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交通事故を起こした加害者は逮捕・勾留されるか

2021年07月05日

近年交通事故の件数が減ってきたといえ、痛ましい事件は後を絶ちません。
特に死亡事故などの場合、加害者が逮捕・勾留されるかという御質問を受けることがあります。



結論としては、被害者が亡くなってしまった場合や、重傷を負った場合であっても、必ずしも逮捕・勾留されるわけではありませんし、逮捕をされなかったり、一定の時期に釈放され自宅等にいながら警察・検察の捜査を受けることも多いです。ただし、ひき逃げや飲酒運転など故意が絡む悪質な事故に関してはこの限りではありません。
被害者としては、こんなに大きな事故を起こしたにも拘わらず、以前と同じ生活を送っていることに疑問を持たれる方も多いと思います。



1、交通事故を起こした場合に問われる罪


交通事故で人を死傷させた場合、加害者は過失運転致死傷罪という罪に問われることになります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。過失運転致死傷罪は、法定刑が7年以下の懲役若しくは7年以下の禁錮、又は100万円以下の罰金と規定されています。

また、飲酒運転、妨害目的の無理な割込みや幅寄せなどの危険な運転、殊更に信号を無視、重大な交通の危険を生じさせる速度での走行したなどの事情がある場合は、特に危険な運転行為によるものとして、危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条)に該当する可能性があります。危険運転致死傷罪は、法定刑が重く、負傷させた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上の有期懲役と規定されています。

2、逮捕


交通事故の加害者も、上記の罪を犯した被疑者として、一定の要件のもと逮捕・勾留がされ得ることになります。

もっとも、逮捕をするためには、加害者が逃亡や罪証隠滅の恐れがある等、逮捕の必要性があると認められる必要があります。したがって、実際に逮捕されるかどうかは、事故による結果や過失の重大性に加え、加害者の態度や、事故後に運転者が逃亡や証拠隠滅を企てたか否かなどの事故後の状況等から判断されることになります。

死亡事故や複数人が死傷している事故など被害の程度が大きいことや赤信号無視など過失の程度が大きいことはそれ自体逃亡の恐れをうかがわせる事情になり得るでしょう。一方で、死亡事故や重傷事故であっても、加害者が素直に事故を認め、救護義務を果たしている場合には、警察の判断で逮捕をされずに自宅に帰っている例も散見されます。

ひき逃げで逃亡のおそれがあると判断されたり飲酒運転で証拠隠滅の恐れがあると判断される場合は逮捕をされる可能性が高いでしょう。

3、勾留


先の逮捕によって運転者を警察署等に留めて置ける期間は、原則として48時間であり、それ以上身体拘束をする場合には、検察庁に身柄を送致し、検察官が裁判所に勾留を請求した上で、裁判所から許可を得る必要があります(刑事訴訟法204条等)。そして勾留の許可に際しては、逃亡や罪証隠滅の恐れがある等、勾留の必要性についてさらに厳格に審査されることになります。死亡事故の場合などで被害の大きさに鑑み現行犯逮捕はされたものの、必要な検査や現場の保全等が済み勾留の必要性がないという理由で、48時間以内に釈放される例も見受けられます。

一方で、例えば当事務所の取り扱い案件でも、飲酒運転で死亡事故を起こした加害者が、現場から逃走しアルコールを抜くことを試みた極めて悪質な事案で、アルコール運転等影響発覚免脱罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第4条)という罪に問われ、罪証隠滅の恐れがあるものとして長期の勾留がされていた例もあります。

4、まとめ


冒頭のとおり被害者としては大きな事故を起こした加害者が、以前と同じ生活を送っていることに疑問を持たれることは自然なことであると思います。もっとも、以上の逮捕・勾留に対する要件・運用は交通事故に限られず全ての刑事犯罪に共通するものであり、日本の刑事司法が徒に長期間逮捕・勾留をして自白を強要したり、ともすれば冤罪を招いてきたことに対する批判を受けながら運用を修正してきた経緯があります。

