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高次脳機能障害についてのよくある質問にお答えします

2022年10月26日

文責:弁護士 大澤一郎
最終更新日:2022年10月26日


Q. 警察の対応に納得がいかないのですがどうすればよいですか?


【弁護士からの回答】
供述調書・実況見分調書を作成するにあたり正しく事実を伝えましょう。
また、加害者の処罰内容に納得がいかない場合には検察審査会への申立なども検討しましょう。



高次脳機能障害と警察の証拠の重要性


高次脳機能障害の症状が残るような重篤な交通事故の被害にあった場合、警察への対応は極めて重要です。
高次脳機能障害の場合、事故状況を被害者自身が記憶していないことも多く、過失割合で加害者ともめやすいからです。

特に、供述調書の作成と実況見分調書の作成にあたっては注意が必要です。

供述調書について


供述調書とは、警察官や検察官が作成する、被害者やその他の関係者が話している内容をまとめた書類です。
警察官・検察官がまとめた書類は刑事裁判で利用されることはもちろんですが、加害者が刑事処分を受けたような事案では、民事事件の証拠として利用されることもあります。
一度作成された供述調書の内容を変更することは極めて困難ですので、供述調書の作成にあたっては細心の注意が必要です。

実況見分調書について


実況見分調書とは、警察官が現場の状況をまとめた書類です。現場の図面や状況が記され、写真が添付されていることもあります。

実況見分調書は刑事裁判で利用されることはもちろんですが、民事事件の証拠としても利用されます。
そして、実況見分調書は過失割合を決めるにあたっては一番重要な証拠となりますので、事実関係を正しく警察官に伝えることが重要です。

加害者の処罰について


高次脳機能障害のような重大な後遺症が残った場合、加害者は相当の処罰を受けることとなります。しかしながら、加害者が処罰を受けずに不起訴となってしまう場合もあります。
このような場合には、上級の検察庁への不服申立や検察審査会への不服申立というような方法があります。

警察官の対応が悪い場合


担当の警察官個人の資質に問題がある場合もあるかもしれません。
そのような場合であっても担当の警察官個人と喧嘩をすることはやめましょう。本来であれば、担当の警察官・検察官と被害者は共に加害者と闘う「味方」であるはずです。警察官ともめているということは「内輪もめ」をしているようなものです。

時間がかかりすぎる場合


高次脳機能障害の場合、症状固定まで1〜2年かかることも多いです。治療状況や改善の状況も踏まえた上で加害者の処分が決まりますのである程度時間がかかることはやむを得ないと思います。

ただし、あまりにも時間がかかりすぎているような場合には警察や検察に現在の進捗状況を問い合わせしてみましょう。

Q. 高次脳機能障害の症状に気付くにはどのようにすればよいですか。


【弁護士からの回答】
典型的な特徴がありますのでその兆候が発生しているかどうかをよく観察しましょう。



注意障害


注意障害では以下のような特徴があることがあります。
  • 椅子や車椅子で寝ていることが多い。
  • 車椅子で病棟内を歩き回り、他の部屋に入っていく。
  • 他人に興味を持ち、くっついて離れない。
  • 隣の人の作業にちょっかいを出す。
  • 周囲の状況を判断せずに行動を起こそうとする。
  • エレベーターのドアが開くと乗り込んでしまう。
  • 作業が長く続けられない。
  • 人の話を自分のことと受け取って反応する。

記憶障害


記憶障害では以下のような特徴があることがあります。
  • 約束を守れない。
  • 約束を忘れてしまう。
  • 大切なものをどこにしまったかわからなくなる。
  • 他人が盗ったと言う。
  • 作り話をする。
  • 何度も同じことを繰り返して質問する。
  • 新しいことを覚えられなくなる。

遂行機能障害


遂行機能障害では以下のような特徴があることがあります。
  • 約束の時間に間に合わない。
  • 仕事が約束通りに仕上がらない。
  • どの仕事も途中で投げ出してしまう。
  • 記憶障害を補うための手帳を見るとでたらめの場所に書いてしまう。
  • これまでと異なる依頼をするとできなくなってしまう。

コミュニケーション障害


コミュニケーション障害では以下のような特徴があることがあります。
  • 話にまとまりがない。
  • 話が脱線しがちである。
  • その場に不適切な多弁であったり、雰囲気にそぐわない会話をする。
  • テンポの速い話が理解できない。
  • 冗談やいやみ、比喩を理解できない。

病識欠落


病識欠落では以下のような特徴があることがあります。
  • 困っていることは何もないと主張する。
  • うまくいかないのは相手のせいだと考えている。
  • 自分にはどのようなこともできると確信している。

社会的行動障害


社会的行動障害では以下のような特徴があることがあります。
  • 興奮する。
  • 大声を出す。
  • 暴力を振るう。
  • 思い通りにならないと決まって大声を出す。
  • 他人につきまとって迷惑な行為をする。
  • 訓練士に付き合えと強要する。
  • 不潔行為やだらしない行為をする。
  • 自傷行為をする。
  • 自分が中心でないと満足しない。

*なお、「社会的行動障害」には、依存性・退行、欲求コントロール低下、感情コントロール低下、対人技能拙劣、固執性、意欲・発動性の低下、抑うつ、感情失禁、引きこもり、脱抑制、被害妄想、徘徊などが含まれています。

Q. 高次脳機能障害で将来介護費の請求は認められますか。


【弁護士からの回答】
1級、2級の事案では通常認められることが多いです。3級以下の事案でも将来介護費が認められることはあります。



将来介護費とは


将来介護費とは、症状固定後に発生する将来の介護費のことです。後遺障害が重度の事案の場合、将来介護費の請求が争点となることがあります。

将来介護費の請求は金額が大きな金額となることが多く、特に若年の被害者の場合には金額が大きくなりますので、将来介護費の請求は大きな争点となることがあります。

後遺障害等級3級の場合


後遺障害等級3級以下であったとしても、介護が必要な被害状況であれば、将来介護費の請求が認められることがあります。
(1)日常生活において他者の監視が必要な場合、(2)排尿排便・食事・衣服着脱・入浴といった日常生活上の支障が認められる場合には、介護費用が認められる可能性があります。

介護保険の適用を受けている状況であれば介護保険の状況、具体的な介護の必要性、現在の介護の状況等を医学的な証拠やご家族・ご本人の陳述書などで丁寧に裏付けしていくことが必要です。

後遺障害等級5級以下の場合


後遺障害等級5級以下であったとしても、100%将来介護費用が認められないというわけではありません。しかしながら、事案としては後遺障害等級5級以下の場合に将来介護費用が認められる事案は少ないと言えるでしょう。

後遺障害慰謝料において考慮


仮に、将来介護費が認められなかったとしても、事実として現時点で介護が必要な場合や将来介護が必要となる場合があります。そのような場合には、「将来介護費」という項目では認められなかったとしても、後遺障害慰謝料の増額事由として請求をする方法もあります。

将来介護費を否定した裁判例の中にも、将来介護費の請求は認められないが後遺障害慰謝料を決めるにあたって考慮している裁判例もあります。

将来介護費のまとめ


現時点において介護を必要としている状況であれば、積極的に将来介護費の請求をしていくことが必要です。

Q. 高次脳機能障害の場合紛争処理センターを利用するメリットは何ですか。


【弁護士からの回答】
早期解決のメリットや、自賠責で認定された等級を前提とした解決ができる等のメリットがあります。


交通事故紛争処理センターでの相談

交通事故の解決方法


交通事故の損害賠償請求の解決方法には、示談交渉、紛争処理センターでの解決、裁判での解決の3種類の解決方法が一般的にはあります。(民事調停という方法もありますが今回は除外します。)

