右腕の醜状痕で14級4号が認定され、300万円を獲得した事例

最終更新日:2025年11月27日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士
米井 舜一郎
当初の提示額なし
最終獲得金額
300万円
300万円 増額
千葉県銚子市・50代・女性・兼業主婦
病名・被害
右上腕肥厚性瘢痕・頭部挫創・前胸部挫創
けがの場所
頭部鎖骨・肩甲骨・肋骨・胸骨手・肩・肘
最終獲得金額
300万円
後遺障害等級
14級
事例の特徴
傷跡

事故の状況

諸田さんは車で優先道路を運転中、左側の脇道から飛び出してきた車に衝突されるという交通事故に遭いました。

この事故により、諸田さんは頭部や前胸部の挫創に加え、右腕に深い傷を負いました。特に右腕の傷は深刻で、縫合手術は実に60針にも及びました。

治療を終えた後も右腕には「線状瘢痕(せんじょうはんこん)」と呼ばれる、いわゆるミミズ腫れのような傷跡が複数本残り、その周囲には色素沈着も見られるなど、非常に目立つ状態となってしまいました。

車で優先道路を運転中、左側の脇道から飛び出してきた車に衝突されて醜状痕を負った際の事故状況図

ご相談内容

治療が終了に近づいた頃、諸田さんは保険会社との示談交渉に向けて不安を抱えていました。

当初は諸田さんご自身で交渉を行うつもりでしたが、「保険会社の提示額が適正なのか判断できない」「相手方とのやり取り自体がストレス」といった理由から、弁護士への依頼を検討されていました。

また、諸田さんにとって最も切実だったのは「右腕に残ってしまった傷跡」のことです。

60針も縫った傷跡は、半袖を着ると人目に触れてしまう場所にあり、大変なショックを受けていらっしゃいました。

「この傷跡について、しっかりと補償してもらえるのか?」という点が、ご相談の最大のポイントでした。

諸田さんは「弁護士費用特約」が使えることを確認し、費用の心配なく弁護士に依頼できることから、弁護士に交渉を任せることにしました。

諸田さんのご相談内容のまとめ

  1. 保険会社との交渉に不安がある
  2. 右腕に残った目立つ傷跡について、正当な補償を獲得したい

交通事故による右腕醜状痕の後遺障害を負った女性がアームカバーをつけている

弁護士の対応と結果

調査事務所での面接に弁護士が同行し、後遺障害が認定

傷跡(醜状障害)の後遺障害認定において、最も重要なのは「傷の大きさ」です。

腕の露出面に残った傷跡で後遺障害が認定されるためには、「手のひら大(手のひらの大きさ)以上の醜いあと」が残っている必要があります。

本件では、書面申請のために撮影した写真だけでは、傷の範囲が「手のひらサイズ」に達しているかどうかが微妙なラインでした。そこで弁護士は、後遺障害診断書の作成段階から、認定を受けるために適切な後遺障害診断書になっているかを確認したり、傷跡の写真の撮り方を工夫したり、慎重に作業を進めました。

さらに、後遺障害の審査を行う「損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)」から、より正確に確認をするために面接を行いたいとの連絡がありました。

これは、調査員が直接、定規(メジャー)を当てて傷のサイズを計測する手続きです。

傷の測り方次第で、認定が分かれる可能性があったため、弁護士も同行することにしました。

調査員が計測を行う際、弁護士は適切に計測が行われているかチェックをしました。

その結果、無事に「手のひら大以上」の要件を満たすと認められ、後遺障害等級14級4号の認定を勝ち取ることができました。

後遺障害慰謝料を裁判基準の約1.4倍に増額

後遺障害等級が認定されると、通常は以下の2つの賠償金が追加で請求できます。

  1. 後遺障害慰謝料(後遺障害が残ったことによる精神的苦痛への補償)
  2. 逸失利益(後遺障害により労働能力が下がり、将来得られるはずだった収入が減ることへの補償)

本件で問題となったのが「逸失利益」です。

諸田さんのお仕事は事務職でした。保険会社は、「腕に傷跡があっても、事務仕事の能力には影響しない。したがって減収は発生しないため、逸失利益はゼロである」と主張してきました。