なお、刑事事件を起こした加害者は当然釈放されたとしても警察の捜査に協力をしなければなりませんし、行政処分により運転等が制限される可能性も十分あります。
被害者としては、このような刑事司法の実情を理解した上で、被害者参加等適切な刑事処分を求める活動を行ったり、民事損害賠償責任を追及していくことが望ましいでしょう。

(文責:弁護士 粟津 正博


※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

交通事故と労災に関する所内勉強会を実施しました

2021年03月25日

交通事故と労災


今回はテーマの一つとして、交通事故と労災について議論、検討をしました。

通勤中の交通事故

例えば、通勤中や業務中に交通事故に遭った場合、加害者や加害者の加入する任意保険会社の他に労災からも給付を受けることが可能です。

このような場合、被害者としては労災からも給付を受けることが一般的ですので(加害者の加入する保険会社と労災どちらを先行させるべきかという問題がありますが、仮に保険会社を先行させた場合であっても、特別支給金については給付を受けることが考えられます。)、交通事故事件を扱う中で労災の仕組みや請求方法についても知っておくことが求められます。

労基署の面談に同席した事例


例えば、労災の後遺障害認定手続きにおいては、労基署の担当官と被害者が面談を行うことが通常です。

労災・高次脳機能障害

今回は、この労基署の面談に弁護士が同席し、高次脳機能障害について詳細に事情を説明して適正な等級が認定された例が報告されました。

例えば高次脳機能障害などの場合は、自身の自覚している症状を適切に伝えることが困難な場合があります。

高次脳機能障害の等級認定において、被害者の自覚している症状の内容(特に具体的なエピソード)は非常に重要です。報告されたケースでは、予め弁護士が被害者の自覚している症状について書面で労基署に報告し、その上で面談に同席して丁寧かつ具体的に自覚症状等を説明したことで適切な等級が認定されました。


任意保険と労災の支給調整について


任意保険と労災から給付を受けられる場合であっても、同じ損害項目について二重に給付を受けることはできません。労災から治療費(療養の給付)が支給されれば、同じ内容で保険会社から賠償がなされることはありません。

このような原則のもと、交通事故の被害者として労災と任意保険会社どちらからの給付(賠償)を先行すべきかという判断を迫られることがあります。

例えば、被害者に一定の過失が認められる場合、労災からの給付を先行したほうが被害者にとって有利である場合がありますのでこのようなケースについて議論をしました。
また、自賠責保険の関係ですが、加害者が無保険である場合に、被害者の請求と労災給付後の国による求償請求が競合した場合において、被害者の請求権が優先すると判断された最高裁裁判例についても報告がありました。

後遺障害が重い場合、労災の所外補償給付(逸失利益)が年金として支給されます。そして、第三者損害との支給調整のため7年間の支給停止があります。この点についても、実際の事例をもとに議論をしました。

交通事故と労災の関係は複雑ですが、今回の勉強会を通じて理解を深めることができました。引き続き交通事故被害者救済のために、所内で研鑽に努めていきたいと思います。

(文責:弁護士 粟津 正博

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

私は自身の任意保険で他車運転特約に入っています。他車運転特約をつけていると他人の車を運転していて事故を起こした場合のすべての損害が賠償されますか?

2020年08月07日

私は自身の任意保険で他車運転特約に入っています。他車運転特約をつけていると他人の車を運転していて事故を起こした場合のすべての損害が賠償されますか?


いいえ、すべてではありません。他車運転特約が適用されるのは、「臨時に運転していた場合」に限られますし、自動車の車種などにも制限があります。保険会社が免責されるケースも比較的広範囲です。