交通事故紛争処理センターでの解決


交通事故紛争処理センターは、裁判での解決と示談交渉での解決の中間的な解決方法です。事案によりますが、申立後数か月であっせん案が出ることが多く、あっせん案は基本的には裁判所での基準とほぼ同じ基準となっています。そのため、裁判であれば高次脳機能障害の案件の場合1〜2年かかってしまうことも多いですが、紛争処理センターでの合意であれば、半年以内に解決することも多いです。

保険会社への拘束力


紛争処理センターでの最終的な裁定は保険会社に対する拘束力がある一方、被害者側は紛争処理センターでの裁定を不服として裁判申立をすることができますので、その点でも被害者にとってメリットがあります。

自賠責の等級を前提とした解決


必ず自賠責の等級を前提とした解決になるとは限りませんが、経験上、紛争処理センターでは簡易・迅速にあっせん案という出すという観点から、自賠責の等級を前提としたあっせん案が出ることが多いです。そのため、既に認定されている自賠責の等級を前提として早期に解決をしたいというような場合には紛争処理センターでの解決がよい場合があります。

裁判との違い


  • 裁判では年5%の遅延損害金(金利)も請求できますが、紛争処理センターでは請求はできません。
  • 裁判では10%程度の弁護士費用も請求できますが、紛争処理センターでは請求はできません。

重度後遺障害案件の場合


重度後遺障害案件の場合、あっせん・裁定に相当の時間がかかるため、結果的には裁判とあまり変わらない位の時間がかかってしまう可能性があります。

その他


  • 紛争処理センターへの申立は時効を止める効果はありませんので、時効中断をしたい場合には別途時効中断のための承認書をもらうなどの措置をとる必要があります。
  • 事故態様や後遺障害認定自体に大幅な争いがある事案の場合には、紛争処理センターでの解決が難しいこともあります。そのような場合には最初から裁判を起こした方が結果的には良い解決になることもあります。


Q. 高次脳機能障害の具体的な症状にはどのような症状がありますか。


【弁護士からの回答】
失語・失行・失認のほか、記憶障害、注意障害、病識欠如、社会的行動障害などがあると言われています。




高次脳機能障害の具体的な症状


高次脳機能障害の場合、失語・失行・失認のほか、記憶障害、注意障害、病識欠如、社会的行動障害などがあると言われています。
高次脳機能障害では様々な症状が出ることが多いため、具体的な症状としてどのような症状があるのかを適切に把握した上で、治療・後遺障害申請・賠償交渉を行っていくことが重要です。

失語

読む、書く、話す、聞くなどの障害です。

失行

指示された運動を誤って行ったり、渡された物品を誤って用いるなどの障害です。

失認

対象物を認知することができない障害です。

記憶障害

物の置き場所を忘れたり、新しい出来事を覚えていられなくなる障害です。過去のことを忘れてしまうこともあります。

注意障害

ぼんやりしていて、何かをするとミスばかりする障害です。また、2つのことを同時にしようとすると混乱する障害です。

遂行機能障害

自分で計画を立ててものごとを実行することができない障害です。また、人に指示してもらわないと何もできない障害です。いきあたりばったりの行動をする障害もあります。

病識欠如

自分が障害を持っていることに対する認識がうまくできない障害です。また、障害がないかのようにふるまったり言ったりする障害です。

社会的行動障害

以下のような障害です。

例) すぐ他人を頼る。無制限に食べたりお金を使ったりする。子供っぽくなる。すぐ怒ったり笑ったりする。相手の立場や気持ちを思いやることができず良い人間関係が築けない。1つのことにこだわって他のことができない。意欲の低下、抑うつ。感情を爆発させる。

その他

上記の具体的な症状は、行政で定められた高次脳障害診断基準に示された具体的な症状及びその分類です。労災の場合には、仕事という観点から@意思疎通能力、A問題解決能力、B作業負荷に対する持続力・持久力、C社会行動能力という観点から後遺障害の判断を行います。

なお、自賠責保険では、労災保険の等級認定方法に準じることとされています。

高次脳機能障害に関する定義の違い


労災(又は自賠責保険)では、高次脳機能障害を@意思疎通能力、A問題解決能力、B作業負荷に対する持続力・持久力、C社会行動能力という観点から判断しています。

労災保険の場合や交通事故の自賠責保険の場合には、労働能力喪失率が何パーセントであるかという点が補償額を決めるにあたって重要な要素となってきます。
そのため、高次脳機能障害によって障害が出る能力を仕事という観点から分類し、「仕事にどのくらい影響があるか」という点を重視した判断枠組みがとられています。

Q. 社会復帰のために誰に相談すればよいでしょうか。


【弁護士からの回答】
病院(地域支援拠点機関)に所属する支援コーディネーターや弁護士に相談することがよいでしょう。
特に、後遺障害等級認定及び加害者側保険会社との交渉は必ず弁護士に相談してください。




地域支援拠点機関(病院)の役割について


地域支援拠点機関(病院)の役割は以下の通りとされています。
  • 地域の高次脳機能障害者本人、家族、市町村などから寄せられる医療・福祉・職業の各分野における総合的かつ専門的な相談支援
  • 高次脳機能障害の支援対象者の社会復帰支援のための支援計画の策定及び継続的調整
  • リハビリテーション医療機関、就業などの社会参加支援機関及び地域福祉・施設福祉サービス機関に対する情報提供、助言、専門的技術支援と協働での支援活動

支援コーディネーターについて


地域支援拠点機関(病院)には支援コーディネーターがいます。支援コーディネーターの役割は以下の役割とされています。
  • 地域支援拠点機関における支援の中心的な調整を行う。
  • 地域支援拠点機関の業務が円滑に行われるように事務を処理する。
  • 家族や病院などから寄せられた支援要請に対して支援の必要性を検討する。
  • 支援対象者に対して総合的な情報提供や助言を行う。
  • 支援対象者に対して、各支援団体における支援ニーズをとらえ、支援計画が適切に実施されるための調整活動を行う。
  • 地域支援拠点や関係機関の機能を活用し、支援計画の作成と支援のマネジメントを行う。

支援の種類について


就業支援、就学支援、授産施設支援、小規模作業所等支援、就業・就学準備支援、在宅支援、施設生活訓練支援、施設生活援助などの支援内容があります。現在の症状の程度や年齢に応じた支援がされることとされています。

交通事故の後遺障害認定


社会復帰のためにはお金が必要ですし、また、今後の治療・リハビリのためにもお金が必要です。高次脳機能障害の場合には後遺障害認定がとても重要になってきますので、後遺障害認定に関しては詳しい弁護士に相談してください。具体的には後遺障害診断書の作成を医師に依頼する前には相談した方がよいでしょう。

その他


  • 地元の患者団体などでは地元の様々な情報に精通していることもありますので相談してみることもよいでしょう。
  • 通院していた病院のソーシャルワーカーは比較的気軽に相談できる窓口です。様々な社会復帰のためにはソーシャルワーカーに相談してみるのも1つの方法でしょう。