確かに、モデルなど「外見」が重要視される職業でない限り、醜状障害(傷跡)による逸失利益は裁判でも否定される傾向にあります。

そこで弁護士は、「逸失利益が認められない分、後遺障害慰謝料を増額させる」という主張をすることにしました。

弁護士は、諸田さんの以下の状況を保険会社に伝えました。

  • 真夏の暑い日であっても、傷跡を隠すために常に長袖やアームカバーを着用しなければならず、肉体的にも精神的にも多大なストレスを感じていること。
  • 傷跡が人目に触れることを避け、温泉やプールに行けなくなり、趣味や楽しみが奪われたこと。
  • 職場で同僚から「その腕の傷はどうしたの?」と指摘されることがあり、好奇の目に晒される辛さを味わっていること。

加えて、類似の裁判例(逸失利益を否定する代わりに慰謝料を増額させた判例)をいくつも保険会社に提示し、法的な根拠を示して説得的に論じました。

その結果、保険会社もこちらの主張を認め、裁判基準の後遺障害慰謝料よりも約4割(1.4倍)増額した金額になりました。

「休業損害」を家事労働ベースで算定

諸田さんは時短勤務のパートをしている「兼業主婦」でした。

保険会社は当初、家事労働分を考慮せず、パート収入のみをベースに休業損害を計算しようとしていました。しかし、諸田さんは主婦業を行っていたため、主婦業であることを考慮するべき事案でした。

弁護士は、「賃金センサス(平均賃金)」を用いた主婦休損を請求しました。

これに対し保険会社は、「今回は傷跡の治療がメインであり、通院日数が少ない。実際に病院に行った日(実通院日)しか家事に支障はなかったはずだ」と主張し、約11万円という低額な回答をしてきました。

これに対して弁護士は、以下の事実を主張しました。

  • 単なる切り傷ではなく、60針も縫合した患部は、皮膚が引きつれて腕を動かすたびに痛みが走る状態であり、家事労働に影響があること。
  • 傷口が広範にわたっていたため、料理や食器洗い、洗濯といった主婦にとって不可欠な家事が、長期間にわたり物理的に不可能であったこと。
  • 病院に行かない日であっても、家事労働ができなかった日があり、通院日数のみで損害を限定するのは不当であること。

最終的に当初の提示額の約4倍である約50万円まで増額されました。

解決のポイント

1. 後遺障害申請の準備が大切

後遺障害申請は通常「書面審査」ですが、傷跡などの事案では調査員による「面接」が行われることがあります。この際、被害者のみで対応すると、緊張や遠慮から傷の状態を十分に伝えきれないことがあります。

本件のように弁護士が同行し、定規の当て方や計測範囲についてチェックを入れることで、本来であれば認定されるべき事案が非該当にならないように対策することが可能です。

2. 逸失利益が難しくても「慰謝料増額」を考える

逸失利益が認められなくても、長袖の着用や、視線への恐怖を感じているなど、日常生活への影響を具体的に主張することで、慰謝料の増額ができるケースがあります。

諦めずに請求をすることが大切です。

3. 兼業主婦の場合は主婦休損を検討

保険会社は「通院していない日=家事ができる日」と捉えがちですが、これは誤りです。
特に本件のような重度の創傷事案では、自宅療養中も痛みで家事ができません。

60針の縫合をしており、家事労働は容易ではないといった具体的な生活実態を主張することで、通院日数に縛られない正当な休業損害を獲得できます。

ご依頼者様の感想

これまで大変お世話になり、ありがとうございました。

(千葉県銚子市・50代・女性・兼業主婦)

本事案は実際のお取り扱い案件ですが、プライバシー保護のため、事案の趣旨を損なわない範囲で一部内容を変更や省略していることがあります。写真はイメージ画像であり実際のお客様とは異なります。記載内容は当事務所のPRを含みます。

本事例へのよくある質問

Q傷跡が残りました。後遺障害認定を受けられますか。

傷跡(外貌醜状・露出面醜状)の後遺障害等級は、傷の場所(顔・頭・首か、腕・足か)と大きさによって細かく定められています。 諸田さんのように腕(上肢)に傷が残った場合は、以下の基準が適用されます。