交通事故 : 他車運転特約


◆他車運転特約とは


他車運転特約とは、契約自動車以外の自動車を運転していて事故を起こしたときにも保険が適用される特約です。


たとえば友人や親戚の車を借りて運転しているときに事故を起こしてしまったら、友人や親戚の保険ではなく「運転者の保険」を適用して賠償金の支払いなどの対応ができます。


他車運転特約について特に保険証券などに記載されておらず契約者が意識していないケースもありますが、多くの保険で自動付帯しています。




◆他車運転特約が適用されるのは「臨時に運転していた場合」


ただし他車運転特約は、他人の車を運転していたときのすべての交通事故に他車運転特約が適用されるわけではありません。


適用対象になるのは「臨時に運転していた場合」のみです。


継続的に車を借りっぱなしにしていて事故を起こした場合などには、特約は適用されません。




◆他車運転特約が適用される自動車の種類


他車運転特約が適用される自動車の種類も限定されています。



上記以外の自動車を運転していた場合、他車運転特約は適用されません。




◆保険会社が免責されるケース


他車運転特約では保険会社が免責される範囲も比較的広くなっています。以下のような場合、保険会社は免責されるので支払い義務を負いません。



また被保険者とその配偶者、同居の親族が所有する車には他車運転特約が適用されません。




他車運転特約は、契約者にとって有利なように思えますが実際には適用範囲が狭く、保険会社から利用を断られるケースも少なくありません。


保険適用についてお困りごとやお悩みがあれば、お気軽に弁護士までご相談下さい。


(文責:弁護士 辻 悠祐


※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

交通事故に遭ったのですが、相手保険会社から今回の事故は自損自弁にしてほしいと言われました。自損自弁とはどのようなケースでとるべき手段なのでしょうか?

2020年07月27日

交通事故に遭ったのですが、相手保険会社から今回の事故は自損自弁にしてほしいと言われました。自損自弁とはどのようなケースでとるべき手段なのでしょうか?


自損自弁とは、交通事故の当事者が双方とも保険を適用せず、自分に発生した損害を自分で負担する解決方法です。お互いの損害発生額が少額な場合や、自分に発生した損害額と保険を適用した場合の自己負担額が同程度になる場合には自損自弁にすると簡便に解決できます。


損害賠償 : 自損自弁


◆自損自弁とは


自損自弁とは、物損事故などで「自分に発生した損害は自分で負担する」解決方法です。


たとえばAさんとBさんの物損事故で、Aさんに発生した損害が12万円分、Bさんに発生した損害が15万円分とします。


この場合、Aさんは自分に発生した損害12万円を自分で負担し、Bさんは自分に発生した損害15万円を負担して持ち別れとするのが自損自弁による解決方法です。




◆自損自弁にすべきケース



自損自弁が適しているのは、以下のようなケースです。


お互いに発生した損害が少額で保険を適用するメリットが小さい

たとえば事故によって発生した損害額(車の修理費用)が、相手の分が5万円、こちらの分が3万円だったとします。


このようなケースにおいて、互いに過失割合を計算して対物賠償責任保険を適用して賠償金の払い合いをするのは煩雑です。お互いに自損自弁とすると簡便に解決できます。


保険を適用しても同程度の支払い額が発生する

保険を適用しても自分で修理費用を負担しても同程度の負担が発生するケースがあります。


たとえば相手の損害が20万円、こちらの損害が10万円で過失割合が2:8の場合、相手からは2万円を払ってもらえますが残りの8万円は自己負担となります。


このような場合、わざわざ保険会社を介して示談交渉をせず自損自弁として10万円負担しても大きく変わりません。ただし相手方が納得しない可能性はあります。




◆自損自弁にすると損になるケース


保険を適用すると明らかに得になるケースでは、自損自弁とすべきではありません。


たとえば相手の損害が10万円、こちらの損害が30万円で過失割合が8:2の場合を考えてみましょう。


保険を適用したら相手から24万円支払ってもらえるので自己負担は6万円です。自損自弁にしたら30万円丸々自己負担となるので、大きく損をします。




以上のように自損自弁とすべきかどうかは、相手からどの程度の賠償金を受けられるのかと密接に関わりのある問題です。それぞれの過失割合なども勘案して検討しなければなりません。


ご不明なときにはお気軽に弁護士までご相談下さい。


(文責:弁護士 辻 悠祐

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交通事故の場合に加害者の保険会社が免責条項によって保険金を支払わないことはあるのでしょうか?

2020年07月03日

交通事故の場合に加害者の保険会社が免責条項によって保険金を支払わないことはあるのでしょうか?