Q. 病院選びはどのようにしたらよいですか。


【弁護士からの回答】
救急車等で運ばれた病院の判断をまずは尊重しましょう。地元の交通事故に詳しい弁護士であれば、高次脳機能障害に適した病院が推薦可能です。




高次脳機能障害と事故直後の病院


交通事故で頭部の外傷を負った場合、救急車やドクターヘリで病院に緊急搬送となることが多いかと思います。その上で脳神経外科などで初動の治療を行うことになります。

当初の病院については緊急の状況ですので、症状に応じた緊急の受け入れ態勢ができるだけ整っている病院にいくことになるかと思います。

リハビリについて


緊急の治療が終わった段階で、次はリハビリを行っていくこととなります。
リハビリを行う病院を検討するに際しては以下の2つの点を重視する必要があります。

治療に適した病院かどうか


当然のことですが、高次脳機能障害の被害者の皆様にとって一番大切なことはできるだけ治療を行い症状を改善させることです。治療実績がある病院かどうかということがまずは大切になってきます。

後遺障害認定に協力的かどうか


高次脳機能障害の場合、完治するということもありますが、残念ながら一定の後遺障害が残ってしまうこともあります。

後遺障害が残ってしまう場合には、医師に各種検査の依頼や後遺障害診断書の作成を依頼するのですが、医師によって後遺障害認定に対する考え方はまちまちです。できるだけ正確かつ被害者に寄り添った形での後遺障害認定に協力していただける医師の元でリハビリを行う必要があります。

交通事故に詳しい弁護士は医療機関の情報を把握している


交通事故に詳しい弁護士は、事務所所在地周辺の医療機関の情報を把握しています。過去に同じような事案で協力をお願いした経験があるからです。
特に、高次脳機能障害の場合、リハビリを行える病院は限られていますので、交通事故に詳しい弁護士は地域の脳神経外科、神経内科の情報を把握しています。

弁護士に相談した上で、一番適切な病院を推薦してもらうというような方法もよい方法です。

転院は慎重にしましょう


時折、医師との相性が悪いということで転院を希望する方がいます。
しかし、転院の判断は慎重にした方がよいです。特に、「後遺障害認定に協力してくれない」という理由での転院は慎重にしましょう。仮に、転院後の病院で後遺障害申請に関しての協力が得られたとしても、後遺障害認定を行う自賠責調査事務所では転院前の病院の情報も調査をします。
そのため、転院前の医師の意見を無視して後遺障害認定がなされるということはないのです。

したがって、転院についての判断は弁護士などの専門家にも相談しつつ特に慎重に行った方がよいでしょう。

Q. 高次脳機能障害で将来介護費の金額はいくら認められますか。


【弁護士からの回答】
事案によります。
(1)自宅介護なのか施設介護なのかという点
(2)自宅介護の場合には親族介護なのか職業看護なのかという点
がポイントとなります。




高次脳機能障害と介護の必要性


高次脳機能障害の場合、様々な症状が出現します。
具体的には、失語・失行・失認のほか、記憶障害、注意障害、病識欠如、社会的行動障害などがあると言われています。

高次脳機能障害では様々な症状が出ることが多いため、具体的な症状としてどのような症状があるのかを適切に把握の上、将来の介護体制を構築していく必要があります。

施設介護の場合


施設による介護の場合には、施設の金額を元に将来介護費を算定します。ただし、施設での介護は永遠に続くものとは限りませんので、将来長期間にわたって施設の介護となるのか、それとも、自宅介護への切り替えを予定しているのかを慎重に検討する必要があります。

自宅介護の場合


自宅での介護の場合には、自宅での介護にかかる金額を元に将来介護費を算定します。職業的介護者の利用を前提とする場合には職業的介護者にかかる費用を前提に計算をします。他方、家族による介護を前提とする場合には1日当たり8,000円前後を基準として計算をすることが多いです。

職業介護、親族介護のどちらとなるかについて


職業介護と親族介護のどちらを行うことになるかは被害者の病状や介護の必要性によって異なってきます。医学的な証拠、医師の意見、実際の介護状況を裏付ける証拠などを準備した上で介護が必要であるという事実関係を丁寧に証明していきましょう。

職業介護と親族介護の折衷


現在は親族介護が行われていたとしても介護者が高齢化することにより職業介護が必要になるというような事案もあります。また、日あるいは時間帯によって職業介護と親族介護を併用するというような事案もあります。

その他


  • 将来付添費が認められる期間は原則として平均余命までの期間です。中間利息を控除して計算します。
  • 常時介護を必要としない場合には、介護の必要性の程度、内容により将来付添費の額が減額されることがあります。
  • 将来介護費としての請求は認められない場合であっても、介護が必要という点が慰謝料の増額事由として考慮されることがあります。
  • 1級、2級の高次脳機能障害のみではなく、3級以下の高次脳機能障害であっても事案によっては将来介護費の請求が認められることがありますので丁寧な検討が必要です。


Q. 高次脳機能障害の案件を裁判で解決するメリットは何ですか。


【弁護士からの回答】
賠償額が裁判所が認定する額になりますので、額が増える可能性があります。(他方、等級自体が争われて額が減る可能性もあります。)




高次脳機能障害の事案の解決方法


高次脳機能障害の事案を最終的に解決する方法としては、一般的には、示談交渉、紛争処理センターへの申立、裁判提起の3種類があります。そして、裁判の場合、最終的には裁判官が強制的に判断を下すという最終的な手続きです。

高次脳機能障害で裁判をした場合にかかる時間について


高次脳機能障害の事案は複雑な事案であることが多いので、裁判提起から解決までに1〜2年の時間がかかることが多いです。裁判の途中で裁判官が和解案を示しますので、和解により裁判が解決する場合には1年よりも早く解決するときもあります。しかしながら、判決という場合には1〜2年の時間はかかると思っておいた方がよいでしょう。

裁判資料について


裁判の場合、過去の病院のカルテ全てを元にした検討がなされることが多いです。また、事故状況についても事案によりますが刑事記録全てを元にした検討がなされることが多いです。そのため、全ての資料を元にした詳細な判断がなされることになります。保険会社から医師の意見書が提出されたりすることもありますし、被害者側から主治医の先生に意見を依頼することもあります。

賠償金額について


裁判の判決の場合、賠償金額は裁判基準と呼ばれる一番高額の基準での解決となることが多いです。また、事故日から年5%の遅延損害金がついたり、約10%前後の弁護士費用相当額が損害として認められることもあります。他方、後遺障害等級自体が争われた結果、当初の等級よりも低い等級が認定されてしまい大幅に賠償額が減ってしまうこともあります。

裁判をするかどうかの判断は慎重な考慮が必要です!


裁判をするかどうかの判断は、過去の資料を元にした慎重な判断が必要です。賠償額が増える可能性もありますが、他方、賠償額が大幅に減る可能性もあるからです。特に、高次脳機能障害は、等級認定が総合評価であるために、裁判で別の認定がされる可能性が特に高い傷病名です。裁判をするかどうかの判断は慎重にしましょう。

その他


  • 裁判は1ヶ月〜2ヶ月に1回ずつ行われていきます。
  • 地方裁判所での判決に対して、保険会社側が不服申立(控訴)をする確率は低いですが、控訴をする可能性もあります。その場合、高等裁判所、最高裁判所での審理となる可能性もあります。
  • 高次脳機能障害の裁判は専門性の高い裁判ですので必ず取扱い実績が多い法律事務所に相談しましょう。弁護士の能力により結果が変わりやすい類型の裁判です。


Q. 自賠責保険における高次脳機能障害審査の対象となる事案にはどのような事案がありますか。


【弁護士からの回答】
以下のような事案が審査の対象となります。




自賠責保険における高次脳機能障害審査の対象となる事案について


以下のA又はBに該当する場合には、高次脳機能障害審査の対象とすることとなっています。

A 後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる(診療医が高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断を行っている場合)
→上記の場合には、他の要件を満たしているかどうかを問わず、高次脳機能障害の審査の対象とすることとされています。

