過失割合を15%有利に修正した上で、賠償額を4倍以上増額した事例

最終更新日:2025年07月03日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士
米井 舜一郎
当初の提示額
14万円
最終獲得金額
60万円
4.2 増額
千葉県佐倉市・50代・男性・アルバイト
病名・被害
頚椎捻挫・胸部打撲傷・胸部捻挫・両肋骨部挫傷
けがの場所
鎖骨・肩甲骨・肋骨・胸骨
最終獲得金額
60万円
後遺障害等級
認定なし
事例の特徴
むちうち(首・腰)

事故の状況

佐藤さんは車を運転中、左の脇道から出てきた車に衝突される事故に遭いました。

車を運転中、T字路で一時停止がある左の脇道から出てきた車に衝突された事故状況図

ご相談内容

相手保険会社から提示されたけがの賠償金は、約14万円と低額でした。佐藤さんは相手保険会社から示された過失割合に納得できませんでした。また、物損示談の目途も立っていませんでした。

佐藤さんは、弁護士費用特約に入っていたため、賠償額を増額するために弁護士に依頼することにしました。

佐藤さんのご相談内容のまとめ

  1. 賠償額を増額したい
  2. 過失割合に納得がいかない
  3. 物損も解決をしたい

出会い頭衝突の過失割合は?

弁護士の対応と結果

調査の結果、過失割合を15%修正に成功

弁護士が介入をして相手保険会社と交渉を開始したところ、相手保険会社は佐藤さんに30%の過失があると主張してきました。

佐藤さんの話によると、相手方の著しい前方不注視があるのではないかとのことで、事故現場に行き、現場を検証することにしました。

事故現場を複数回走行した結果、佐藤さんから相手方車両の発見が難しいことが分かりました。逆に、相手方が交差点に進入する際は、相当慎重に進入する必要があることも分かりました。

また、相手方の道路には一時停止がありましたが、相手保険会社はこの事実を見落としていることに気づきました。

これら事故現場の検証結果を踏まえて、相手保険会社を説得した結果、佐藤さんの過失を15%有利に修正することができました。

買替諸費用を含めて物損を解決

過失割合15%を前提に、物損の示談交渉を行いました。

佐藤さんの自動車は時価額よりも修理額の方が高い、「経済的全損」という状態でした。この場合、車両時価額に加えて、買替諸費用も請求をすることができます。

弁護士から車両時価額に加えて、買替諸費用を請求したところ、保険会社は当初は拒絶しました。しかし、買替諸費用の資料を送付して担当者を説得した結果、買替諸費用も支払われることになりました。

人身の賠償額を4倍以上に増額

弁護士が介入する前に、佐藤さんに提示された賠償額は約14万円でした。

保険会社は、自賠責保険の基準と同じ金額で慰謝料を算定していたため、低い賠償額の提示にとどまっていました。そこで、弁護士は裁判の基準で慰謝料を計算し直し、保険会社に請求をしました。

保険会社は、通院回数が少なく、通院期間が7か月になるため長期通院にあたり、裁判の基準の8割しか認めないと反論してきました。

この時点でそれなりの増額ができていましたが、さらなる増額を目指して交渉を継続することにしました。弁護士は、「『通院が長期にわたる場合』か否かは、事故態様、症状や治療内容等を踏まえて判断されるべきであり、通院期間が6か月を超えたからといって、ただちに『通院が長期にわたる場合』と評価することはできない」との意見書を作成しました。

その結果、意見書の内容が認められ、4倍以上の賠償額を獲得することができました。

解決のポイント

1. 適切な過失割合での解決を求める

過失割合を争うのは簡単ではありませんが、諦めずに交渉をすると有利に修正できる場合があります。

今回は、事故現場の検証を行い、弁護士自ら事故現場を走行することで、見通しが著しく悪いことを確認できました。

また、相手保険会社は一時停止の表示があることを見逃していましたが、弁護士が適切な主張をすることで、過失割合を15%修正することができました。

2. 買替諸費用を請求する

時価額よりも修理費の方が高い経済的全損の場合、買替諸費用(車庫証明費用、検査登録法定費用や代行費用など)を請求できます。

しかし、弁護士が介入していない場合は、保険会社が買替諸費用を払ってくれることは少ないのが実情です。

本件では弁護士が介入しても、相手保険会社は買替諸費用の支払いを拒んでいました。そこで、複数の資料を相手保険会社に送付して検討を促した結果、ようやく買替諸費用を支払うことを認めました。