ありえます。相手が故意に事故を起こした場合、保険料が支払われる前の事故だった場合、相手が保険契約上の義務を果たしていなかった場合、被保険者やその家族が被害者となった場合などには免責される可能性があります。


交通事故 : 免責条項


◆交通事故で対人対物賠償責任保険が適用されないケース


交通事故で加害者の保険会社から被害者へ支払われるのは、対人対物賠償責任保険です。これらの保険は、以下のようなケースで適用されない可能性があります。


故意による交通事故

加害者が故意によって交通事故を発生させた場合、保険は適用されません。たとえばわざと人混みに突っ込んで人を殺そうとした場合などには保険会社から支払いを受けられない可能性があります。ただし重過失による交通事故の場合には保険が適用されます。


異常事態における交通事故

暴動や戦争、噴火、津波、高潮、洪水、台風などの天変地異、核燃料物質によって発生した損害やそういった事象による混乱が原因で交通事故が発生した場合、保険会社は免責されます。


保険料が支払われる前の交通事故

加害者が任意保険に加入しても、保険料を支払う前の事故であれば、保険の対象外となる可能性があります。契約後保険料納付前のタイミングで事故が起こってしまったら、加害者の保険会社から支払いを受けられない可能性があります。


相手が契約上の義務を果たしていなかった場合の交通事故

加害者が任意保険に加入する際、告知義務を果たしていなかった場合(虚偽を述べて保険に加入した場合)には保険が適用されない可能性があります。また契約後、加害者が車両のナンバーの変更や用途などの重要事項を報告していなかった場合にも保険が適用されない可能性があります。


試験や競技などの際に発生した事故

ロードレースなどの競技や試験、曲芸などの際に交通事故が発生した場合、基本的に保険会社は責任を負いません。


被害者が一定の人の場合の交通事故

交通事故の被害者が一定の人の場合には、保険会社は免責されます。具体的には以下のような人が被害者となるケースです。





交通事故に遭ったとき、加害者の保険が適用されなかったら被害者は加害者本人に賠償請求するしかなくなり、十分な補償を受けられなくなるおそれが高まります。


お困りの際には弁護士までご相談下さい。


(文責:弁護士 辻 悠祐


※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

あおり運転を処罰する改正法が成立しました

2020年06月12日
あおり運転を処罰する改正法

あおり運転の規制が強化されます!


あおり運転の抑止などを目的として、2つの重要な法律が改正されます。

1 道路交通法の改正


1つは、道路交通法の改正です。改正法では、他の車両の通行を妨害する目的で一定の違反行為をした者に対する罰則が創設され、あおり運転への規制が強化されました。


具体的には、他の車両等の通行を妨害する目的で、他の車両に道路上での交通の危険を生じさせるおそれのある方法で、次のような行為をした者への罰則規定が新設されます。


該当する行為は、通行区分、急ブレーキの禁止、車間距離の保持、進路変更の禁止、追い越しの方法、車両等の灯火、警音器の使用等、安全運転義務、最低速度、駐停車の禁止などに関する道交法の規定に違反する行為です。ちなみに罰則は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金と規定されています。


なお、同改正法は、2020年6月2日に成立し、近々施行される予定です。



2 自動車運転死傷行為処罰法の改正


もう1つは、自動車運転死傷行為処罰法の改正です。改正法では、通行を妨害する目的で走行車両の前方で停止したり、著しく接近するように運転する行為が危険運転行為にあたるとし、危険運転致死傷罪の対象に含めることになります。


同改正法は、2020年6月5日に成立し、近々施行される予定です。


具体的には、危険運転致死傷罪で処罰される行為類型が2つ新設されました。今まで危険運転致死傷罪に該当する行為類型は6つありましたが、今回の改正で次の2点が追加されて合計8つの類型が規定されることになります。


@車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為


A高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為


なお、本記事作成時の2020年6月9日時点では、改正法の施行日は未定ですが、法務省のホームページで改正法案の内容を確認できます。




あおり運転に対する法規制について


改正前の現行法のもとでも、あおり運転をした場合には、道路交通法違反、自動車運転死傷行為処罰法違反、にあたる可能性があります。


あおり運転といっても、急ブレーキをかけたり、過度な幅寄せをしたり、何回もクラクションを鳴らす、など、悪質行為の内容は様々ですが、事故につながりかねないあおり運転行為については、道路交通法で規制がされており、処罰規定もありますので、少し詳しくご説明しておきます。