B 後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められない(診療医が高次脳機能障害又は脳の器質的損傷の診断を行っていない場合)
→上記の場合には、@〜Dの条件のいずれかに該当する場合には高次脳機能障害の審査を行うこととされています。
@初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷等の診断がなされている症例
→病名に着目した基準となります。その他、急性硬膜外血腫、前頭骨陥没骨折、外傷性てんかん、対側損傷、外傷性くも膜下出血、外傷性脳室内出血、急性硬膜下血腫、慢性硬膜下血腫、頭蓋底骨折などの傷病名も対象となると考えられます。

A初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、認知・行動・情緒障害を示唆する具体的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経系統の障害が認められる症例
→実際の症状に着目した基準となります。被害者ご本人様の考え方、行動、感情などに事故前と変化が生じている場合や、麻痺などの神経を原因とした症状がでている場合などが対象となります。

B経過の診断書において、初診時の頭部画像所見として頭蓋内病変が記述されている症例
→MRI、CTの画像所見に特に着目した基準となります。脳波、PET、SPECT、MRS、テンソル画像などもありますが、自賠責保険では、頭部外傷の場合、MRIとCTを重視しています。

C初診時に頭部外傷の診断があり、初診病院の経過の診断書において、当初の意識障害が少なくとも6時間以上、または、健忘あるいは軽度意識障害が少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例。
なお、意識障害とは半昏睡〜昏睡で開眼・応答しない状態(JCSが3〜2桁、GCSが12点以下)であり、軽度意識障害とはJCSが1桁、GCSが13〜14点)とする。
→受傷直後の意識障害に着目した基準となります。GCSとはグラスゴーコーマスケールの略称、JCSはジャパンコーマスケールの略称で頭部外傷の際の意識の評価方法としてよく用いられる基準です。

Dその他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例
→上記以外でも高次脳機能障害が疑われる症例はありますので、そのような症例が対象となります。

(平成23年3月4日付「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(報告書) 自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会参照)

注 上記は自賠責保険において調査を開始すべき事案としての条件です。上記の条件を満たしたとしても必ずしも高次脳機能障害として後遺障害認定がされるわけではありませんのでご注意ください。

Q. 高次脳機能障害の治療に健康保険を利用した方がよいですか?


【弁護士からの回答】
健康保険を利用した方が良い場合もあります。
過失割合や病院の対応にもよりますので慎重に検討しましょう。




健康保険の利用について


交通事故で頭部の怪我により入院したような場合、保険会社から「健康保険を利用してくれませんか」という打診があるときがあります。

交通事故の被害者という立場での健康保険の利用には納得できないという怒りはごもっともですか、一番よい結論になるように慎重に検討をする必要があります。

被害者に過失がないことが明らかである場合


被害者に過失がないことが明らかである場合、健康保険をわざわざ利用するメリットは被害者にはほとんどないです。健康保険の利用は断りましょう。

被害者に過失がある可能性がある場合


被害者に過失がある可能性がある場合には慎重に検討をする必要があります。特に、高次脳機能障害の場合には、長期の入通院となるために治療費が高額となります。

また、被害者側が事故状況を正確に把握できていないこともあるため過失割合が問題となることが多くあります。
そのために、健康保険の利用についてはより慎重な検討が必要です。

例) 過失割合が40%、治療費が総額300万円(自由診療)、健康保険利用と自由診療の場合の治療費の差が2倍の場合
健康保険を利用しない場合の治療費の被害者負担額 120万円
計算式 治療費300万円×過失割合40%

健康保険を利用した場合の治療費の被害者負担額 18万円
計算式 治療費150万円(自由診療の半額)×窓口負担額30%×過失割合40%


被害者負担額の差額 102万円
上記のように、被害者に過失がある場合、健康保険を利用した方が被害者にとっては数字上有利なのです。

病院との関係


病院によっては、交通事故の場合、健康保険の利用に積極的でない病院もあります。
可能な治療内容が健康保険と自由診療で異なる可能性があるという点、後遺障害診断書作成等の手続きが煩雑である点などが理由として考えられます。

高次脳機能障害の場合、後遺障害等級認定手続きのために医師との協力体制が必要不可欠であり、また、治療効果を上げることもより必要不可欠です。
そのためには、医師との緊密な連携関係が非常に重要となってきます。上記のような観点を踏まえて、健康保険を利用するかどうかということを決めましょう。

健康保険は利用できないという病院窓口の話


病院の窓口によっては交通事故の場合健康保険の利用はできないという旨の回答をすることもあります。
しかしながら、実際には、交通事故の場合であっても当然健康保険の利用は可能ですので、窓口で対応している方に丁寧に事実関係を説明する必要があります。

Q. 高次脳機能障害の等級が裁判で変わることはありますか。


【弁護士からの回答】
5級、7級、9級の判断は難しいことが多く、裁判で等級が変わることもあります。




高次脳機能障害の等級について


高次脳機能障害の場合、後遺障害等級としては、1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級、非該当という可能性があります。
  • 1級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
  • 2級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
    →1級、2級は特に介護の必要性という観点から定められています。
  • 3級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
    →1級、2級、3級は労働能力喪失率は100%です。
  • 5級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 7級 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 9級 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
    →5級、7級、9級の判断は、自賠責保険でも判定が微妙なことが多いです。総合評価となるため、当初申請と異議申立では等級が変わることもあります。また、裁判においても、等級の変更が認められやすい部分です。
  • 12級 局部に頑固な神経症状を残すもの
  • 14級 局部に神経症状を残すもの
    →高次脳機能障害と判断された場合でも,症状が改善した場合には12級,14級という判断もあります。また、非該当と判断されることもあります。

自賠責保険の判断と裁判の判断について


自賠責保険の場合、自賠責調査事務所の顧問医(脳神経外科)等が書面審査により判断します。すなわち、画像所見、意識障害の所見、神経心理学的検査の所見、日常生活状況の報告書などを元に判断をしていきます。他方、裁判の場合には、裁判官が全ての資料を精査した上で等級の判断を行います。

実際にどの程度労働能力の喪失が発生しているかという点やどのくらい日常生活に支障が発生しているかというような点も踏まえた判断がなされます。裁判の場合には、証拠は書面のみには限られませんので、被害者が裁判所で話した内容も証拠となります。

裁判の提起は慎重に


高次脳機能障害の場合、自賠責の等級が意外と高いという事案もあります。
そのような場合、裁判を提起すると、保険会社側が、自賠責の等級以下の等級を主張してくる事案も多々あります。

特に、労働能力があまり喪失していない場合、日常生活への影響が少ないような事案では、自賠責の等級以下の等級の判決となってしまうこともあります。

高次脳機能障害の事案の場合、裁判の提起は専門家の分析を踏まえた上で慎重に行った方がよいでしょう。特に、5級、7級、9級は判断が難しく、自賠責の等級が裁判で変わることも多々あります。

Q. 高次脳機能障害の場合自宅改造費は損害として認められますか。


【弁護士からの回答】
事案によります。
被害者の受傷の内容、後遺症の程度・内容を具体的に検討し、必要性が認められれば相当額が認められます。




高次脳機能障害と自宅改造費用


高次脳機能障害の場合、失語・失行・失認、記憶障害、注意障害、病識欠如、社会的行動障害などの症状があります。具体的な症状としてどのような症状があるのかを適切に把握の上、自宅改造が必要であれば自宅改造を検討する必要があります。

