保険会社との交渉でのNGワード
最終更新日:2025年09月16日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q保険会社との交渉で、言わないほうがよいNGワードはどのようなものですか?
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保険会社との交渉では、感情的・不用意な発言や、事実と異なることを伝える言葉は避けるべきです。
たとえば、保険会社や担当者を強く非難する言葉(「ふざけるな」「誠意がない」など)、加害者本人に直接連絡する旨を伝える言葉、「一切連絡を取らない」といった交渉打ち切り宣言、過失がないのに自ら非を認める発言などは、交渉を不利にする恐れがあります。
また、けがや症状、治療の状況に関して事実と異なる軽い表現(「大したけがではない」「治りました」など)や、治療が必要な段階での「もう示談でよい」という発言も、補償額の減額や治療費の打ち切りにつながる可能性があります。状況説明や意思表示は、必ず事実に基づき、冷静かつ具体的に行うことが大切です。

目次

保険会社との交渉の一般的な注意点
交通事故にあった際の保険会社との交渉では、基本的な注意点を守ることが重要です。次のようなポイントを押さえると、スムーズで効果的な交渉を進めることができます。
① 事実を正確に伝える
保険会社との交渉では、事故の詳細を正確に伝えることが大切です。
誤解を招かないよう、事故発生の日時、場所、事故状況、けがの程度など、事実に基づいた内容をしっかりと伝えましょう。これにより、交渉がスムーズに進みます。
② 嘘をつかない
嘘をついて交渉を進めることは、後々問題を引き起こす原因となります。
保険会社は証拠や客観的な情報をもとに判断を行うため、嘘が発覚すると交渉に悪影響を与える可能性が高いです。誠実に対応することが重要です。
③ 感情的にならない
交渉中に感情的になりすぎると、冷静さを欠いた判断や発言をしてしまう可能性があります。
特に、自分が不利だと感じた場合や、相手に納得できないことがあったとしても、感情的にならず、事実や証拠に基づいて、冷静に話を進めることが求められます。
④ 示談書は慎重に検討して作成する
示談書を作成する前に、その内容をよく確認しましょう。
一度サインすると後から変更が難しくなるため、納得できる内容で合意することが必要です。場合によっては、弁護士に相談して法的なアドバイスをもらうことも考えましょう。
保険会社との交渉で言うべきではないNGワード
交渉を有利に進めるためには、冷静かつ建設的に話すことが大切です。感情的な発言や無駄な言い回しを避け、問題点を的確に伝えましょう。
次のような発言は、交渉を不利に進める可能性があるので、避けるべきです。
① 「(通常の対応に対して)ふざけるな!誠意がない!」
保険会社の担当者やカスタマーサービスに対して不満を伝える際は、感情的な言葉を避けることが重要です。感情的になると、こちらの意図が伝わりにくくなり、勢いで交渉に不利なことを言ってしまう可能性があります。
特に、保険会社が「クレーマー」や「対応が難しい相手」と判断すると、これまでの担当者と変わって、弁護士が出てくることもあります。そうなると、示談交渉がさらに難航する恐れがあります。
そのため、不満や問題を伝える際は冷静に、具体的に何が問題で、どのような対応を求めているのかを整理して伝えることが大切です。感情的に伝えるのではなく、建設的な方法でアプローチすることが、より効果的な交渉を進める鍵となります。
② 「(保険会社を無視して)加害者本人に直接連絡します」
加害者と直接連絡を取ることは保険会社にとって望ましくない行為です。賠償金は加害者の保険会社の判断で支払うため、加害者本人に連絡しても保険会社が支払いを認めることはありませんし、かえって賠償金の交渉が混乱する原因となります。
加害者本人に連絡することを示唆したり、実際に加害者に直接接触を試みると、「加害者に弁護士がつく」ことがほとんどです。その後「被害者に対しこれ以上支払うべき金銭がないという裁判などを加害者から起こされる」こともあります。
そのため、賠償請求に関する対応は、保険会社を通じて行いましょう。冷静に、一つ一つ丁寧に交渉を行うこと、適切な手続きを踏むことが重要です。
③ 「もう保険会社とは一切連絡を取りません」
保険会社との連絡を断つと伝えたり、意図的に連絡を無視することはやめましょう。このような対応を取ると、手続きや交渉が進まなくなり、示談金の受け取りが遅れる可能性があります。また、加害者側の保険会社の対応が一層悪化するおそれもあります。
さらに、連絡を取らないことで「損害賠償請求権の消滅時効」が迫り、十分に交渉を行う時間がなくなってしまうこともあります。消滅時効とは、損害賠償を請求できる権利が、一定期間行使されない場合に消滅してしまう制度のことです。
損害賠償請求権の消滅時効は、次のとおりです。
損害の種類 | 消滅時効 |
---|---|
事故翌日から5年 | |
症状固定日の翌日から5年 | |
死亡翌日から5年 | |
車の修理費 | 事故翌日から3年 |
④ 「(自分に過失がないのに)こちらにも非があります」
事故において、自分に過失がない場合は「こちらにも非があります」といった発言は避けるべきです。このような発言をすると、交渉で不必要に過失を認めた形になり、賠償額の減額につながりかねません。
過失割合については、事故の証拠に基づいて冷静に判断し、過失がない場合はそれを主張することが重要です。