1 道路交通法による規制


交通の安全と円滑を図るための法律として道路交通法(以下、「道交法」といいます。)があります。歩行者の通行方法や、車両の運転方法、運転者の義務などについて、細かく規定されています。


たとえば、急ブレーキをかけることは、道交法第24条で、「車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。」と規定されています。


また、同法第26条では、車間距離の保持義務について、「…直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。」と規定されています。


その他にも、あおり運転に関連する道路交通法の規定としては、無理な進路変更の禁止(26条の2)、不必要な警音器の禁止(54条2項)、安全運転義務(70条)、高速道路上における駐停車(第75条の8)などの規定があります。


このように、道交法では、具体的な場面ごとに車両の運転方法のルールが記載されており、違反内容によって罰則も定められています。たとえば、急ブレーキの禁止規定に違反した場合には、「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。」と規定されています(同法第119条1項1号の3)。



2 自動車運転死傷行為処罰法による規制


刑法とは別に、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法」(以下、「自動車運転死傷行為処罰法」といいます。)という法律があり、自動車の運転によって人を死傷させた場合の刑罰が規定されています。


まず、同法第5条に過失運転致死傷罪の規定があり、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されています。


さらに、同法第2条に危険運転致死傷罪の規定があり、第2条4号で「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」を行い、人を負傷させた場合には15年以下の懲役、人を死亡させた場合には1年以上の有期懲役に処する、と規定されています。



あおり運転を抑止するための法改正


過去には、2017年に起きた東名高速道路でのあおり運転事件の裁判で、自動車運転死傷行為処罰法の適用の可否が争いになり、ニュースで大きく報道されていました。自動車運転死傷行為処罰法第2条4号の規定だと「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する」という要件がありますので、高速道路上で車を停止させて止まっている行為(時速0キロの状態)が、この要件を満たすのかが曖昧なために裁判上で争いになりました。


このような背景があり、冒頭にご説明したとおり、自動車運転死傷行為処罰法が改正されることになりました。今回の改正で、運転車両を停止する方法でのあおり行為についても危険運転致死傷罪として罰せられることが明確になりました。



ドライブレコーダーをつけましょう!


当事務所の過去のブログでも紹介していますが、運転する自動車にはドライブレコーダーをつけることをおすすめします。


当事務所に交通事故のご相談にこられる方のなかには、事故の当事者間で事故態様の争いになっている方がいます。客観的な証拠や目撃者がいないと、事故態様の食い違いがあると、紛争が長期化する恐れがあります。



(文責:弁護士 今村 公治

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

自賠責保険認定の最新の統計結果が公表されました

2020年06月05日

先月5月15日に、「2019年度版自動車保険の概況」が、損害保険料率算出機構より発表されました。





統計資料は損害保険料率算出機構HPよりダウンロードできます。





損害保険料率算出機構とは、業務の一つとして、交通事故における自賠責保険の損害調査を行う機関です。例えば、自賠責保険に請求があった治療費や後遺障害の内容について、必要な調査・認定を行っており、重要な役割を担っています。他にも保険の参考純率及び基準料率の算出などを行っています。


実際に、自賠責保険の損害調査を行うのは、各地区の自賠責調査事務所ですので、こちらの名前の方が馴染みがあるかもしれません。なお、千葉県在住の被害者の方の案件を所管する、千葉自賠責調査事務所は、当事務所千葉事務所から歩いて10分程度のところにあります。



この損害保険料率算出機構は、自賠責保険への請求があった場合のデータを収集し、毎年統計を発表しています。交通事故の近況を知るうえで非常に参考になりますので、今回発表があった「2019年度自動車保険の概況」より、私が特に注目した統計結果をご紹介させていただきます。なお、今回公表されたデータは2018年度の実績を集計した結果になります。