請求を検討すべき自宅改造


  • 浴室の改造、便所の改造、手すりの設置、段差解消(バリアフリー)、昇降機は比較的認められることが多い改造です。
  • その他自宅出入口の改造などもあります。

自宅改造費と後遺障害等級との関係


後遺障害等級が重いほど、自宅改造費が認められやすいという一般論はあるかと思います。特に、1級、2級の事案は介護が必要であることが前提となっていますので、介護に関連して自宅改造費が必要であれば、自宅改造費が認められる可能性は高いでしょう。他方、等級自体はそれほど重くないが、事実関係からすると絶対に必要と考えられる自宅改造費であれば、等級自体にはかかわらず損害として認められる可能性もあります。

金額の認定について


現実に購入するのに必要な金額が原則としては損害となります。しかし、改造等の必要性、支出額の相当性、被害者以外の家族が改造などにより事実上享受する便益等も考慮する必要があります。そのため、実際の金額全額ではなく、実際の金額の一部のみが損害額として認められるにとどまることもあります。

その他


  • 家屋改造の場合、現在の家では改造が困難である場合には新築費用が損害として認められることもあります。この場合、実際にかかった費用全額ではなく事故と相当因果関係の範囲内にある損害のみの請求が認められるという可能性があります。例えば、新居取得費用の○%分のみを損害として認めるというような方法です。
  • エレベーター設置などの場合には、家族が受ける利益がありますのでその点が考慮されることがあります。例えば、エレベーター設置費用の全額を損害として認めるのではなく、エレベーター設置費用の○%分のみを損害として認めるというような方法です。
  • 自宅改造の場合には介護のために必要という点で専門家の援助が必要です。介護に精通したリフォーム業者に依頼をしたり、介護に精通したリフォーム業者を専門家から紹介してもらうことも検討した方がよいでしょう。


Q. 高次脳機能障害で車イスが必要となった場合に車イス分の請求は認められますか。


【弁護士からの回答】
認められる確率が高いでしょう。




高次脳機能障害と車イス


高次脳機能障害の場合、失行・失認などの症状が発生することができます。行動できない、認識できないという症状ですので体を事故前のように動かすことが難しいことがあります。また、頭部外傷と併せて、骨折などの怪我が発生することもありますので、その場合にも車イスが必要となることがあります。

車イスの種類について


車イスについては、自分で全て動かす自走用標準型、介助者が動かす介助用標準型、電気で動く電動型があります。安い商品もありますが、高い商品ですと100万円を超えるような商品もあります。

車イス相当額の賠償について


本件事故により車イスの使用が必要となった場合、本件事故と相当因果関係がある損害として車イス相当額の賠償が認められることが多いでしょう。もっとも、車イスには様々なグレードなどがあることから、購入金額全額が損害額として認められるかどうかが争いとなることもあります。争いになった場合には、現在の後遺障害との関係でグレードの高い車イスが必要であることを証明していく必要があります。

耐用年数について


車イスの耐用年数は限られていますので、買替をすることを前提としなければなりません。その場合、その後の買替分の車イスの費用も認められることが多いでしょう(ただし、中間利息を控除する必要があります。)。既に購入済みの車イス分の損害賠償請求はしていても、将来分の車イスの損害賠償請求を忘れないように注意しましょう。将来分の車イス費用は現実的にはまだ支払をしていませんので損害項目から漏らしやすいです。

その他


  • 介護保険を利用することにより車イスを利用できる可能性があります。介護保険は40歳から64歳までの特定疾病により介護が必要と認定された場合、65歳以上で介護が必要と認定された場合に利用できます。
  • 市町村の公的補助制度などを利用することにより車イスを利用できる可能性があります。
  • 自宅介護を行うような場合には、車イス以外にも様々な介護用品が必要となってきます。必要な用品の一覧を作成して、どのくらいの頻度でどのくらいの量が必要なのかということをまとめて請求していく必要があります。
  • 車イスが必要となるような被害にあってしまった場合、他にも様々な損害を被っている可能性があります。また、後遺障害認定が適正かどうかを検討する必要があります。交通事故に詳しい専門家に必ず一度はご相談するようにしてください。


Q. 高次脳機能障害で入院中の入院個室代は損害として認められますか。


【弁護士からの回答】
原則として認められないことが多いですが医師の指示がある場合などは認められます。




入院個室代


入院個室代については原則として入院する人の自己負担と考えられています。しかしながら、以下のような事情がある場合には交通事故と相当因果関係がある損害として認められる可能性があります。

医師の指示があった場合

医師の指示があった場合には、入院個室代は損害として認められる確率が高いでしょう。具体的には、カルテや診断書に個室での入院を必要とする事情が記載されているような場合です。

症状が重篤の場合

症状が重篤の場合、入院個室代は損害として認められる確率が高いでしょう。症状が重篤な場合には、大部屋での入院には適していないからです。

感染症防止の必要がある場合

感染症防止の必要がある場合、入院個室代は損害として認められる確率が高いでしょう。感染症防止の必要がある場合には、大部屋での入院には適していないからです。

空室がなかった場合

空室がなかったような場合は入院個室代は損害として認められる確率が高いでしょう。

その他の場合

  • 個室等を利用した方が治療面でよい効果が期待できるという事情があるような場合は入院個室代が認められることがあります。
  • 救急患者・術後患者であって、症状が重篤なため安静を必要とする場合には入院個室代が認められることがあります。
  • 常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする場合には入院個室代が認められることがあります。
  • 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある場合には入院個室代が認められることがあります。
  • 集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の場合には入院個室代が認められることがあります。

将来の入院個室代


認められないことも多いかと思いますが、事情によっては認められる可能性もあります。

その他


  • 相手保険会社によっては、症状が重篤な事案などでは入院個室代を厳密に争わないことも多いです。保険会社が争ってきた段階で具体的な反論を検討するということでもよいでしょう。
  • 被害者の回復を最優先にすべきですので、結果的に全額の賠償が認められない事案であったとしても、個室を利用した方が望ましいこともあります。特に頭部外傷の場合には、事故直後の治療や事故から近い時期のリハビリが重要となってきますので、怪我からの回復を最優先に考えた判断をした方がよいでしょう。


Q. 仕事を再度始めたいと考えていますがどのように始めればよいですか。


【弁護士からの回答】
医師や専門家等と相談しながら復帰可能であれば復帰しましょう。




職場に籍がある場合


職場に籍がある場合には、従前の職場への復帰を第一に検討するのがよいでしょう。従前の職場の場合、事故前の被害者の状況を知っているため、比較的高次脳機能障害に対しての理解をもっていただけることが多いです。

新規に職場を探す場合


回復の程度次第ですが、回復の程度がよい場合にはハローワークにて求職登録を行うのがよいでしょう。また、インターネットや各種媒体で通常の就職活動を行う方法もあります。

一般就労が難しい場合


高次脳機能障害の後遺障害により一般就労が難しい場合があります。そのような場合には福祉的就労を経た上で一般就労を目指すことが望ましいです。具体的には、以下のような方法があります。
  • 地域障害者職業センターにおける就労支援を受ける方法があります。地域障害者職業センターでは、障害者職業カウンセラーが配置され、職業評価、職業指導、職業準備支援事業、OA講習などを行っています。また、ジョブコーチによる人的支援を受けることが可能なこともあります。
    *職業評価・・・就労支援に向けて、本人の職業能力を身体的、精神的、社会的、職業的側面から総合的に把握することです。
  • 職能訓練部門を有する総合リハセンターや更生施設、積極的な授産施設などでの就労支援を受ける方法があります。