⑤ 「(けがが重いのに)大したけがではありません」
けがの重さを軽視して「大したけがではありません」と言うことは避けましょう。けがを過小評価することで、治療が打ち切られてしまい、結果的に十分な治療が受けられなくなる可能性があります。むちうちのようからしばらくして症状が出たり、なかなか回復しないようなけがもあります。
また、損害賠償額は入通院の期間や日数によって決まるため、適切な治療が続けられなければ、けがに見合った十分な損害賠償が受けられなくなることもあります。症状の重さや治療の必要性については、医師の意見に基づいて正確に伝えることが重要です。
⑥ 「(治療すれば改善するのに)症状はもうよくなりません」
治療を続けることで改善が見込まれる場合に、自己判断で「もうよくなりません」と伝えることは避けましょう。
治療を続けても症状が改善しない場合には、症状固定と判断され、治療が打ち切られることがあります。したがって、本来であれば治療の継続によって回復が期待できる段階で、自己判断で「治療しても改善しない」と伝えてしまうと、その後は保険会社から治療費の支払いを受けられなくなるおそれがあります。
同じように「症状が悪化しています」と伝えるのも避けるべきです。治療をしていても意味がないと判断されたり、事故以外に原因があるのではないかと判断され、治療費を打ち切られる原因になります。
また、損害賠償額は治療期間や通院日数に基づいて決まります。自己判断で治療を終了させてしまうと、結果的に損害賠償額が減額されることがあります。症状の改善状況については、医師の診断に従い、安易に自己判断で治療を打ち切ることは避けましょう。
⑦ 「(治っていないのに)治りました」
けがが治っていないのに「治りました」と保険会社に伝えてはいけません。
このような発言をすると、保険会社から治療を打ち切るよう提案されることがあります。もしそれに応じてしまえば、その後に症状が再び現れた場合、自費で治療を続けざるをえないかもしれません。さらに、治療期間や通院日数を基準に算定される損害賠償額が減額され、結果として本来受けられるはずの補償を逃すことにもつながります。
症状が改善していない場合、自己判断で「治りました」と宣言するのは非常にリスクがあります。治療の継続が必要かどうかは、必ず医師の診断に基づいて見極め、適切な治療を受けることが大切です。
⑧ 「(まだ治療が必要なのに)もう示談でよいです」
治療が完了していないのに「もう示談でよいです」と保険会社に伝えることは、大きなリスクを伴います。
治療が完了していない段階で示談を急ぐと、後で治療費が足りなくなる可能性があります。
また、後遺症が残る場合に十分な補償が受けられない恐れもあるため、十分に治療が終了し、後遺障害の見込みを確認してから示談を検討することが大切です。
よくあるご質問
ここでは、保険会社との交渉や対応に関して多く寄せられるご質問を取り上げ、それぞれのポイントや注意点についてお答えします。
保険会社担当者と電話したくありません。どうすればよいですか?
もし、保険会社の担当者と電話でやり取りをしたくない場合、電話以外の方法で連絡を取ることが可能です。たとえば、担当者への連絡をメール・LINEやその他書面で行うことを検討しましょう。これにより、電話対応を避けつつ、必要な情報や返答を得ることができます。
また、弁護士に依頼すれば、その後の交渉や連絡はすべて弁護士が代理人として対応できます。これにより、保険会社の担当者と直接やり取りすることなく、スムーズに交渉を進めることができるため、電話対応を避けたい方にとっても安心です。
保険会社担当者の対応が悪いです。どうすればよいですか?
保険会社の担当者の対応に不満がある場合、まずは冷静に自分の状況を整理し、具体的にどの部分に問題があるのかを明確に伝えることが重要です。その上で、どのような対応を求めているのかを伝え、解決を図りましょう。
さらに、各保険会社には苦情受付窓口が設置されています。こちらに相談を申し込むことで、保険会社内部での対応改善を求めることができます。
また、金融庁の「金融サービス利用者相談室」や、一般社団法人日本損害保険協会が運営する「そんぽADRセンター」を通じて、苦情を申し立てることも可能です。
まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談
保険会社との交渉や対応に悩んでいる場合、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談することを強くおすすめします。特に、交渉が難航したり、保険会社の対応に不安を感じている場合には、弁護士が被害者の窓口になって代わりに交渉を行いますので非常に効果的です。弁護士に依頼することで、保険会社とのやり取りから解放され、治療や仕事に集中することができます。
よつば総合法律事務所では、交通事故に特化した専門チームが、事故直後の対応から示談交渉、後遺障害認定のサポートまで、すべての過程できめ細かな支援を行っています。
経験豊富な弁護士が、あなたのケースに最適な解決策を提案し、事故現場や病院との連携を強化することで、個別の事案に合った適切な対応を行います。
諦める前に、まずはお気軽にご相談ください。私たちは、あなたの最良の解決策を全力でサポートします。

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弁護士 粟津 正博