1、保険金支払額が減少


自動運転の普及、厳罰化等により、交通事故件数が減少していることはよく知られているところですが、 自賠責保険からの支払保険金も、死亡、後遺障害、傷害いずれの項目でも前年に引き続き減少しているようです。3つの項目の2018年度支払保険金合計額は7643億円でしたが、これは前年度の7960億円から約4%減少しています。


一方で、2018年度に自賠責損害調査事務所で保険金請求を受け付けた件数は1,297,842件でしたが、こちらは前年度と比較して約1.1%の減少となっているようです。


単純比較は出来ませんが、調査事務所への請求件数以上に、支払保険金が減少していることを考えると、調査事務所による認定が厳しくなっている印象を受けます。



2、後遺障害の認定件数が減少


2018年度の後遺障害の認定件数は、53,409件でした。これは、2017年度の55,229件と比較して大きく減少しています(約4.3%減少)。なお、2016年度は59,642件、2015年度は62,009件でしたので、ここ数年で大幅に減少していることが分かります。


後遺障害の認定は、原則として書面審査になりますので、どうしても後遺障害診断書をはじめとする医証の記載の濃淡や有無によって認定に差が出てきてしまうことがあります。後遺障害の申請に際しては適切に医証を揃え、慎重に後遺障害申請を行う必要があると考えます。



3、施術期間および施術日数の平均は引き続き減少


2019年度の整骨院、接骨院等に通院する際の、被害者一人あたりの平均施術期間は103.6日、施術実日数は47.7日でした。


2014年度以降整骨院、接骨院に通院する際の平均施術期間、施術実日数は減少傾向にありますが、昨今の状況に鑑みると今後もこの傾向は続くかもしれません。



以上、今回発表があった「2019年度版自動車保険の概況の内容」について統計結果を一部ご紹介させていただきました。交通事故の実務において自賠責調査事務所の認定は非常に重要ですので、今後も動向に注視していきたいと思います。



(文責:弁護士 粟津 正博

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

改正民法が交通事故実務に与える影響等について所内勉強会を実施しました

2020年05月27日
令和2年5月19日に、交通事故に関する所内勉強会を実施しました。
当事務所では、交通事故チームのメンバーが中心となって、定期的に交通事故に関する制度の検討会や、取り扱い事例に関する発表を行い、交通事故に関する研鑽に努めております。
今回は、コロナウイルス感染防止のため、チャットワークライブというサービスを使ってweb会議の方法により、以下の内容について、検討・発表を行いました。

民法改正の検討


令和2年4月1日から、改正された民法が施行され、交通事故分野でも大きな影響を受けることになります。

実務上の大きなポイントは、法定利率の修正に伴う損害賠償の計算方法の変更、消滅時効制度の変更ですが、今後具体的な対応方法を弁護士間で検討し、共有しました。

特に消滅時効制度は、損害賠償権が消滅させてしまうという多大な効力があります。今回民法にとどまらず、自動車損害賠償保障法、保険法などを横断的に検討して、時効管理の方法について実践的な議論をしました。

なお、民法改正の詳細につきましては以下の交通事故ブログ記事で先日ご紹介をさせていただきあましたので、併せてご参照ください。



自営業者の逸失利益の検討


自営業者の逸失利益については、確定申告をもとに算定されることが通常です。

この時の計算方法として、減価償却費、損害保険料、地代家賃等の固定経費を割り戻せる(所得金額に加算して計算する)ことができるのかという点が実務上しばしば問題になります。

この点について、減価償却費については割り戻すことを認めた裁判例(他の項目は否定)を紹介し、再度自営業者の逸失利益の計算方法について、逸失利益という損害項目の趣旨から遡って検討しました。

自賠法16条の5に基づく質問


自賠責保険に後遺障害の申請をした場合、自賠責保険から後遺障害の認定票と共に、別紙という紙に認定の理由が記載されて送られてきます。その別紙は通常1枚程度、多くても2∼3枚で、簡素な記載にとどまっていることが多いです。被害者として、どうして当該認定の理由に至ったのか、この点はどのように判断されたのかを知りたい場合には、自賠責保険に質問をし、書面で回答を求めることができます。これは自動車損害賠償法16条の5に根拠が定められています。

