飲酒運転の加害者の責任 | 被害者が知るべき知識を弁護士が解説

最終更新日:2026年07月17日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
Q飲酒運転の加害者はどのような責任を負いますか?
飲酒運転の加害者は、刑罰を受ける「刑事責任」、運転免許の取消などの「行政上の責任」、被害者への「民事上の責任」という3つの責任を負います。
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飲酒運転の3つの責任

飲酒運転の加害者は、3つの責任を負います。

1つ目は、国から刑罰を受ける「刑事責任」です。飲酒運転をしたこと自体や、事故で人を死傷させたことに対して問われます。

2つ目は、運転免許の取消や停止といった「行政上の責任」です。各都道府県の公安委員会が処分を行います。

3つ目は、被害者の損害を金銭で賠償する「民事上の責任」です。被害者が賠償請求を通じて直接関わることになるのが、この民事上の責任です。

飲酒運転は社会的に悪質な行為とされているため、刑事責任や行政上の責任は重くなります。また、民事上の責任でも、慰謝料の増額や過失割合の修正が問題となることがあります。

刑事責任

刑事責任は、飲酒の程度や事故の結果によって、問われる罪が変わります。

被害者にとって重要なのは、加害者の飲酒の程度や事故態様、刑事事件で認定された事情が、その後の慰謝料の金額や過失割合に影響することがあるという点です。

刑事責任には、飲酒した状態で運転する行為そのものを処罰する罪と、人を死傷させたことを処罰する罪の2つの種類があります。前者は「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」、後者は「過失運転致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」です。

酒酔い運転

酒酔い運転とは、飲酒の影響で正常な運転ができないおそれがある状態で車を運転することをいいます。

直立できない、受け答えが不自然、ろれつが回らないといった、外見や言動から判断されます。呼気中のアルコール濃度は問われません。アルコールに弱い人であれば、少量の飲酒でも酒酔い運転と認定される可能性があります。

罰則は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、飲酒運転の中でもっとも重い罰則です。

酒気帯び運転

酒気帯び運転とは、呼気1リットルに0.15ミリグラム以上のアルコールを含んだ状態で車を運転することをいいます。

酒酔い運転のように歩行が困難なほど酔っていなくても、基準値を超えるアルコールが検出されれば成立する点が特徴です。

罰則は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪は、運転中の不注意によって人を死傷させた場合に成立する罪です。罰則は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

飲酒運転で事故を起こし、運転中の不注意によって人を死傷させた場合は、過失運転致死傷罪に問われることがあります。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、飲酒の影響で正常な運転が困難な状態で車を走らせ、人を死傷させた場合に成立する罪です。飲酒運転に関する罪の中でも重い罪となります。

罰則は、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑、人を死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑(最長20年)です。

「正常な運転が困難な状態」とは、ハンドルやブレーキの操作がうまくできない状態や、前方の状況を判断できない状態を指します。事故当時の運転の様子や事故後の言動、飲酒量などから総合的に判断されます。

なお、ここまで深刻な状態には至らないものの、飲酒の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し、その後、正常な運転が困難な状態に陥って事故を起こした場合は、いわゆる「準危険運転致死傷罪」が問題となることもあります。罰則は致傷で12年以下の拘禁刑、致死で15年以下の拘禁刑です。

行政上の責任

行政上の責任とは、運転免許の取消や停止といった処分のことです。各都道府県の公安委員会が行います。

飲酒運転の違反点数は、一般的な交通違反と比べてはるかに重く設定されています。

違反の種類 違反点数 処分の内容
酒酔い運転 35点 免許取消(欠格期間3年)
酒気帯び運転(呼気1リットルあたり0.25ミリグラム以上) 25点 免許取消(欠格期間2年)
酒気帯び運転(呼気1リットルあたり0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満) 13点 免許停止90日

「欠格期間」とは、運転免許を再び取得できない期間のことです。前歴やほかの違反の累積点数があると、これよりさらに重い処分を受けます。

人身事故を起こした場合は、これに加えて事故の結果に応じた点数が加算されます。死亡事故であれば20点、重傷事故であれば9点から13点が上乗せされるため、ほぼ確実に免許取消となります。なお、死亡事故でひき逃げを伴う場合の欠格期間は、最長10年です。