【上肢・下肢の露出面の醜状障害】
上肢の露出面にてのひらの3倍程度以上の瘢痕を残すもの(12級相当)
下肢の露出面にてのひらの3倍程度以上の瘢痕を残すもの(12級相当)
上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの(14級4号)
下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあと(瘢痕または線状痕)を残すもの(14級5号)
  • ※「露出面」とは、上肢であれば「ひじ関節以下(手首まで)」ではなく「肩から手首まで(上腕・前腕)」を指します。
  • ※「手のひらの大きさ」とは、被害者本人の手のひら(指を含まない面積)を基準とします。

顔や頭などの「外貌(がいぼう)」については、さらに高い等級が設定されています。

【外貌醜状の後遺障害】
外貌に著しい醜状を残すもの
(7級12号)
  1. 頭部:手のひらの大きさ以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大きさ以上の欠損
  2. 顔面:鶏卵の大きさ以上の瘢痕又は10円玉の大きさ以上の組織の陥没
  3. 首:手のひらの大きさ以上の瘢痕
外貌に相当程度の醜状を残すもの
(9級16号)
顔面:長さ5センチメートル以上の線状痕
外貌に醜状を残すもの
(12級14号)
  1. 頭部:鶏卵の大きさ以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵の大きさ以上の欠損
  2. 顔面:10円玉の大きさ以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
  3. 首:鶏卵の大きさ以上の瘢痕

これらは原則として「人目につくこと」が前提となります。例えば、眉毛の中に隠れて見えない傷などは認定されない傾向にあります。

胸・腹・背中など(日常露出しない部位)については、次のような基準になっています。

【日常露出しない部位の後遺障害】
胸部及び腹部、又は背部及び臀部の全面積の2分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すもの(12級相当)
胸部及び腹部、又は背部及び臀部の全面積の4分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すもの
(14級相当)
Q傷跡で後遺障害認定を受けた場合、逸失利益は認められますか?

傷跡で後遺障害認定を受けた場合、他の後遺障害(むち打ちや骨折による可動域制限など)に比べると、逸失利益を認定させるハードルは非常に高いのが実情です。

逸失利益は「労働能力の低下」に対する補償です。

例えば、モデル、俳優など、容姿が業務遂行や売上に直結する職業であれば、傷跡による逸失利益が認められる可能性が高くなります。

一方で、事務職、工場内作業、ドライバーなどの場合、保険会社は「傷があってもパソコンは打てる」「運転には支障がない」として、逸失利益を0円と主張してきます。

本件のように、逸失利益そのものが否定されても、その分を「後遺障害慰謝料」に上乗せして請求することを検討します。

Q「主婦休損(主婦休業損害)」の計算方法を教えてください。兼業主婦でも請求できますか?

兼業主婦(パート・アルバイトをしている主婦)であっても請求可能です。

兼業主婦の場合、以下の①と②を比較して、高い方を基礎収入として計算します。

  1. 実収入(パート・アルバイトの年収)
  2. 全年齢平均の女性労働者の平均賃金(賃金センサス)

パート収入が年間100万円程度の方でも、家事労働を行っている場合は②の「賃金センサス」を採用できます。

例えば令和6年の賃金センサス(学歴計・女性全年齢平均)は約420万円です。これを日額に換算すると、1日あたり約11,500円となります。なお、高齢な方は、日額が通常よりも減額されるケースがあります。

主婦休損の計算方法はいくつかありますが、例えば、事故直後は痛みが強く家事が全くできなかった(100%制限)、治療が進むにつれて半分くらいできるようになった(50%制限)、といったように、時期によって家事ができなかった程度を逓減(ていげん)させる方法がよく使われます。

保険会社はしばしば、「通院していない日=家事ができた日」として、通院日数分(例えば30日分だけ)しか払わないという主張をしてきますが、これは不当です。

本件のように、自宅にいる間も傷の痛みのために家事ができないことは当然にあります。弁護士は、怪我の具体的内容や生活状況を立証し、通院日数に関わらず「治療期間全体」を通じた休業損害を請求します。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士
米井 舜一郎

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