今回、同質問を活用した事例(あるいはうまくいかなかった事例)について弁護士間で共有しました。例えば任意保険会社に自賠責保険の認定を争われた場合に、その裏付け資料として質問を行う方法などを検討しました。

(文責:弁護士 粟津 正博

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

【平成30年度版】千葉県の交通事故多発交差点

2020年05月20日

交通事故が多いと言われて久しい千葉県ですが、令和元年(平成31年)には、交通事故死亡者数があの愛知県を抜き、トップ(最多死亡者数)になってしまったという悲しい現状が発表されました。
この記事では、千葉県の交通事故の最新の状況と、どの交差点での事故が多いかという情報をお届けしたいと思います。



千葉県の交通事故の現状−交差点に注意!


見出しでも述べたとおり、令和元年、千葉県は交通事故死亡者数全国トップになってしまいました。



千葉県は他の都道府県に比べて、「人対車両」の死傷事故率、死亡事故率が多い傾向にあります。



人対車両の死傷事故率が高いということは、人と車が頻繁に行きかう場所=交差点での事故が多いと言えます。実際のデータを見ても、死亡事故の56.8%が交差点で発生しているとされています。





千葉県の市町村別交通事故発生状況−郊外で多し!


千葉県の市町村別での交通事故の発生状況を見ると、千葉市(死亡者数14人、以下市町村名後のカッコ内数字は死亡者数を表す)や船橋市(11人)は人口も多いため死亡交通事故が多いというのは何となくわかりますが、浦安市(3人)、柏市(6人)、市川市(5人)など人口が多いにも関わらず、死亡事故の発生は比較的少ないと言えます。


他方、旭市(6人)、香取市(4人)、八街市(5人)、四街道市(5人)、鴨川市(4人)など、人口がそれほど多くないにもかかわらず、それぞれ4〜6名の死亡者数になっており、こういった郊外での死亡事故発生件数の多さが千葉県の死亡事故件数の多さにつながっていることがわかります。



千葉の令和元年中市町村別交通事故発生状況
(※千葉県警ホームページ「令和元年(平成31年)中の交通事故発生状況」から引用)


千葉県の交通事故多発交差


千葉県においては交差点の事故が多いというのを先ほど紹介しました。では実際にどの交差点での事故が多いのか見てみましょう。日本損害保険協会から平成30年の交通事故多発交差点が発表されているので、日本損害保険協会ホームページの情報をもとにお届けします。令和元年のものは発表され次第、記事の内容をアップデートします(忘れていなければ…)。


※交差点の写真はいずれもgooglemapストリートビューのものを引用しています。


◆ワースト1


千葉西警察署入口交差点
千葉市美浜区真砂2丁目1番1号


ここは交通事故多発交差点ランキング常連でして、平成25年、平成26年、平成28年、平成29年とランキングに入っています。もうそろそろ殿堂入りをしてもおかしくないレベルです。



交差点の様子を見てみると、


千葉西警察署入口交差点


この交差点、どの方面から来ても片道3車線あり、交通量がかなり多いことがわかります。また千葉から東京方面に抜ける主要道路であるため渋滞も日常茶飯事です。加えて、



稲毛(宮野木,園生など)方面から千葉西警察署入口交差点に出る場合の様子


稲毛(宮野木、園生など)方面からこの交差点に出る場合、交差点付近に差し掛かるといきなり右左折直進の規制が登場し、これも事故が多い要因の一つと言えそうです。
「いきなり右折専用って言われても〜!」ってなります。交通量が多いのでここ右折専用だ!と気づいた時に車線変更するのが結構難しいんですよね。





◆ワースト1


千鳥町交差点
市川市千鳥町12番地


平成30年は千鳥町交差点が千葉西警察署入口交差点と並んで1位になりました。



千鳥町交差点は平成29年に続いてランクインしましたが、平成28年までは多発交差点にランクインしていなかったため、近年急に事故が増えだした交差点と言えます。



千鳥町交差点


千鳥町交差点は高速道路の高架下にあり、暗く見通しも良くないです。
また、千葉方面から東京方面に抜ける主要道路であるため、物流関係の車両がかなり多いです。そういった事情もあって、ワースト1位になっていると思われます。



