右下腿骨幹部開放骨折(14級)で695万円を獲得した事例
最終更新日:2026年01月09日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
- 弁護士
- 米井 舜一郎
- 病名・被害
- 右下腿骨幹部開放骨折
- けがの場所
- 足・股・膝
- 最終獲得金額
- 695万円
- 後遺障害等級
- 14級
事故の状況
本件事故は、見通しの良い交差点で発生しました。
依頼者である塩野さん(仮名・20代男性)は、バイクを運転し、片側一車線の道路を直進していました。塩野さんが交差点に差し掛かったそのとき、対向車線から1台の乗用車が突然右折を開始しました。相手方車両はバイクとの距離を見誤ったのか、塩野さんの進路を塞ぐように目の前に現れました。
「あっ!」と思った瞬間には、もう回避不能な距離でした。塩野さんは急ブレーキをかけましたが間に合わず、バイクの前部が右折車の左側面に激しく衝突しました。
衝突の衝撃で塩野さんの体は空中に投げ出され、硬いアスファルトの路面に叩きつけられました。意識はありましたが、すねの骨が外部に露出する「開放骨折」という重傷でした。
塩野さんはそのまま緊急搬送されることとなりました。

ご相談内容
2年以上にも及ぶ懸命な治療にもかかわらず、塩野さんの右足には痛みと関節可動域制限といった症状が残ってしまいました。
主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害の申請を行ったところ、骨折部分の疼痛を理由に、後遺障害等級14級9号(局部に神経症状を残すもの)が認定されました。
等級認定後、相手方の保険会社から示談金の提示が届きました。
しかし、提示された金額はわずか約170万円でした。あれだけの痛みに耐え、2年も治療し、今も後遺症が残っているのに、これだけの金額なのかと納得がいかず、弁護士に相談しました。
塩野さんは「弁護士費用特約」が使えることを確認し、費用の心配なく弁護士に依頼できることから、弁護士に交渉を任せることにしました。
塩野さんのご相談内容のまとめ
- 正当な補償を獲得したい
- 後遺障害等級に納得がいかない
- 過失割合に納得がいかない

