つの区切りとなります。

症状があれば定期的に通院

子どもに痛いところや不調がある場合は、医師の指示に従い、定期的に通院を続けることが大切です。

通院の頻度や密度は、慰謝料の算定にも影響を与える要素の一つです。

また、治療は「症状固定」と診断されるまで続きます。「症状固定」とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと判断された状態を指し、治療費が支払われるのは原則としてこの時点までとなります。

適切な治療を受け、症状の改善を図ることが第一ですが、それが賠償額にも関わってくることを覚えておきましょう。

経過観察での通院など念のための通院も検討

事故後すぐに病院を受診し、その後も必要に応じて経過観察を目的とした通院を行うことは、事故とけがとの因果関係を証明するうえで非常に重要です。

 

たとえ子どもが「痛くない」と言っている場合でも、事故直後の受診に加え、医師の判断に基づいて一定期間の通院や経過観察を行うことを検討しましょう。

 

交通事故による症状は、数日後など時間が経ってから現れることも少なくありません。事故後に痛みや違和感が出てきた場合でも、事故直後からの通院記録が残っていれば、事故との関連性をスムーズに認めてもらいやすくなります。

 

このように、症状が軽そうに見える場合でも、念のための通院や経過観察を行っておくことが、適切な治療と正当な賠償を受けるための重要なポイントとなります。

子どもの示談交渉の注意点

治療が一段落すると、加害者側の保険会社との間で「示談交渉」が始まります。

示談とは、裁判をせずに当事者間の話し合いで損害賠償の金額などを決める手続きのことです。

ここで合意した内容は、後から覆すことが原則として難しくなるため、慎重に進める必要があります。

通院の回数が少ないと慰謝料も少ない

慰謝料は、交通事故によって受けた精神的な苦痛に対して支払われる賠償金です。

この慰謝料を算定する際、通院の頻度(週に何回通ったかなど)が考慮されることがあります。

自己判断で通院をやめてしまったり、通院回数が極端に少なかったりすると、症状が軽かったと判断され、結果的に慰謝料が低く算定される可能性があります。

通院の期間が少ないと慰謝料も少ない

慰謝料の金額は、入通院に要した期間を基準に計算されるのが基本です。

通院期間が長くなれば、それだけ精神的な苦痛も大きかったと判断され、慰謝料は高くなる傾向にあります。

医師が「症状固定」と判断する前に、自己判断で治療を打ち切ってしまうと、本来受け取れるはずだった慰謝料が減額されてしまう可能性があるため注意が必要です。

親の通院付添費を請求できる

交通事故で子どもがけがをした場合、親などの近親者が通院や入院に付き添った際の費用を、損害賠償として請求できることがあります。

医師から付き添いの指示がある場合や症状が重篤である場合、または被害者が幼児や児童である場合など、付き添いの必要性が認められるときに適用されます。

付添費の金額は、適用する基準によって異なります。

基準 入院付添費 通院付添費
裁判所の基準 日額6,500円 日額3,300円
自賠責保険の基準 日額4,200円 日額2,100円

付添費は原則として決まった日額で算定されますが、例外的に親が子どもの付き添いのために仕事を休んで収入が減少した場合、その休業による減収と付添費のうち高額な方を被害者側に請求できることもあります。

その他、職業付添人を依頼した場合は必要かつ相当な実費全額が損害として認められることがあります。

後遺障害が認定されれば逸失利益を請求できる

治療を続けても完全には回復せず、体に何らかの症状が残ってしまった場合、後遺障害として認定される可能性があります。

後遺障害が認定されると、将来の収入減少に対する補償として「逸失利益」を請求することができます。

逸失利益とは、事故がなければ将来得られたはずの収入が、後遺障害によって失われることへの賠償です。

逸失利益は、次のような計算式によって算定します。

基礎収入(事故前の年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

まだ働いていない子どもの場合、事故前の年収は存在しませんが、将来働いて収入を得るはずだったと考えられます。

そのため、基礎収入には男子であれば男性の平均賃金、女子であれば男女平均の賃金を用いることが多いです。子どもの学歴や進学状況によっては、学歴別の平均賃金を採用することもあります。

労働能力喪失率は、後遺障害の等級によって決まります。等級が重いほど労働能力への影響が大きいと判断され、喪失率も高くなります。

また、労働能力が制限される期間は、18歳から67歳までの年数で計算することが多いです。

ここで注意が必要なのは、将来得られるはずの収入を現時点で一括して受け取る点です。本来であれば何年も先に得るはずだった収入を今受け取ると、その期間の運用益の分だけ多くもらいすぎることになってしまいます。そこで、運用益分を差し引くための調整係数として「ライプニッツ係数」が用いられます。