千鳥町交差点を東京湾方面から行徳方面に抜けるor行徳方面から東京湾方面に抜ける場合右折信号がない様子


また、千鳥町交差点を、東京湾方面から行徳方面に抜けるor行徳方面から東京湾方面に抜ける場合、交通量が多いにもかかわらず右折信号がないため、これも事故の要因なのではと勝手に思いました。



◆ワースト3


三角町交差点
千葉市花見川区三角町35番地


三角町交差点は初のランクインです。
大きい交差点ではないものの、変形七差路交差点というわけのわからない状況になっています。その上写真を見てわかるとおり、交差点の見通しが悪いため事故が多いと思われ、この交差点で発生した事故のほとんどが出合い頭衝突となっています。



三角町交差点変形七差路交差点01


三角町交差点変形七差路交差点02


三角町交差点変形七差路交差点03


三角町交差点変形七差路交差点04


まとめ


規模の大小にかかわらず、交差点には常に危険が潜んでいます。
決して慌てることなく心にゆとりをもって運転に臨みたいものです。

(文責:弁護士 前原 彩



※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

交通事故に遭いました。弁護士は事故の様子を撮影していたと思われる防犯カメラの映像を取得する方法はあるのでしょうか?

2020年05月18日

交通事故に遭いました。弁護士は事故の様子を撮影していたと思われる防犯カメラの映像を取得する方法はあるのでしょうか?


「弁護士会照会」という方法で映像を確保する方法や、削除されそうな場合には削除を禁止する仮処分や証拠保全を申請する方法も考えられます。


交通事故 : 弁護士会照会


◆放っておくと消去される可能性がある


近年では道路上やコンビニ、駐車場などのさまざまな場所に防犯カメラが設置されているため、交通事故の状況がこうしたカメラによって撮影されている可能性も高くなっています。


ただ、交通事故の当事者が直接お店などに防犯カメラの開示を求めても、応じてくれない例が多数です。たいてい「警察などの捜査機関か裁判所からの開示命令がないと、開示できません」などと言われます。


しかも防犯カメラの映像は古いものから自動的に消去されるケースも多く、放っておくと重要な交通事故の証拠が消されてしまう危険性が高まります。




◆弁護士会照会について


では防犯カメラの映像が消去されないためにはどのように対処したら良いのでしょうか?


まず考えられるのが、弁護士に依頼して「弁護士会照会」を利用する方法です。弁護士会照会とは、弁護士が「弁護士法23条」という法律にもとづいてさまざまな事項について調査を行う手続きです。弁護士が事件の解決のために弁護士会照会を行った場合、開示請求を受けた人には原則として開示の義務が課されます。


防犯カメラの映像は交通事故の事件処理に必要ですから、弁護士会照会の対象になりえます


照会を受けたカメラの所有者や管理権者は原則として開示に応じないといけないので、防犯カメラの映像の開示を受けられる可能性があります。記録が消去される前に弁護士会照会をすれば、証拠を保全できる可能性があります。




◆仮処分について


カメラの所有者が映像の開示に応じない場合には、カメラの映像消去を禁止する仮処分を申請する方法も考えられます。仮処分とは、権利を保護するために必要な場合において、相手に一定の行為を求めたり禁止したりできる手続きです。


カメラの映像を消去されると依頼者の損害賠償請求権が侵害されるおそれがあるので、その保全のために映像の消去を禁止する仮処分の申請が認められる可能性があります。




◆証拠保全について


裁判所に「証拠保全」を申し立てることにより、直接カメラの映像を保全する手続きも利用できます。


証拠保全を利用すると、裁判官や職員が現地に行って直接カメラの映像を確認し証拠化するのでその後に消去されても失われる心配はなくなります。




交通事故でお困りのことがある場合は、お早めに弁護士までご相談下さい。


(文責:弁護士 辻 悠祐


※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

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