赤い本と青い本
最終更新日:2026年09月18日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q赤い本と青い本とは何ですか?
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赤い本と青い本は、交通事故の損害賠償額を計算するときの目安となる基準をまとめた本です。
慰謝料などの金額を決める際の参考資料として、裁判所や弁護士が広く利用しており、交通事故の実務で大きな影響力があります。ただし、いずれも法律や裁判所を拘束する基準ではなく、実際の損害額は個々の事案に応じて判断されます。
この記事では、赤い本と青い本の特徴や違いを整理したうえで、交通事故の損害賠償実務でどのように使われているのかを弁護士が解説します。慰謝料の目安額や算定表の見方も、具体的に紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

赤い本とは
赤い本は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という本の通称です。表紙が赤いことから、弁護士などの実務家のあいだで赤い本(赤本)と呼ばれています。
発行元は、日弁連交通事故相談センター東京支部です。毎年2月ごろに改訂され、新しい裁判例や交通事故実務の動向が反映されています。
赤い本には、慰謝料や休業損害、逸失利益など、交通事故による損害賠償額を算定する際の基準が掲載されています。治療費や付添費、将来介護費、車両の修理費など、交通事故で問題になりやすい損害項目も幅広く取り上げています。
金額の基準だけでなく、損害項目ごとの考え方や参考裁判例が掲載されている点も特徴です。主に東京地方裁判所の実務を踏まえた内容ですが、東京以外の裁判所や弁護士も広く参考にしています。
赤い本は上下2巻で構成されています。上巻には損害賠償額の算定基準や裁判例が掲載され、下巻には交通事故実務に関する裁判官の講演録などが収録されています。
赤い本には、裁判実務で損害額を判断する際に参考とされる基準が掲載されていることから、その基準は「裁判基準」や「弁護士基準」と呼ばれることがあります。
青い本とは
青い本は、「交通事故損害額算定基準」という本の通称です。表紙が青いことから、実務家のあいだで「青い本」(青本)と呼ばれています。
発行元は、日弁連交通事故相談センター本部です。おおむね2年に1度改訂され、全国の裁判例や実務を踏まえて内容が見直されています。
青い本にも、慰謝料、休業損害、逸失利益など、交通事故による損害賠償額を算定する際の基準が掲載されています。全国の裁判例をもとに基準を整理している点が特徴です。
青い本では「〇〇万円~〇〇万円」のように幅のある基準が示されることが多くあります。これは、地域によって裁判実務に違いがあることや、個々の事案の事情を考慮できるようにするためです。そのため、全国的な目安を確認したい場合には、青い本が参考になります。
赤い本と青い本の違い
ここまで見てきた2つの本の特徴を、表でくらべてみましょう。特に大切なのは、金額の示し方と、何をもとに作られているかの2点です。
| 比較項目 | 赤い本 | 青い本 |
|---|---|---|
| 正式名称 | 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 | 交通事故損害額算定基準 |
| 発行元 | 日弁連交通事故相談センター東京支部 | 日弁連交通事故相談センター本部 |
| 改訂の頻度 | 毎年 | おおむね2年に1度 |
| 金額の示し方 | 一定の額を示すことが多い | 幅をもたせて示すことが多い |
| もとにしているもの | 東京地方裁判所の実務に基づく算定基準と参考裁判例 | 算定基準と解説、全国の参考となる裁判例 |
| 主な利用地域 | 東京を中心に全国 | 全国 |
どちらかが正しく、どちらかが間違いというものではありません。また、基準の内容にも大きな矛盾はありません。ただ、実務でより多く使われているのは赤い本です。
目安として、青い本が示す幅の上限額の8割ほどが、赤い本の基準に近いといわれることもあります。たとえば通院6か月の慰謝料は、赤い本(別表Ⅰ)で約116万円、青い本では76万円〜139万円ほどの幅で示されています。
赤い本の活用方法
ここからは、赤い本が実際の損害額の算定にどのように使われるのかを見ていきます。特によく用いられるのは、慰謝料、休業損害、後遺障害慰謝料、逸失利益の算定です。
慰謝料
赤い本には、けがをした場合の入通院慰謝料と、亡くなった場合の死亡慰謝料の目安が載っています。まずは、入通院慰謝料について見ていきましょう。
入院通院慰謝料