職場復帰と休業損害について


交通事故で高次脳機能障害となった場合、通常は加害者側保険会社から休業損害が支払われているはずです。仕事を再度始めた場合、休業損害は打ち切りとなりますので職場への復帰は慎重にしましょう。一度仕事復帰して再度仕事を休んだ場合には、事案によりますが再度の休業損害の請求は難しいことも多いです。

職場復帰と逸失利益について


交通事故により高次脳機能障害となった場合、事案としては少ないかと思いますが、事故前よりも事故後の収入の方が多くなっている場合には、逸失利益が認められにくくなることもあります。

その他


  • 高次脳機能障害の症状にもよりますが、職場復帰自体がリハビリとなることもあります。他方、職場復帰が症状に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。そのため、職場復帰は慎重にしましょう。
  • 職場復帰は休業損害・逸失利益の計算に影響を与えてきますので、復帰に際しては交通事故に詳しい専門家に相談しましょう。


Q. 保険会社の態度に納得がいかないのですがどうすればよいですか?


【弁護士からの回答】
今何を言うべきなのかを慎重に検討しましょう。




高次脳機能障害と加害者任意保険会社の対応について


頭部外傷で入院し、高次脳機能障害となったような場合、加害者側の保険会社の対応が悪いということはそれほど多くはないという印象があります。
一番大切なのは症状が改善することですので、「まずは治療に集中する」という観点から、治療費全額を加害者側の保険会社が負担することが多いです。

また、家族の交通費、家族の付添看護費、入院・介護に関わる雑費などについても、ある程度の支払に応じることが多いです。

加害者側任意保険会社の対応が悪い場合


高次脳機能障害となってしまった場合、加害者側の任意保険会社の対応が悪い場合もあります。
特に、過失割合に関することなどで加害者側保険会社の対応が悪いというケースが多いような印象があります。

また、交通費・付添看護費・その他雑費などについての対応が悪いという事案もあります。

過失割合に関する対応が悪い場合


高次脳機能障害の症状が残るような場合、被害者は一生後遺症と付き合っていかなければいけないこともあります。にもかかわらず、被害者に過失があるなどと言われるのは全く納得できないということもあります。過失割合に関してありえないような過失割合を保険会社が事故直後から主張しているような場合の一番よい対策は、「過失割合については合意しない」ということです。

つまり、過失割合については治療終了→後遺障害認定→賠償金の交渉という流れの最後の段階で決めればよいと考え、保険会社の主張する不当な過失割合については一切相手にしない方がよいです。

なお、物損について過失割合を決めてしまうと、その過失割合を前提として人身事故の過失割合も決められてしまうことがありますので、物損だからといって安易に納得できない過失割合では応じないようにしましょう。

交通費、付添看護費、その他入院・介護雑費に関する対応が悪い場合


高次脳機能障害の症状が残るような場合、家族が病院まで行くための交通費や家族が病院で付添をするための付添看護費、その他入院・介護雑費に関する対応が悪い場合があります。
実際に支出をしたにも関わらず、保険会社が支払を拒むようなケースもあります。交通費、付添看護費、その他入院・介護雑費などは個別の項目ごとに裁判でも認められるかどうかが争いとなる項目ですので、保険会社が支払を拒んだ場合には2段階での対応がよいと思います。

第1は、弁護士に依頼してそれらの損害額を請求するという方法です。
弁護士が代理することによって、交通費、付添看護費、その他入院・介護雑費の支払がされることもあります。

第2は、資料を保管しておいてあとでまとめて請求をする方法です。
高次脳機能障害の場合、後遺障害等級にもよりますが、逸失利益や後遺障害慰謝料などで損害額が1億円以上となることもあります。そのような全体の損害額の交渉の際に、未払いの各種損害項目をきちんと主張できるかどうかがとても大切ですので、資料をきちんと保管しておくことが大切です。

保険会社の担当者個人の資質に問題がある場合


保険会社の担当者個人の資質に問題がある場合もあります。このような場合には、担当者の変更を保険会社に要請するのが一番よいでしょう。

Q. 後遺障害等級認定に納得できないのですがどうすればよいですか。


【弁護士からの回答】
異議申立をしますが、後遺障害認定に詳しい弁護士に必ず相談しましょう。




高次脳機能障害と後遺障害認定について


高次脳機能障害の後遺障害認定については、1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級の後遺障害等級があります。

このようにたくさんの後遺障害等級があり、また、各等級の分かれ目も微妙であるために、後遺障害認定に納得ができないということがよくあります。

後遺障害等級認定の異議申立について


後遺障害等級認定の異議申立は、交通事故の後遺障害認定に詳しい弁護士に必ず相談しましょう。後遺障害認定手続きに際しては、医学的な証拠が何よりも重視されます。

そのため、現状を踏まえた上で、一番効果的な医証(医学的な証拠)を集めることが重要なのです。

医証がないと後遺障害等級認定を変えるのは困難です


裁判手続と異なり、後遺障害認定手続で大切なことは医学的な証拠です。医証なしに異議申し立てをしても、ほとんど結果が変わることはありません。

法律事務所によっては、放射線科医、脳神経外科医、整形外科医、などと連携をしている事務所もありますし、当事務所でもそれらの専門家と連携をしています。これらの専門家との連携をすることにより、医学的な証拠を追加した上での適切な後遺障害認定を行うことが可能となるのです。

高次脳機能障害の等級認定・異議申立手続を適切に行うことのできる法律事務所は極めて限られていますので、適切な弁護士に依頼をし、適切な医証を集めて異議申立をしましょう。

裁判提起よりも異議申立の方がよいです


後遺障害等級認定で納得ができない場合、後遺障害等級認定を裁判でひっくり返すという方法もあります。しかしながら、裁判では多くの場合、自賠責調査事務所が認定した後遺障害等級認定に基づいて損害が算定されます。

そのため、後遺障害等級認定に対する異議申立を行い、納得できる等級認定を受ける方を優先すべきです。
特に、高次脳機能障害の場合、等級認定の境目が微妙なことも多いので、初回認定であきらめずに異議申立を行うことが大切です。

まだ後遺障害等級認定申請をしていない皆様へ


まだ後遺障害等級認定申請をしていない場合、高次脳機能障害では必ず初回の後遺障害等級申請前に弁護士などの専門家に相談してください。

異議申立で状況を改善するより、初回申請の段階で適切な申請を行った方が、より納得できる等級となる確率が高いです。

Q. 特に保険会社ともめていないのですが、弁護士に早めに相談した方がよい理由は何ですか?


【弁護士からの回答】
高次脳機能障害の可能性のある傷病名(脳挫傷、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳内出血、低酸素脳症等)の場合、できるだけ早い段階で弁護士に相談してください。




高次脳機能障害のポイント


高次脳機能障害の可能性のある場合、自賠責の基準で認定されうる後遺障害の等級としては、1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級まであります。
このように、骨折等と異なり高次脳機能障害においては認定されうる後遺障害の等級に非常に幅があることが特徴です。

これらの等級は、症状固定時に作成する後遺障害診断書の記載内容も判断の重要な要素となりますが、事故直後の意識障害の程度、治療中に撮影した画像の所見・検査の所見などを総合的に考慮して決まることが多いです。

当然高次脳機能障害の可能性のある傷病名を残す方であっても、脳の出血が消失し、症状もなくなり治癒する方もいらっしゃいますし、事故前の元気な体を取り戻すべく治療をすべきことは言うまでもありません。ただし、頭部に強い外的エネルギーが働き、脳に出血・損傷が生じた場合、重篤な症状が一生涯続いてしまう方が一定数いらっしゃるのもまた事実です。