子どもが幼いほど、将来にわたる期間が長くなるため、逸失利益の金額は高額になる傾向があります。

過失割合が大人より有利になることがある

一般的に、13歳未満の子どもが関与する事故では、未成熟であることを考慮して、大人の場合よりも過失割合が低く評価される傾向があります。

具体的には、大人の事故と比べて、過失を5~20%有利に(少なく)認定するケースが多いです。

ただし、子どもの事故だからといって必ずしも過失がゼロになるわけではありません。

よくあるご質問

ここでは、子どもが交通事故の被害に遭った場合によくよせられるご質問にお答えします。

子どもは「痛くない」と言っています。それでも事故後に病院に連れて行ったほうがよいですか?

病院に連れていくことを検討しましょう。

子どもは、事故の驚きや興奮で痛みを感じにくくなっていることがあります。また、自分の症状をうまく伝えられないこともあります。

さらに、事故から数日経って症状が現れることも珍しくありません。

事故後すぐに医療機関を受診しなかった場合、後から出てきた症状と事故との因果関係を保険会社から争われる可能性があります。

子どもの健康を守るため、そして適切な賠償を受けるためにも、事故後は速やかに医師の診察を受けさせましょう。子どもの話だけではなく、医師の診察も踏まえたうえで、通院の必要性を検討しましょう。

子どもの後遺症が心配です。事故による治療終了のタイミングはいつころがよいですか?

治療の終了、すなわち「症状固定」のタイミングは、医師の判断に従うことが基本です。

症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態を指し、この時点で残っている症状が「後遺障害」に該当するかどうかが判断されます。

慰謝料や逸失利益などといった賠償金の主要な項目は、この症状固定の診断が下りてからでないと正確な金額が確定しません。

特に注意が必要なのは、全損害を正確に把握できない状況で、急いで少額の賠償金で示談をしてしまうケースです。

示談当時に予想できなかった後遺症が後から発生した場合、その損害について追加で賠償請求が認められる可能性はありますが、原則として一度成立した示談を覆すのは困難です。

後遺症が残る可能性がある場合は特に、医師とよく相談し、安易に治療を打ち切ったり示談に応じたりせず、慎重に判断することが重要です。

子どもが事故車の同乗者だった場合、誰に請求すればよいですか?

子どもが車に同乗中に交通事故に遭った場合、誰に損害賠償を請求できるかは、同乗していた車の運転者が誰であるか、そして事故の過失割合によって異なります。

親の車に同乗していた場合、相手車両の運転者に請求することになります。

ただし、これは相手に過失がある場合に限られます。親が運転する車が単独事故を起こした場合や、親に全面的な過失がある場合は、相手方への請求は難しいです。

一方、親以外の車に同乗していた場合は、「相手車両の運転者」と「同乗していた車の運転者」の両方に請求できる可能性があります。

どちらに請求するかは、それぞれの過失割合によって決まります。両方に過失がある場合は、過失の程度に応じて両者に請求することもできます。

お腹の赤ちゃん(胎児)分の賠償金はもらえますか?

胎児分の賠償金ももらえる可能性があります。

民法では、「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす」と定められています。

これにより、母親のお腹の中にいるときに交通事故にあい、その結果として赤ちゃんがけがを負った場合、その赤ちゃん自身が固有の損害賠償請求権を持つことになります。

ただし、この権利を行使するためには、赤ちゃんが無事に出生することが前提となります。

なお、死産となってしまった場合には、母親の慰謝料の増額を請求できることがあります。

親の保険の弁護士費用特約を使えますか?

子どもが交通事故に遭った場合、親が加入している保険に付帯する弁護士費用特約を利用できる可能性があります。

多くの弁護士費用特約では、保険の契約者本人だけでなく、その家族も補償の対象に含まれています。

ご自身の保険契約に弁護士費用特約が付いているか、補償の具体的な範囲や利用条件については、保険証券を確認するか、保険会社に直接問い合わせることをおすすめします。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

子どもが交通事故の被害にあうと、保護者は心身ともに大きな負担を強いられます。そのような状況で、加害者側の保険会社と交渉を進めることは非常に大変です。

特に、後遺障害が残るような重大な事故の場合、賠償額の算定は複雑になり、保険会社との交渉も難航しがちです。弁護士に相談すれば、法的な観点から適正な賠償額を算定し、保険会社との交渉を代理で行うことができます。

交渉が長期化することによる精神的な疲弊を避け、早期の適切な解決を目指すためにも、交通事故に詳しい弁護士のサポートは大きな力となります。

子どものために最善の結果を得るためにも、少しでも不安や疑問があれば、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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