入通院慰謝料は、けがの治療のために入院や通院をしたことによる精神的な苦痛に対して支払われます。傷害慰謝料と呼ぶこともあります。
赤い本には、入院と通院の期間に応じた慰謝料の表があります。この表に期間を当てはめると、慰謝料の目安額がわかります。
慰謝料の表は2種類あります。骨折などのけがでは「別表Ⅰ」を、むちうちで他覚所見がない場合や、軽度の打撲・挫創などでは「別表Ⅱ」を使います。他覚所見とは、画像検査や医師の診察などによって客観的に確認できる異常のことです。
たとえば、骨折などのけがで6か月通院したときは、約116万円が目安です。むちうちで他覚所見がないときには別表Ⅱを使うため、同じ6か月通院したとしても、目安は約89万円になります。
ただし、これらはあくまで目安です。実際の慰謝料額は、けがの内容や通院の頻度、事故の状況などにより変わります。
死亡慰謝料
次に、死亡慰謝料について見ていきます。赤い本では、亡くなった方の家庭内での立場に応じて、次の目安が示されています。
| 亡くなった方の立場 | 慰謝料の目安額 |
|---|---|
| 一家の支柱(家計を支えていた方) | 2800万円 |
| 母親・配偶者 | 2500万円 |
| その他(独身の方や子どもなど) | 2000万円~2500万円 |
この金額は、亡くなった本人の慰謝料と家族の慰謝料をあわせた目安です。事故の悪質性などの事情により、増減することがあります。
休業損害
休業損害は、事故が原因のけがで仕事を休み、収入が減ったことによる損害のことをいいます。この損害も、加害者側に賠償を請求できます。
休業損害の計算方法は、事故前の収入をもとに1日あたりの金額を出し、休業した日数をかけるのが基本です。赤い本には、その考え方や裁判例が整理されています。
会社員だけでなく、自営業の方にも休業損害が認められます。主婦や主夫など、家族のために家事を担っている方でも、事故によって家事に支障が生じた場合は休業損害が認められることがあります。
主婦や主夫の1日あたりの金額は、女性労働者の平均賃金(賃金センサス)をもとに計算するのが一般的です。その平均賃金の資料も、赤い本に載っています。
いくら認められるかは、収入の資料や休業の必要性により変わります。判断に迷うときは、資料を集める段階から弁護士に相談すると安心です。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、症状固定後も事故による症状が残り、その症状が後遺障害として認められる場合に請求できる慰謝料です。
実務では、自賠責保険の後遺障害等級認定が重要な判断資料となります。ただし、自賠責保険で非該当となった場合や等級認定を受けていない場合でも、裁判所が証拠に基づいて後遺障害の有無や程度を判断することがあります。
赤い本には、1級から14級までの等級ごとに基準額が載っています。たとえば、最も軽い14級で110万円、最も重い1級で2800万円が目安です。
逸失利益
逸失利益(いっしつりえき)は、事故がなければ将来得られるはずだったのに、事故にあったために得られなくなってしまった収入のことです。言い換えると、事故で失われた「将来稼ぐ力」をお金に換算したものです。
逸失利益には2つの種類があります。後遺障害で以前のように働けなくなったときの「後遺障害の逸失利益」と、亡くなったときの「死亡逸失利益」です。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益は、次の式で計算するのが一般的です。
赤い本には、労働能力喪失率やライプニッツ係数、賃金センサスなど、逸失利益の計算に用いる基準や統計資料が掲載されています。
基礎収入は、原則として事故前の実際の収入です。主婦や学生など収入の資料がない方は、赤い本に載っている平均賃金(賃金センサス)を使うことがあります。
労働能力喪失率は、働く力がどれくらい失われたかを示す割合です。赤い本にある等級ごとの目安をもとに、職業や年齢もふまえて決まります。
ライプニッツ係数は、将来の収入をまとめて先に受け取るため、その利息分をあらかじめ差し引くための数字です。この係数の表も、赤い本に載っています。
死亡逸失利益
死亡逸失利益も、考え方は同じです。ただし、本人が生きていれば使うはずだった生活費の分を、基礎収入から差し引いて計算します。
死亡逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
このように、逸失利益の計算は赤い本の資料を引きながら進めるのが実務の基本です。
もっとも、実際の金額は職業、年齢、症状の内容で大きく変わります。争いになりやすい項目なので、計算に不安があるときは弁護士に確認してください。
よくある質問
最後に、赤い本と青い本について、よくいただくご質問にお答えします。
赤い本や青い本はどうすれば入手できる?