このような万が一の事態に備えて、適切な後遺障害等級の認定を受けるために、あるいは適正な賠償を受けるために、必要な治療を受ける、検査を受けるということが非常に大事なのです。

高次脳機能障害では見逃しやすい症状に注意が必要です


また、高次脳機能障害の場合、問題がある症状に気づきにくいという特徴があります。
例えばにおいや、味覚の変化などは見逃しやすい症状ですが、適切な検査を行い、立証を行えば後遺障害が認定される可能性があるものです。

脳を損傷したことで性格に変化が生じる被害者の方も多くいらっしゃいます。

これらの変化は日々の生活の中で注意深く、見守り・観察する必要があります。

早期に弁護士に相談をすることで、高次脳機能の場合に生じやすい性格変化(易怒性、抑うつ、無気力等)をお伝えすることが可能です。

脳は身体活動、精神活動全般をつかさどる機能ですので、様々な症状が発現する可能性があります。
高次脳機能障害により生じうる症状、注意すべき変化について、まずは知っていただくことで、その後の治療、検査の方針を考えることが可能になります。

適正な賠償を受けるために


事故から数年経っても重い症状が残るのに、適切な後遺障害が認定されない、適正な賠償を受けることができない、このような被害者の方を少しでも減らしたいという思いで、当事務所では治療中から積極的なアドバイスをさせていただいております。

入院中である等、被害者の方ご自身の相談が難しい場合も多いと思います。
そのような場合は、近親者の方のご相談、ご質問もお受けしておりますので是非ご検討下さい。


Q. まだ入院中なのですが、何か気を付けることはありますか?


【弁護士からの回答】
脳の損傷が疑われる場合は、必ずMRIを撮影してもらいましょう。
また、ご家族の方が付き添っている場合には、証拠や情報を保全しておきましょう。




脳の損傷している場合にはMRIを撮影してもらう


大きな交通事故の場合、頭部を受傷している場合などは救急搬送先で頭部のCTを撮影することが一般的です。そこで、脳の損傷が疑われる場合には、より正確な情報を得るためMRIを撮影することが多いと思います。

MRIとは磁力を用いて体内の水を画像化する診断する機器ですが、CTと比較してより情報量が多く診断能力が高いとされています。(近年は脳の診断にはMRIがファーストチョイスになっている場合もあるようです。)

今後の治療方針の確定のため、あるいは万が一症状が残存した場合のエビデンスとしてもMRIは有用ですので、脳の損傷が疑われる場合には必ずMRIを撮影してもらいましょう。

入院中ご家族が付き添った費用を請求できる場合がある


例えば脳を損傷し、ICUに入ってしまう場合などは、ご家族が付き添い、医師の説明を聞き、あるいは入院の準備をすることが一般的だと思います。そのために仕事を休まざるを得ないこともあると思います。
ご家族等の入院の付き添いのために発生した損害を、「入院付添費」といいます。では、こういった費用を相手に請求できるでしょうか。

裁判所の考え方を記載した赤い本では「医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要であれば、(略)近親者付添人は1日につき6,500円が被害者本人の損害として認められる」とされています。

上記の脳を損傷しICUに入ってしまう場合などは「受傷の程度」が重く、付添費が認められる可能性が高いです。
また、赤い本では日額6,500円という金額について「症状の程度により、(略)1割〜3割の範囲で増額を考慮することがある」ともされています。

どのような症状があれば増額が認められるかはケースバイケースですが、例えば過去の裁判例では、大声を発する、徘徊してしまう(近親者が見守らないとベッドに拘束されてしまう)、看護師に暴力をふるってしまう、排せつに介助が必要といった事情が認められる場合は、増額をして高額の付添費用の支払が命じられています。

証拠保全の必要性


入院付添費を請求する場合、被害者の側で具体的に付き添った日数と事実を主張立証しなければなりません。

例えば退院をされ、治療が終了しあるいは後遺障害が認定され、事故から1年あるいは数年が経過した状況だと入院時の状況やどれくらい(何日)付き添ったかわからなくなってしまう場合があります。
そこで、付き添い費用の請求に備えて、被害者本人の状況、医療関係者の話、付き添った日をメモ等で残しておくとあとあと有用です。日記等をつける方もいらっしゃいます。
また、ご家族が受け取った手術の説明書、同意書等でも付き添ったことが分かる場合がありますので、保全しておくとよいでしょう。

例えば一年間毎日付き添いを行った場合、日額6,500円に365日を掛け合わせると200万円を超える大きな金額になります。

そもそも家事や仕事を犠牲にして毎日病院に行くこと自体大変な事柄だと考えますので適正な賠償金を受領するために証拠の保全というお話はぜひ知っておいて欲しい事柄です。

Q. 弁護士選びはどうすればよいですか。


【弁護士からの回答】
本当に高次脳機能障害の解決実績がある弁護士を選びましょう。
また、医師等の専門家と連携している事務所を選びましょう。




高次脳機能障害の被害の深刻さ


高次脳機能障害が残存してしまった場合、後遺症と一生付き合っていかなければなりません。被害者ご本人はもちろんのこと、被害者の家族もとても大変な思いをすることとなります。

このような深刻な被害にあってしまった場合、できるだけ事故前の状況に戻すことも大切ですが、適正な保険金を取得して、今後の治療や生活費に充てる必要があります。そのためにも弁護士選びはとても大切です。

交通事故(特に高次脳機能障害の後遺障害認定)に精通した弁護士は少ない


私たちの事務所の感覚では、高次脳機能障害の後遺障害認定に精通している弁護士はとても少ないと感じています。今まで、弁護士は後遺障害等級認定後の保険会社との保険金の交渉や、民事裁判の業務を多く取り扱ってきました。
そのため、高次脳機能障害の後遺障害認定に精通した弁護士は極めて少ないというのが実情なのです。

最近では、交通事故の後遺障害認定に詳しい弁護士というのも増えてきてはいますが、実際のところ、交通事故の後遺障害認定に詳しい弁護士というのはまだまだ限られているのです。

各種専門家との連携


高次脳機能障害の等級認定やその後の賠償交渉においては各種専門家との連携が必要になってきます。

例えば、後遺障害認定についての意見をもらうことができる脳神経外科医や整形外科医などの医師、MRI・CTなどの画像鑑定の依頼が可能な放射線科医、事故状況がシビアに争いとなった場合の工学鑑定の専門家などです。

また、後遺障害認定に特化した調査会社などもありますので、そのような専門家との連携も場合によっては重要です。当事務所でも医師・工学鑑定の専門家・後遺障害認定に特化した調査会社などと連携していますので必要に応じて各種専門家と連携しながら適切な保険金を取得できるように手続きを進めていくことが可能です。

地域の病院情報


交通事故の後遺障害認定にあたっては、地域の病院情報も重要な情報です。交通事故を多く取り扱っている弁護士の場合、地元の脳神経外科医や整形外科医との面識があることが多いです。
面識があると、各種検査の依頼や後遺障害診断書作成の依頼がしやすいので、より適正に後遺障害認定がされやすくなります。

そのため、交通事故の後遺障害認定にあたっては、地域の病院情報を熟知した弁護士に依頼をすることがよいでしょう。

Q. 市などによる障害福祉サービスにはどのようなものがありますか。


【弁護士からの回答】
各地方公共団体には高次脳機能障害を含む障がい者に対する様々な福祉サービスがあります。
以下は千葉県柏市の例です。




各種相談窓口


市町村の障害福祉課窓口、障害者相談支援室窓口、障害者支援コーディネーター配置事業所、柏市地域生活支援センターあいネットなどがあります。
また、千葉県内には高次脳機能障害を扱う専門の病院があります。以下の病院では、高次脳機能障害に関する相談・支援が行われています。