弁護士の対応と結果
異議申立てと紛争処理機構
まず、弁護士が着目したのは、後遺障害等級の妥当性です。
塩野さんが認定された14級9号は、交通事故の後遺障害の中では最も軽い等級です。しかし、塩野さんの怪我は「開放骨折」であり、通常の打撲やむち打ちとは受傷時の状況が異なります。
弁護士は、画像所見(レントゲン、CTやMRI)やカルテの内容を精査し、骨癒合の不正や神経損傷の他覚的所見がないかを確認しました。骨癒合の不正はなく、神経損傷の他覚的所見も認められませんでしたが、現に右足には痛みと関節可動域制限があることは事実です。
そこで、安易に示談交渉には入らず、まずは等級認定に対する不服申し立てを行うことにしました。
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第一段階:自賠責保険への異議申立
まず、自賠責保険に対して異議申立を行いました。主治医に医療照会を行い、痛みの原因が骨折部の変形や癒着にある可能性を指摘する意見書を集めるなど、可能な限り資料を揃えて申請を行いました。
しかし、自賠責保険は14級の判断を変更しませんでした。
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第二段階:紛争処理機構への申請
異議申立てが認められなかったので、弁護士は、紛争処理機構への申請を行いました。ここは、弁護士や専門医が合議体で審査を行う機関であり、自賠責の判断が覆るケースも少なからずあります。
ここでも数ヶ月にわたる審査が行われましたが、残念ながら最終的な結論は「14級9号が相当」というものでした。
できる限りのことはしましたが、後遺障害の認定が覆ることはありませんでした。そこで弁護士は方針を切り替え、14級9号を前提に、可能な限り賠償額を上げる交渉を行うことにしました。
過失割合を「5対95」に修正
相手方保険会社は右折車対直進バイクの基本割合である15対85から、バイクに速度違反があったとして塩野さんに不利益に過失割合を修正し、20対80を主張していました。
相手方は刑事罰を科されていたので、刑事記録を取得することにしました。刑事記録を確認すると、塩野さんが速度違反をしていた証拠はどこにもないことがわかりました。
また、実況見分調書を確認すると、塩野さんが交差点に進入した後に、相手方が右折を開始したことが分かりました。これは「直近右折」と呼ばれ、塩野さんに10%有利に過失割合が修正される要素です。
このことを保険会社に対して主張したところ、全面的に当方の主張が認められ、20対80から、5対95に修正されました。
逸失利益の基礎収入を150万円アップ
逸失利益とは、「後遺障害がなければ将来得られたはずの収入」のことです。
事故当時の塩野さんの年収は、20代ということもあり、全世代の平均年収と比較すると低い水準でした。保険会社は当初、この「事故当時の実収入」を基礎収入として逸失利益を計算していました。
しかし、20代の若者が、今後20年、30年と働き続ける中で、年収が今のままであるとは考えにくいです。
弁護士は、賃金センサスの男性全学歴計全年齢平均賃金を使用すべきだと主張しました。
これは、「日本の男性労働者の平均的な年収」を指します。若年者の場合、将来的に平均年収程度までは収入が伸びるであろうという経験則があり、それに基づく主張です。
保険会社に対し、「被害者の将来の昇給可能性を考慮しないのは妥当ではない」と主張し、結果として、実収入よりも約150万円高い金額を基礎収入として認めさせることに成功しました。
逸失利益の労働能力喪失期間を20年に
保険会社は、「14級9号(神経症状)の労働能力喪失期間は、短期間に制限されるべきである」と主張しました。
確かに、むち打ち症などの場合、時間の経過とともに症状が緩和すると考えられるため、裁判基準でも「14級は5年」とされることが多いのが実情です。
これに対し、弁護士は以下の点を主張して、長期間の労働能力喪失期間を認めるように求めました。
- 本件は単なる打撲や捻挫ではなく、「開放骨折」という重傷事案であること。
- 757日(2年以上)という長期間の治療を経てもなお強い痛みが消失していないこと。
また、弁護士は、過去の裁判例の中から、14級でも長期間の逸失利益を認めた類似判例をリサーチし、保険会社に提示しました。その結果、保険会社は20年間の労働能力喪失期間を認めるに至りました。
最終的に4倍以上の増額で解決
以上の交渉の結果、最終的な獲得金額は、自賠責保険から支払われる分も含め695万円となりました。当初の提示額である約170万円と比較すると、500万円以上の増額での解決となりました。
解決のポイント
1. 適切な過失割合に修正をする
保険会社が主張する過失割合が必ずしも正しいとは限りません。適用する図を誤っていたり、修正要素が加味されていなかったりするケースがあります。
過失割合を争うためには、事故の正確な状況を確認することが大切です。そのためには、刑事記録を取得して、実況見分調書などを確認することになります。
本件では、刑事記録を精査した結果、理由なく速度違反の不利な過失修正が行われていたことに加え、直近右折という有利な過失割合が考慮されていませんでした。客観的な証拠に基づいて、過失割合を修正することが大切になります。
2. 逸失利益算定の基礎収入を上げる
給与所得者の基礎収入は、原則として事故前年の年収を基礎として算出します。
もっとも、事故時に概ね30歳未満の場合には、原則として全年齢平均賃金の賃金センサスを用いることになります。通常20代は働き始めて間もない時期であり、賃金が低いことが通常です。それにも関わらず、事故前年の収入を前提とすると、将来の昇給分を考慮されず、適切ではありません。
本件でも、保険会社は事故前年の年収で基礎収入を算定していましたので、全年齢平均賃金の賃金センサスを使うべきだと主張し、保険会社を説得しました。
3. 逸失利益の労働能力喪失期間を延ばす
神経症状を理由とする労働能力喪失期間は、14級や12級の場合5年や10年などという短期間に制限されることが多いのが現実です。この議論は、特にむち打ち症によく出てきます。
しかし、器質的損傷を負っている場合まで、短期間に制限するべきではないでしょう。本件の怪我は開放骨折であり、むち打ち症とは全く別です。「14級だから労働能力喪失期間は5年」と単純に考えるのではなく、事案に応じて適切な労働能力喪失期間を検討するべきです。
本件でも、裁判例等の資料を示すことによって、20年の労働能力喪失期間を認められることとなりました。
ご依頼者様の感想
交通事故で相手側からの損害賠償額の金額と内容に納得ができなかったため、また後遺障害の認定について納得できなかったので相談させて頂きました。
本当に依頼者に寄り添って最後の最後まで1円でも高く示談金が上がるように動いていただいたので本当に感謝しています。依頼して本当に良かったです。
(千葉県千葉市・20代・男性・会社員)
本事案は実際のお取り扱い案件ですが、プライバシー保護のため、事案の趣旨を損なわない範囲で一部内容を変更や省略していることがあります。写真はイメージ画像であり実際のお客様とは異なります。記載内容は当事務所のPRを含みます。
本事例へのよくある質問
- Q異議申立や紛争処理機構への申請とは何ですか
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後遺障害等級の認定結果に納得ができない場合に行う不服申し立ての手続きです。
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異議申立て
認定を行った自賠責保険会社に対して、再審査を求めるものです。
新たな医証(診断書や検査結果、医師の意見書)などを添付し、「前回見落とされていた事実」や「新たな医学的根拠」を提示して、前の判断が誤っていたことを理由に申立を行います。回数制限はなく、何度でも行うことができます。
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紛争処理機構への申請
自賠責保険とは別の、中立的な第三者機関において審査を求める手続きです。
弁護士や専門医が審査を行います。ここでの結果は、自賠責保険を拘束するため、認定が覆れば自賠責保険会社はそれに従わなければなりません。異議申立てとは異なり、原則1回しか行うことはできません。
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- Q逸失利益はどのように計算するのですか?
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逸失利益は、以下の3つの要素を掛け合わせて計算します。
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基礎収入
原則として事故前年の年収です。ただし、本件のように若年者や主婦(主夫)の場合は、賃金センサス(平均賃金)を用いることがあります。
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労働能力喪失率
後遺障害等級を参考に決定されます。14級なら5%、12級なら14%というのが標準的な基準です。
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労働能力喪失期間
「何年間、仕事に影響が出るか」という期間です。
原則は67歳までの期間を前提に計算します。ただし、症状固定時の年齢が67歳を超える場合は、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とするなどの例外があります。
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- Q保険会社から「14級だから労働能力喪失期間は5年」と言われました。これは正しいのでしょうか。
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神経症状での後遺障害の認定を受けた場合、労働能力喪失期間は一定期間に制限されることがあります。まず、むち打ち症などの場合は、14級の場合で5年、12級の場合で10年に制限されることが多いです。
一方で、むち打ち症以外の局部の神経症状の場合は、個別具体的な検討が必要です。
たとえば、神経症状の原因が脳外傷などにある場合、後遺障害の影響は場合によっては一生続くことが予想され、安易に労働能力喪失期間を制限することは不適切です。
また、骨折後などの器質的損傷がある場合の神経症状も、むち打ち症と同列に扱えないということは十分にあり得ます。つまり、必ず「14級だから労働能力喪失期間は5年」というわけではなく、後遺障害の状態に応じて適切に検討されなければなりません。

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- 弁護士
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