3.慰謝料を増額する

弁護士が介入をしない場合、相手保険会社から提示される入通院慰謝料が低額であることが多いです。理由は、保険会社と弁護士では、慰謝料の算定基準が違うからです。

保険会社は、実通院日数を基準に慰謝料を算定することが多いため、通院回数が少ないと慰謝料が低額になってしまいます。一方で、弁護士は通院期間で慰謝料を算定するため、通院期間が長いと慰謝料が高くなります。

今回のケースでは、通院回数は少ないが、通院期間は長いという事例だったため、最終的に4倍以上の慰謝料増額をすることができました。

ご依頼者様の感想

依頼して良かったです。ありがとうございました。

(千葉県佐倉市・50代・男性・アルバイト)

本事案は実際のお取り扱い案件ですが、プライバシー保護のため、事案の趣旨を損なわない範囲で一部内容を変更や省略していることがあります。写真はイメージ画像であり実際のお客様とは異なります。記載内容は当事務所のPRを含みます。

本事例へのよくある質問

Q買替諸費用として請求できる費目には何がありますか?

買替諸費用として請求できる費目は次のとおりです。

  • 廃車費用
  • 買替車両の自動車環境性能割(被害車両と同種・同等のもの)
  • 車庫証明書取得費用
  • 自動車登録費用
  • 納車費用
  • 業者の報酬として相当な額
  • 被害車両の自動車重量税の未経過分

逆に、買替諸費用として認められない費目としては、次のものがあります。

  • 自動車税
  • 自賠責保険料
  • 希望ナンバー代行費用

自動車税が買替諸費用として認められない理由は、車検証有効期間の未経過分に相当する自動車税について、還付制度があるからです。

自賠責保険料も同様に、未経過分に相当する部分について還付制度があるため、買替諸費用として認められません。

Q入通院慰謝料の算定方法はどのような計算ですか?

入通院慰謝料の算定方法には、自賠責基準、任意保険基準、裁判所の基準の3種類があります。自賠責基準が最も低く、裁判所の基準が最も高くなることが多いです。
今回は、むち打ち症で通院期間6か月、実通院日数30日の事例で考えてみましょう。

  1. 自賠責基準

    4300円×日数で計算をします。

    日数とは、【入通院日数×2】と【入通院期間】のどちらか少ない方を指します。
    【入通院日数×2】は30日×2=60日、【入通院期間】は180日となるため、日数は少ない60日となります。

    4300円×60日=25万8000円が自賠責基準で算定した慰謝料になります。

  2. 任意保険基準

    任意保険基準は公開されていないため詳細は不明ですが、自賠責基準より高く、裁判基準より低くなります。もっとも、保険会社の初回提示では、自賠責基準と全く同じ金額が記載されていることも少なくありません。

  3. 裁判所の基準

    弁護士が介入すると、裁判基準で慰謝料を算定します。

    裁判所の基準には、骨折等の重症に場合に用いる別表Ⅰと、むち打ち症で他覚的所見がない場合等に用いる別表Ⅱがあります。別表Ⅰの方が別表Ⅱよりも金額が高くなります。

    本件はむち打ち症なので、別表Ⅱを使って算定をすることになり、6か月通院した場合の慰謝料は89万円になります。裁判をせずに示談交渉で解決をする場合、80万円前後での解決になることが多いです。

    自賠責基準の慰謝料は25万8000円となりますが、弁護士を介入して示談交渉をすると80万円前後まで増額することができます。3倍以上の増額となりますので、金額に大きな差が生まれます。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士
米井 舜一郎

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