赤い本は日弁連交通事故相談センター東京支部、青い本は同センター本部の窓口で購入するか、所定の申込書をFAXして注文できます。一般の書店では販売されていません。
ただし、どちらも専門家向けの本です。自分の事故にどう当てはめるかの判断は簡単ではないため、迷ったときは弁護士に相談するほうが早く正確です。
赤本基準、弁護士基準、裁判基準は同じもの?
赤本基準は、一般に「弁護士基準」や「裁判基準」と呼ばれる基準の代表的なものです。
ただし、厳密には、弁護士基準や裁判基準が赤い本だけを指すわけではありません。青い本や地域ごとの算定資料、個別の裁判例なども参考にされます。
自賠責基準と赤い本の基準の違いは?
自賠責基準は、自賠責保険から保険金を支払う際に用いられる基準です。
自賠責基準は、被害者に最低限の対人賠償を確保することを目的としているため、赤い本の基準より賠償額が低くなることが一般的です。
任意保険基準と赤い本の基準の違いは?
任意保険基準は、各保険会社が社内で独自に決めている基準で、内容は公開されていません。一般的には自賠責基準と同じか少し高い程度のことが多く、赤い本の基準より低い傾向があります。
保険会社の提示額が赤い本の基準を下回るときは、増額交渉ができる可能性があります。示談する前に、提示額の根拠と赤い本の基準との差を確認することが大切です。
裁判をすれば必ず赤い本の基準になる?
裁判をすれば、必ず赤い本の基準どおりの金額が認められるわけではありません。赤い本は、裁判所が必ず従わなければならない基準ではなく、損害額を判断する際の参考資料だからです。
実務では赤い本の基準を参考にした判断が多いものの、けがの内容や治療状況、過失割合、持病の影響など、個別の事情によって金額が増減することがあります。
自分で交渉しても赤い本の基準での解決はできる?
自分で交渉しても赤い本の基準で解決できる可能性はありますが、簡単ではありません。保険会社は、被害者本人との交渉では、自社の任意保険基準で金額を提示することが多いためです。
一方、弁護士が交渉すると、裁判になった場合を見すえた話し合いになるため、赤い本の基準に近い金額で解決できる可能性が高まります。
緑本(緑のしおり)とは?
緑本は、「交通事故損害賠償額算定のしおり」という、大阪の交通事故実務で使われている損害額の算定基準をまとめた冊子です。大阪弁護士会交通事故委員会が発行しており、表紙の色から「緑本」や「緑のしおり」と呼ばれています。
大阪地方裁判所の実務の考え方を反映している点が特徴です。基本的な考え方は赤い本と大きく変わりませんが、慰謝料の示し方など、細かな点に違いがあります。
大阪を中心とする地域で交通事故の損害額を検討するときに、参考にされる資料です。
黄色い本とは?
名古屋を中心とする地域で使われている、交通事故の損害額の算定基準をまとめた本です。日弁連交通事故相談センター愛知県支部が発行している「交通事故損害賠償額算定基準」のことで、表紙の色から「黄色い本」や「黄本」と呼ばれています。
名古屋地方裁判所の裁判例や地域の実務を反映した資料として、愛知県を中心に参照されています。
まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談
赤い本と青い本は、交通事故の損害賠償額を検討する際に、裁判所や弁護士が参考にする代表的な資料です。慰謝料や休業損害、逸失利益などの目安を知るうえで役立ちます。
もっとも、掲載されている基準を自分の事故に当てはめれば、適正な賠償額がすぐにわかるわけではありません。けがの内容や治療状況、後遺障害、収入、過失割合などによって、請求できる金額は変わります。
保険会社から提示された金額が妥当かわからないときは、示談を成立させる前に弁護士へ相談しましょう。
よつば総合法律事務所では、交通事故のご相談を数多くお受けしています。保険会社の提示額に疑問がある方や、赤い本の基準でどの程度の賠償額が見込めるか知りたい方は、お気軽にご相談ください。

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博