民事上の責任

民事上の責任とは、加害者が被害者に与えた損害を金銭で賠償する責任です。

被害者にとっては、治療費や慰謝料、休業損害などを適切に受け取るために、特に重要な責任といえます。

損害賠償責任

加害者は、事故によって被害者に生じた損害を賠償する義務を負います(民法709条自動車損害賠償保障法3条)。

賠償の対象になるのは、次のような損害です。

  1. 治療費
  2. 通院交通費
  3. 入通院による精神的苦痛への賠償(入通院慰謝料
  4. 仕事を休んだことによる収入減少の補償(休業損害
  5. 後遺症が残った場合の精神的苦痛への賠償(後遺障害慰謝料
  6. 後遺症が残った場合に将来得られたはずの収入の補償(逸失利益
  7. 死亡した場合の遺族への賠償(死亡慰謝料葬儀費用死亡逸失利益

これらの損害は、加害者が加入している自賠責保険や任意保険から支払われるのが一般的です。

ここで重要なのは、慰謝料の算定には3つの基準があるという点です。

基準 内容 金額の傾向
自賠責基準 自賠責保険で定められた基準 もっとも低い
任意保険基準 各保険会社が独自に設定する基準 自賠責基準と同程度かやや高い
裁判基準(弁護士基準) 裁判例の積み重ねから導かれた基準 もっとも高い

加害者側の保険会社が最初に提示してくる金額は、自賠責基準や任意保険基準で計算されたものがほとんどです。裁判基準と比べると、2倍から3倍もの差が生じることも珍しくありません。

弁護士に依頼して交渉する場合は、裁判基準をもとに、より適正な金額での賠償を求めていくことができます。

慰謝料の増額

加害者が飲酒運転をしていた場合、慰謝料の増額が認められる可能性があります。

慰謝料の増額が認められやすいのは、次のような事情がある場合です。

  1. 加害者が泥酔した状態で運転していた
  2. 加害者が常習的に飲酒運転をしていた
  3. 加害者が事故後、飲酒の事実を隠そうとした
  4. 加害者がひき逃げをした
  5. 加害者が真摯な反省の態度を示さず、責任逃れや虚偽の供述を行った

増額の幅に決まったルールはありません。事故の悪質性や被害の大きさを総合的に考慮して、個別に判断されます。たとえば、次のような裁判例があります。

  • 東京地方裁判所平成16年2月25日判決
    飲酒運転で対向車線に進入して被害者を死亡させ、救助活動を一切しなかった事案です。当時の一般的な相場である2800万円を上回る、合計3600万円の死亡慰謝料が認められました。
  • 大阪地方裁判所 平成18年2月16日判決
    無免許で飲酒運転を常習化し、信号無視で被害者を死亡させ、事故後に被害者を怒鳴りつけるなどした悪質な事案です。当時の一般的な相場である2000万円から2500万円を大きく上回る、合計3900万円の死亡慰謝料が認められました。

これらの裁判例からも、加害者の悪質性が認められれば、一般的な相場を上回る慰謝料が認められる可能性があることがわかります。

過失割合の修正

過失割合とは、事故の責任が加害者と被害者にそれぞれどの程度あるかを割合で示したものです。過失割合は、最終的に受け取れる賠償額に直接影響します。

通常の交通事故では、事故のパターンごとに基本となる過失割合があります。もっとも、実際の事故では、事故ごとにさまざまな事情があります。そのため、基本の過失割合に個別の事情を加味して、最終的な過失割合を決めます。

この個別の事情を「修正要素」といいます。修正要素がある場合、一方の過失割合が加算されたり、反対にもう一方の過失割合が減算されたりすることがあります。

加害者が飲酒運転をしていた場合、飲酒運転という事情が加害者側に不利な修正要素として扱われることがあります。具体的には、次のように加害者側の過失割合が加算される可能性があります。

  • 酒気帯び運転:「著しい過失」として、加害者側に5〜10%程度を加算
  • 酒酔い運転:「重過失」として、加害者側に10〜20%程度を加算

たとえば、本来は加害者80%:被害者20%の事故であっても、加害者が酒酔い運転をしていれば、最終的に加害者90%:被害者10%、あるいはそれ以上に修正されることがあります。

仮に、損害額が3000万円の事故で考えてみましょう。

  • 過失割合80%:20%の場合
    3000万円×80%=2400万円
  • 過失割合90%:10%の場合
    3000万円×90%=2700万円

過失割合がたった1割違うだけで、受け取れる金額が300万円も変わります。被害が大きいほど、その差は広がります。

よくあるご質問

ここでは、飲酒運転の加害者の責任について、よくいただくご質問にお答えします。

飲酒運転の場合保険は使える?