  • 千葉県千葉リハビリテーションセンター、高次脳機能障害支援センター(千葉市緑区)
  • 旭神経内科リハビリテーション病院(千葉県松戸市)

身体障害者手帳などの各種手帳の交付


身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳などの手帳が交付されます。

各種手当・年金の受給


福祉手当、障害基礎年金、障害厚生年金などの受給の可能性があります。

医療費の助成


医療費の助成の制度があります。

補装具・日常生活用具の助成


補装具や日常生活用具の助成の制度があります。

介護保険と障がい者等福祉サービスの優先関係


介護保険が適用される場合には、介護保険が優先して適用となります。介護保険が適用となるのは、以下の通りです。

@65歳以上の方
A40歳以上65歳未満でがん、関節リウマチ、筋萎縮性側索骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底格変性症及びパーキンソン病、脊髄小脳変形症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

福祉サービスの受給


介護給付・訓練等給付を受けることができます。

在宅生活の支援


住宅改造費の助成などの支援を受けることができます。

通信・情報サービス


様々な通信・情報サービスに関して便宜を受けることができます。

交通関係


自動車改造費の助成、駐車禁止除外、福祉タクシーの利用、自動車燃料費の助成、鉄道運賃の割引、航空運賃の割引、有料道路通行料金の割引、タクシー運賃の割引、バス運賃の割引、かしわ乗合ジャンボタクシーの割引、予約型相乗りタクシーの割引、市営駐輪場使用料免除・減額などのサービスを受けることができます。

税金等


所得税、相続税、贈与税、個人事業税、自動車税、自動車取得税、住民税、軽自動車税などの税金が控除されることがあります。また、医療費控除により税金が安くなることがあります。

選挙


郵便等による不在者投票、投票所における点字投票などをすることができます。

雇用・就労支援


ハートフルワーク柏(障害者福祉就労支援センター)、松戸公共職業安定所、千葉障害者就労支援キャリアセンター、千葉障害者職業センター、障害者就業・生活支援センタービック・ハート柏、国立職業リハビリテーションセンターなどに相談をすることができます。

(参考文献 柏市障害福祉のしおり、柏市発行)


Q. 高次脳機能障害で入院中の雑費は損害として認められますか。


【弁護士からの回答】
入院1日当たり1,500円が認められます。




高次脳機能障害と入院期間


頭部外傷により高次脳機能障害となってしまった場合、事故直後の急性期には入院となってしまっていることが多いでしょう。また、最終的な後遺障害次第ですが、症状固定後も長期の入院や施設への入所が必要となってしまうことも多いです。

高次脳機能障害と入院雑費


頭部外傷により入院となってしまったような場合、長期間の入院を余儀なくされることが多いです。入院中は、様々な雑費が損害として発生します。そして、治療費分とは別の費用として、入院雑費が損害として認められます。

日額1,500円

弁護士が代理した場合、裁判の場合の基準は日額1500円の入院雑費が認められます。保険会社の提示額は日額1100円程度となっていることも多いですが、弁護士が代理をした場合にはほぼ100%の確率で日額1500円の賠償となります。

上記諸雑費に含まれる項目

(1)日用品雑貨費、(2)栄養補給費、(3)通信費、(4)文化費(新聞雑誌代、ラジオ、テレビ賃借料)、(5)家族交通費等が含まれます。

将来の介護雑費


高次脳機能障害の症状が残存し、将来的に病院又は施設への入所が継続すると見込まれる場合があります。このような場合も日額1,500円前後の将来の介護雑費が認められることがあります。ただし、将来の介護雑費は必ず発生するものであるかどうか未確定であるため、具体的にどのような項目についてどれくらいの金額が発生するのか否かを個別具体的に検討することが必要です。(1)介護雑費として請求する費用の具体的な内訳・内容、(2)請求する項目の必要性、(3)請求する項目の将来にわたる支出の蓋然性を個別具体的に検討することとなります。

その他


  • 入院雑費は治療費とは別項目です。治療費とは別の損害項目として入院雑費の損害は認められます。
  • 入院雑費については比較的定額化されていますので、個別の金額について主張・立証を特別しなくても過去に入院していた期間については日額1,500円が認められる傾向にあります。
  • 高次脳機能障害で入院の場合や高次脳機能障害で施設に入所するような場合には、入院期間・通所期間が非常に長くなることが予想されます。そのような場合には、将来分の入院雑費の請求を忘れずに請求するようにしましょう。既に支払った分の費用は忘れずに請求したとしても、今後発生する可能性のある費用の分は請求を忘れることがありますので注意しましょう。


Q. 自動車改造費は損害として認められますか。


【弁護士からの回答】
受傷内容、後遺症の程度・内容を具体的に検討し、必要性が認められれば相当額が認められます。




高次脳機能障害と自動車の改造


高次脳機能障害の場合、うまく体を動かすことができない後遺症が残ることがあります。また、頭部外傷により高次脳機能障害となる場合、頭部外傷以外にも複数の部位の傷害が残存することも多いです。そのような場合、自動車に乗るために自動車の改造が必要な場合があります。例えば、以下のような種類の改造があります。

  • 両足が不自由な方のための手動アクセル・ブレーキ
  • 右足が不自由な方用の左足によるアクセル・ブレーキ
  • 痙攣止めプレート
  • アクセルペダルの跳ね上げシステム
  • 握力がないためステアリングホイールを握れない方用のノブ
  • 車いす収納装置
  • 車いすから運転席に移る時の補助のサイドサポート
  • 車いすごと乗る乗降用リフト


自動車改造費について


自動車を障害者仕様にするために改造するための費用です。過去の裁判例では、自動車を障害者仕様にするための費用が認められていることがあります。また、新車を購入した場合には、障害者仕様とするために標準の仕様と比べて高額となった分が損害として認められる費用となります。

将来の自動車改造費用


自動車の改造は1台限りではなく、将来購入する可能性のある自動車についても必要となることがあります。その場合、何回購入する必要があるかを検討した上で、将来の自動車改造費用を請求することが可能です。(なお、自動車の耐用年数は6年~10年位で計算し、中間利息を控除することが一般的です。)

その他


  • 介護を要する1級、2級の後遺障害の場合には自動車改造費が認められる確率が高くなります。他方、3級以下の後遺障害であったとしても、自動車改造費が損害として認められることもあります。
  • 自動車改造費については市町村からの助成を受けることができる場合もあります。各市町村によって制度が異なっていますので詳細は各市町村にお問い合わせください。
  • 介護を要する1級、2級の後遺障害などの場合には、自動車改造費以外にも、自宅改造費、将来介護費なども問題となることがあります。将来介護費・自宅改造費・自動車改造費などは専門的な知識・経験が解決のためには必要な事案となってきます。また、特に将来介護費などは金額が大きい項目です。自動車改造費などの損害項目が発生する場合には、交通事故に詳しい専門家に相談しましょう。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

プロフィール
よつば総合法律事務所
千葉県最大級の法律事務所。弁護士19名が所属しております。事務所名の「よつば」は事務所に関わる人が皆幸せになるようにとの思いから名付けました。お気軽にご相談ください。
柏事務所:千葉県柏市(柏駅徒歩3分)
千葉事務所:千葉市(千葉駅徒歩3分)

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