飲酒運転の場合でも、基本的には使えます。加害者が飲酒運転をしていた場合でも、被害者への賠償は、原則として自賠責保険や任意保険から支払われます。

加害者が飲酒運転をしていたからといって、保険からの賠償金を受け取れなくなる心配は基本的にありません。

一方で、加害者本人のけがや加害者側の車両損害については、保険約款上の免責事由にあたり、保険金が支払われない場合があります。

加害運転者と一緒に飲酒した人の責任は?

加害者と一緒に飲酒した人や、加害者に飲酒をすすめた人も、状況によっては責任を問われます。これは「飲酒運転周辺三罪」と呼ばれ、道路交通法65条で定められています。

代表的なのは次の3つです。

  • 車両提供罪:飲酒運転をするおそれがある人に車を貸した人
  • 酒類提供罪:飲酒運転をするおそれがある人に酒類を提供した人
  • 同乗罪:運転者が飲酒していると知りながら、その車に乗せてもらった人

罰則は、運転者の飲酒の程度によって変わります。

周辺者の行為 運転者が酒酔い運転 運転者が酒気帯び運転
車両提供 5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
酒類提供・同乗 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

被害者は、これらの周辺者に対しても、民事上の損害賠償を請求できる可能性が理論上あります。加害者本人に十分な賠償能力がないときには、重要な選択肢となります。

飲酒した事実を隠すため事故現場から逃走した場合の責任は?

加害者が飲酒の発覚を逃れるために事故現場から逃げた場合は、より重い罪に問われます。

「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」という罪で、罰則は12年以下の拘禁刑です。これは、いわゆる「逃げ得」を許さないために設けられた規定です。

また、負傷した被害者を救護せずに逃げた場合は「救護義務違反(ひき逃げ)」も別に成立し、こちらも処罰の対象となります。

被害者の立場からみると、加害者がこのような行為に及んだ場合は、慰謝料の増額が認められやすくなる傾向があります。逃走という悪質な事情により、被害者の精神的苦痛がさらに大きくなると評価されるためです。

加害者から謝罪の申し入れがあった場合どうする?

被害者は、加害者からの謝罪を受け入れる義務はありません。気持ちの整理がつかないうちは、無理に会う必要はないでしょう。

一方で、加害者が真摯に謝罪したかどうかは、刑事裁判での量刑判断に影響します。謝罪の申し入れがあった事実、被害者がそれをどう受け止めたかという事情は、加害者の刑罰の重さを決める判断材料となります。

謝罪を受け入れるかどうかは、ご自身の気持ちを優先して決めていただいて構いません。判断に迷うときは、対応する前に弁護士に相談することをおすすめします。弁護士を間に立てれば、加害者と直接やりとりせずに済みます。

示談すると加害者の刑事罰は軽くなる?

示談が成立し、被害者への賠償が行われると、加害者の刑事罰が軽くなる可能性があります。

裁判では、被害者との示談が成立しているか、被害者が加害者の処罰を望むかどうかが、量刑(刑罰の重さ)を決めるうえで重要な要素となります。示談が成立していれば、執行猶予がつきやすくなったり、刑が軽くなったりします。

加害者が飲酒した事実はどのように証明する?

加害者の飲酒は、事故直後に警察が行うアルコール検査で証明されるのが一般的です。警察は事故現場で加害者の呼気を検査し、アルコール濃度を測定します。この検査結果は、刑事裁判でも民事裁判でも有力な証拠として扱われます。

また、事故の状況、加害者の言動、目撃者の証言なども飲酒運転の証拠になります。

被害者の方が事故直後の加害者の様子をメモに残しておくと、有力な証拠になります。たとえば、顔が赤かった、ろれつが回っていなかった、アルコール臭がした、足元がふらついていたといった様子です。同乗者や目撃者の連絡先を確保しておくことも重要です。

まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談

飲酒運転の加害者は、刑事責任、行政上の責任、民事上の責任という3つの重い責任を負います。

被害者の方が受け取れる賠償金については、慰謝料の増額や過失割合の修正によって、通常の事故よりも有利になる可能性があります。しかし、これらは被害者が自ら主張しなければ反映されません。加害者側の保険会社は、進んで増額や有利な修正に応じてくれるとは限らないからです。

飲酒運転の被害に遭われた方は、加害者の責任を正しく追及することで、適正な賠償を受け取れる可能性が大きく広がります。慰謝料を裁判基準で算定し、増額事由や過失修正を主張することで、最終的な賠償金額が大きく変わるケースは少なくありません。

ご自身だけで保険会社と交渉するのは、精神的な負担も非常に大きい作業です。よつば総合法律事務所では、交通事故の被害に遭われた方からのご相談を承っています。1人で悩まず、まずは弁護士にご相談ください。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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